10-2
「おまたせしました」
レーベが渡したリスト全てを買うことができ、包んでもらった紙袋はカインが荷物持ちとなる。
「次はどこへ」
店をでてすぐにカインが楽しそうな声で聞くと、レーベが周りを見渡し指をさす。
そのまま後ろ姿に続き、人通りの多くなっている道へと入った。
人の多さに比例して道幅は狭まり、店よりも露天商が目立つようになる。
ルガの町を思い出させる風景にカインは少し複雑な気持ちになった。
「あそこです」
目当ての店を見つけたのかレーベが進む先には四角の形をした看板で紫の背景に黒色の怪しげな壺が描かれたものがある。
入り口にドアはなく、暖簾のように薄い布が一枚ほど垂れているだけであった。
なにやら店の中から橙色の薄い煙が立ち込めており、入るのを躊躇わせる。
カインの足が止まっていると、レーベが手招きして呼んだ。
「確かに不気味だが、ここはギルド御用達の店だから安心していいですよ」
その言葉を信じ、店の中へと消えていったレーベにつづいて入った。
入ってすぐに左右の小さな棚に乗った小さなコウモリが目にとまった。
何かと思って近づけば陶器で出来たもので一瞬、本物かと思うほど精巧な作りをしている。
煙はその置物の口から吐き出されていたようで、手で仰いで嗅ぐと仄かに甘い香りがした。
店はどうも地下へと続くようで下へと続く短い階段があり、今しがたレーベが右に置かれたドアをあけるところであった。
一段とばしで急いで降り、レーベの後にはいった。
狭い店と店の入口の想像通りの悪趣味な商品が置かれている。
一体なにに使うのか検討もつかないものばかりで呪いや毒の類のものなのかもしれない。
「店主?」
レーベが不在の店主を呼ぶも返事はない。
「出直すしますか」
レーベの提案に考えることなく首を縦にふる。危険な香りしかしないこの場所から一刻も去りたい。
「はいはい」
しかしカインの願いはすぐに打ち砕かれることになる。
声がした方を見ると、なんと天井から深いフードを被り、こちらに片手で手をふる者がいた。
「えっ!」
思わず声が出てしまい慌てて口を抑える。
店主はカインの反応を期待していたのか、そのまま器用に地面へと一回転して着地すると握手を求めてきた。
「そうそう、そういう反応が欲しかったの。貴方、良いね」
「あ、ありがとうございます」
握られた手をされるがままに上下に振られカインは生返事で応えた。
その手の感触は妙に冷たく、まるで血が通っていないかのように思える。
どんな顔なのかと伺おうとしたが、すぐに距離をとられた。
「おっと、あぶないあぶない」
「す、すみません」
失礼なことをしてしまったとカインは平謝りをした。
「まぁ気になっちゃよね。でも別にそんなことしなくても、ほら」
そういい店主は自らフードを外してみせた。




