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8-10

 カインはあれから大きく振ることをやめ、すぐにでも軌道を変えれるよう控えめに打ち込む事へと変えた。

 単純に力で押すことをやめ、相手の出方や癖などを探すことに集中する。

 レーベは背が高く、手足も太い。体格を活かした一撃は重く、受け流せたとしても痛手となるだろう。

 どう攻めるか決めかねているカインを他所に、レーベは間合いを詰めてきた。

 思わずつま先を蹴って後退するもレーベの歩幅が逃げ続けるカインとの距離を詰めはじめる。

 それでも諦めず迫りくる巨躯から繰り出される四肢の範囲から逃れるべく後ろへと飛ぶと、背中に柵があたった。

 これ以上後ろはなく、飛び込まれたら横へ避けるしかない。

 しかし――レーベはそれも想定しているのか至近距離にまで近づくことはせず、左右に逃げられてもすぐに追いつける絶妙な位置で止まった。

 腕を組み、逃げ場を失った獲物に同情でもかけているような瞳がカインを見つめる。


「次はどうでる」


 ギルド受付の際、カインに紳士的に接してくれた姿は今はない。

 傍から見て強者と弱者の構図が出来上がりつつあった。


「教えません」


 気丈に振る舞おうと減らず口を叩いて見るが、身体にはしっかりと恐れが現れていた。

 膝は小刻みに揺れ、握りしめる剣の柄は震えを受け止めきれずに刀身へと伝えてしまっている。

 思考も淡いものとなって明瞭さからは程遠い。

 激しく動いたわけではない。緊張と恐怖に支配され、動悸は激しく呼吸は荒い。

 レーベにもらった最初の一撃は身体ばかりではなく精神にさえも影響を与えていた。

 再びあの痛みに襲われたら……不安は募り続けている。


「カイン」


 横からのギルド長の声は耳に入ってこない。


「カイン」

 

 右肩を揺さぶられ、目を閉じて無意識にそちらの方へと剣を振った。

 自分でも驚くほど素早く触れ、空を切る重さは感じることはなかったが、すぐさま何かにぶつかり鈍い音がした。

 一太刀入れることができたのだろうか。薄めを開けると肘関節で剣を受け止めたギルド長の姿があった。

 服のシワが大きく伸びる程に深くめり込む剣先に冷めた顔となって、すぐに柄から手を離した。


「良い一撃だったが、レーベに与えればなおよかったな」

 

 流石に痛がる素振りをみせるも、一言言える余裕があるのは流石であった。

 

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