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紅茶は茶請けが砂糖代わりのストレート派です。
「では、次の方」
少女がカインの脇腹を小突いて促した。
同じ様にやればいいだけだというのに変に緊張してしまっている。
「では指を拝借いたします」
カインも右手を差し出し、受付嬢が指の腹を素早く刺した。
鋭い痛みが起こり、胡麻程度の矮小な血液が湧き上がった。
「水晶へ」
少女が押し付けた跡が目に止まり、そこへ押し当てた。
先程より早めに鈍い光が起こり、何事もなく終わる。
「他にはもういらっしゃらないみたいですね。では後ほどお渡しいたしますので、あちらでお待ち下さい」
受付嬢の指差す先に幾つものテーブルが置かれた休憩所のような場所があった。
冒険者たちが椅子に座りながら雑談を楽しんでいる。
「あ、ありがとうございました」
カインがお辞儀して礼を述べても受付嬢は表情を緩めることはせず、寡黙なままお辞儀をした。
そして木箱に水晶玉を戻すと、奥の方へと姿を消していった。
「ちょっと怖かったわね」
テーブルに座った少女が誰にも聞かれないよう手で壁を作り、カインに耳打ちした。
「でも悪い人じゃなかったよ」
「そりゃそうだけど」
カイン達が寛ぐテーブルに最初のあの垂れ目の受付嬢がやってきた。
視線を二人に向けると、紅茶と茶請けをそれぞれの前に置いてくれた。
「あの、頼んでませんけど」
「いいのよ。私からのサービス」
そう言い残し再び持ち場に戻っていった。
「悪い人ばかりじゃないね」
カインは淹れたての紅茶を遠慮なくのみ、少しばかりの安心感を得た。