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8-9

 カインの足は怖気づいていたが、スネアの好意を思えばと意を決して場内へと入り口から入った。

「武器はどうする」

「剣、でお願いします」

 剣以外、知らない。選択肢は最初からなかった。

 ギルド長がカインの言葉を聞きつけ、新米冒険者たちが使っていた木刀をカインに渡した。

 馴染みのない持ち手だが、剣には違いない。

「カイン。君の実力はどのくらいだ」

「実力はよく分かりません。倒したことあるモンスターはゴブリンと狼ぐらいです」

 誇張せず、素直に伝えると黙って頷いた。

 そして静かに拳を構えた。

 先程まで使っていた盾と武器は使わず、拳で十分ということなのだろうか。

 カインも両手で握りしめる手を強め、真っ直ぐレーベに向けた。

 誰が合図したわけでもなく、カインは場の空気が変わったことにきづいて走り出した。

 両者の距離はそれほど離れているわけではないが、随分と遠くに感じ辿り着く事が辛く感じてしまう。

 足も鉛のように重たく、時の進みも随分と遅い。

 その間にもレーベは首を左右にふってその場で軽くジャンプして余裕の動きをみせる。

 カインが相手にとって不十分なのは違いないが、足元を見られるのは癪に障る。

 冒険者としての矜持を傷つけられ苛立つのは、自覚が芽生えた証拠であった。

 

 最初に手を出したのはカインであった。

 素早く縦に振り込んだ一撃をレーベは片手で蝿を追い払う様に手の甲で刀身の進路を容易く変えた。

 思いがけない行動に勢いがのっていたカインは左前へとつまずきそうになりそうになる。

 その好機を相手は見逃すはずもなく、崩れたカインの横腹をレーベの太い脛が迫った。

 防ごうと考えた時には下から重い、まるで鈍器が衝突したような衝撃を受けた。

 衝撃は留まることなく体全身に響くような痛みに変わり、打たれた箇所を労る暇もなくカインは嗚咽をもらし、四つん這いとなって顔を歪めて嗚咽を漏らす。

 何度か声を堪えた後、打たれた箇所を手で摩りながら立ち上がる。

 引かない痛みを意識しないように目の前の相手に集中をする。

 片目を強く閉じ、歯を食いしばるカインの姿にレーベは少し驚いた様子であった。

 カインは手放してしまった剣を拾い上げ、構え直す。

 何も考えずに振り下ろすだけでは同じ事になる。

 しかし、相手につけいれる隙などどこにあるというのだろうか。

 出会った中で最も強い相手を前に、カインは無い勝算を導き出そうとしていた。

 

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