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10-6

 カインはそれ以上、モニカの願いを拒絶することはできなかった。

 カイン自身も人形の助けは必要となると考えるが、押し付けられてるような感覚に陥っていた。

「……わかりました。人形と今後も旅を続けます」

「ありがとう、カイン君。必ず前よりも頼りになる人形にしてみせるね」

 二人は握手を交わし、人形はそれを静かに見つめていた。


 モニカの店から必要なものを受け取り、ギルドへと戻る。

 買い物したものをギルド長へ全て渡すと、今度は鍛錬が始まる。

 あれから冒険者たちの姿はなく、風のうわさだがこの街を離れたらしい。

 ザラタンの件が関わっているのかは定かではないが、己の実力に見当たった場所で活動するのも冒険者としては大事なことだとレーベは言う。

「では、カイン。今日もやりますか」 

 ザラタンとのあと、レーベは手を抜く事はなくなり得意の素手で相手をしてくれている。

 カインは木刀を使っての模擬戦となるが一撃を入れることは無い。

 一方的に殴られて続けられ痛みでうずくまると一度、小休憩となる。

 これでも手加減をしていてくれるのだろう。本気で打って来られたら死んでしまう。

「まだ痛みますか」

 カインが先程殴られた右肩を手で抑えながら苦しそうにしていると、近寄って声をかけてくれた。

「押さえていないと痛くて堪らないです」

 気を抜くと痛みが増す。弱音は吐きたくないので苦し紛れの声を出し、耐えしのぐ。

「もう少し手加減しましょうか?」

 優しい声の提案であったが首を横にふった。

 これ以上相手に手を抜かれる事は望んでいない上に屈辱的に思えてしまった。

 弱いことに自覚はすでにある。あとは強くなればいいだけ。

 カインは痛みを紛らわそうと反対の肩を敢えて強く己で殴りつけ、気をたしかにもった。

「もう一戦お願いします」

 カインは痛みを感じながらも両手で木刀を構えた。

 そして、数十秒とも持たずカインの身体は地面に倒れ込んだ。



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