第7章 朝日
朝日が昇った。
彩子と私は朝日を眺めた。
新しい一日が無事に始まったことに感謝した。
彩子はベッドを先に抜け出した。
「キッチンとシャワーを使わせてもらうけどいいかな」
「哲也さんはもう少し休んでいてね」と彩子は言った。
彩子にも身だしなみの準備や事情があると思って、
哲也はベッドにもう少し横になっていることにした。
シャワーや歯磨きの音。
キッチンでお湯を沸かす音、何か準備している気配などが
感じられた。
「もう、起きてもいいかな」と聞いてから
哲也もシャワーを浴びた。
彩子は紅茶と冷蔵庫にあった小麦粉で
パンケーキを準備してくれていた。
「小麦粉とか紅茶とか勝手に使っちゃっいました」彩子は笑顔で言った。
「私は、朝食が済んだら帰るね」
「JRも動いてるらしいから」
「一晩泊めてくれてありがとうございました」彩子はニコッとした。
今日から土日で仕事が連休なのはありがたかった。
「じゃ~駅まで送って行くよ」と言った。
「あの~哲也さんは今日と明日お休みだよね」
「こんな大震災の後に一人は心細いな~」
「余震とか怖いし、福島の原発もどうなるかわからないし」
「今日は私のうちへ来て、哲也さんに泊って行って欲しいな」彩子は言った。
「それなら、ここでもう一泊してもいいよ」哲也は言った。
「でも、ここだと着替えとかないから、やっぱり私の部屋に来て欲しい」
「お願いします」と彩子は拝むように言った。
「連休だし、彩子の役に立てるなら、そうしようか」哲也は同意した。
食事を終えて準備した。
準備と言っても着替えをバッグにいれただけだった。
彩子はパーカーを家に持って帰って洗ってから返すと言い張った。
哲也はそんな面倒なこと必要ないと言った。
きっと彩子のいい匂いがしそうだから、
洗濯しないでそのまま着るよと冗談を言った。
彩子は「エッチなこと言わないで」と怖い顔をして、
絶対に洗って返すからねと言った。
彩子のマンションは意外と近くで、哲也の部屋から30分程度で着いた。
車の渋滞も解消し、歩く人も少なくなっていた。
東京の街は何もなかったように静まっていた。