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8-11

「すみませんでした」

 負傷したギルド長とカインは応接室のソファで手当を受けた後、まだ済ませていなかった昼食を摂っていた。

 鍛錬は一旦中止となったが、レーベは少し不満なかおを残し、今は本来の業務であるギルドの受付と戻っている。自力で立ち上がる事ができないほどの傷を負ったというのに普段どおりの振る舞いをしている。

 カインは受けた蹴り跡で赤く残った部分を服の上から気にしながら対面で食べ続けるギルド長をきにかけた。

 スネアに紹介してもらった二日前に情けない所を見せてしまい、この場に居続けるのも苦痛に感じる。

 昼食を終えたら鍛錬の再開を申し出たいが、レーベが許してもギルド長の機嫌はどうなのだろうか。

 小皿にのせられた魚の蒸し焼きをつまみながら、先程から視線を合わせようとはしない相手方の顔色を伺った。

「カイン。先程のことは気にしてはいない」

「はい、すみません」

「謝らずとも良い。どちらかというと君の実力を推し量るためとはいえ、いきなりレーベを当てたのは私の落ち度だ。こちらこそすまなかった」

「えっあ、いや、貴重な経験になりました」

 越えることのできない巨大な壁はぶつからなければ、その存在を認識できない。

 近場で見えたとしても触れなければ重厚さなども真に捉えることはできない。

 今回は一太刀もレーベに入れることはできず、一方的にやられてしまったが、目標は生まれた。

 いつかレーベに勝ちたい。

 不可能に近い思いだが、諦めを抱かなければ信念として残るだろう。

「ところで明日はどうするかね。毎日レーベと鍛錬してもらってもいいのだが、私としてはこの街のクエストに挑戦してみてほしいのだが」

「この街のクエスト……。それはどんなものですか?」

 ルガの街ではうろ覚えであるが、近くの森やせいぜいその先の山々に蔓延るモンスターや街中の清掃活動、子供たちへの教育など生活に密着したものもある程度は存在していたが、クエスト依頼書を貼り付けるボードにはそもそも依頼書が一つもなかった。

「ふむ。実はこの街には冒険者が少ない。というのも、ここが港町だからというのがある」

「どういう意味ですかね?」

 カインの質問にギルド長は少し笑った。

「そうだな。では、こうしよう。明日の朝、再びギルドの前へ来てくれ。この街ならではのクエストを君に手伝ってもらおう」

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