表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/162

9-13

 カインの言葉に誰しもがそれまで夢中になっていた巨大な挟みから足元へと視線を移した。

 極短い範囲でしか移動せず、浜辺から先へは近づこうとはしないザラタンは確かに横向きにしか移動できていない。

「背中の甲羅のせいだ。正面から動けば重みで後ろへとひっくり返ってしまう」

 バルサックは補足して伝える。

「それにお前、弓で身体を狙っても意味がない。狙うならあの目だ」

 リッツのことをさしているのだろう、バルサックは弓を渡すよう手で合図した。

 指摘されて納得のいかない顔をしながらリッツはしぶしぶ渡すと、一矢つがえてみせる。

 弓弦を力の限り引くと、弓本体が悲鳴をあげながら軋み始め、危うく折れてしまうのではないかというぐらい危険な角度となった。

 壊れて巻き添えをくらわまいと周りのものは離れるがバルサックは気に留めることなく、ザラタンの目柱を狙うと息をとめて放った。

 孤を描かずして風を切り裂いて進むような弾道をカインは目で追った。

 狙った弓は確かに狙い通りかと思われたが、寸前のところで足の関節を曲げて姿勢を低くとられてしまい避けられてしまった。

 バルサックは舌打ちをしてみせたものの想像以上の腕前にスネアが感嘆の声をあげた。

「今の要領で狙い続けろ。お前の腕前など最初から期待はしていないが、少しでも気を逸らすことぐらいはできる」

 そう言って、借りていた弓をリッツに手渡した。

 そして本来の自分の得物である剣を抜いた。

「リッツさん」

 不憫に感じたカインが声をかけようとしたが、リッツは首を振る。

「言うなカイン。あの人は別格だ」

 見せつけられた実力の差にリッツは少し気を落としていたが、弓師としての矜持までは失わず、言われた言葉に応えるべく腰に携えた弓筒から一本とりだし、それをつがえた。

 弓を先程よりも強く引き、標的を狙う姿にまだ何もしていないカインを奮い立たせた。

「お前も弓を使うか?」

「いえ。僕は弓は使えないので」

 この戦いに自分の出番など最初からなかったのかもしれない。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ