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「だいたいの動きは分かった」
バルサックはそういい、他の冒険者やカイン達を差し置いてザラタンに接近した。
待ち構えたとばかりに大きな鋏をあげ、目柱は標的を捉えると振り下ろす動作に入った。
あとはバルサックが自身の間合いに入ってさえしてくれればとタカをくくりその場から動かないザラタンをじらすかのようにバルサックは急停止した。
これにはザラタンも面を食らったのか、一度あげた鋏を少し下げる。
両者にらみ合うようにしてその場から一歩も動かず、数秒経った後、ザラタンの気がよそにうつった。
リッツが放つ矢が次第にザラタンの目柱を捉え始めたからであった。
バルサックの力を傍に見せつけられてからリッツの弓に対する姿勢が変わった。
細く張りのある弓弦が赤く染まっており、手を痛めてながらも無心に引く姿をスネアが見ていた。
痛みのせいか汗も頬を伝って何度も落ちながらも、今や自身の秘めた才能に目覚めた満足のいく表情となっている。
油断できない敵がもう一人いることを認識させるだけで十分効果はあった。
ザラタンの視線がリッツへと完全に移った時、バルサックは勢いよく走り始めた。
どこへ向かうつもりか、カインは片時も目を離さずその先を予測した。
偶然にも思いついた通り、ザラタンの一番下の足の付け根の下に身体を滑らせた。
そこは四角であった。
上にはまだ足が数本ある上に自分の身体および鋏と腕のせいでバルサックの姿は見えない。
先程まで見えていたはずの敵を見失い、ザラタンは周囲をくまなく探すもその間にもリッツの矢が飛んでくる。その一本がついに奥側の目柱に突き刺さった。
猛烈な痛みか怒りのせいか、猛烈に鋏を上下させながら悶える姿が印象的である。
「すごいぞ、リッツ」
リッツの動きをずっと見ていたスネアも褒めて肩を叩く。
「いやいや、偶然ですよ」
謙遜した様子で照れる弓師の指は皮が向け、その箇所は赤く染まっていた。




