9-8
一歩も退かぬ青年将校たち相手であったが、空気が抜けたかのように得物を納めた。
無用な争いを回避できたことでカインはつまっていた空気を肺から一気におしだした。
「試させるような事をして申し訳ない。貴方がたがアウトローでもなければ反乱分子でもないことは明白となった」
「最初からワシはそういうとる」
スネアが憤慨した。
「ところで、ギルドへ向かうと言ったが何用か」
「ギルドからの要請を受けるべく向かうところだ」
「ほう。それは殊勝な事だな。しかし金は期待しないほうがいい、なにせここのギルドは資金繰りが悪い」
青年将校は眉を細め、何かを知っているような表情で言った。
「最初からそれは期待してなどいない。恩義に報いるためだ」
スネアは言い放つと、カイン達にギルドに急ぐよう言った。
道を塞いでいた青年将校とその部下たちを手で払い除け、テティス商会は再び足に力を入れて走り始めた。
ギルドへ向かう道もごった返しで道となって逃げ惑う人々で路面が見えないほどであった。
「これでは進めんな」
スネアが少々困っていると、バルサックがいきなり得物を抜いた。
背丈180cm以上はあるだろうかその身長よりもやや長く、太さも申し分のない刀身を見せつける。
金属色にやや青みがかかった刀身が太陽に照らされ、反射したものがカインの目にあたる。
眩しさで手をかざし、陽光から逃げるべく半歩さがった。
「通るぞ、どけ!」
低く響く声が通りに建物の外壁を伝って奥に見えるギルドの建物まで到達したようにおもえた。
民衆は一斉に騒ぐをやめ、一同の視線はバルサックに注がれついで高く掲げられた得物を釘付けとなった。
「道をあけろ」
バルサックが今度は控えめに言うと、あれほど騒いでいた町民が左右に割れてテティス商会のために道をつくってくれた。
バルサックはゆっくりと一切気に留めることなく、歩きはじめた。
すぐ後ろのスネアは申し訳なさそうに歩く度に左右の人々に謝罪を口にしていたが、カインはどこか誇らしげにバルサックの背中を見つめた。




