暗雲を隠す“ホシクズ”
「僕たちが襲撃したあのビル…あれが第三発展都市部に“ホシクズ”を流していた拠点だったってことで確定してもいいと思う。あそこから“ホシクズ”の原材料を密造者の元へと運び、完成品を回収してそれぞれの売人へ売る…これが主な流通の流れだったんだろうね」
岩村は説明しながらPCを操作して、何かの成分表と大量の粉の写真を見せてくれた。
「これが、崩壊したビルの焼け跡から回収できた“ホシクズ”の写真と、500gあたりの平均の成分表だよ」
その写真の粉は、あの火災で燃えたのか…黒く焦げていたり茶色くなっていたりと色がまばらだ。
「これで…どのくらいの量回収できたの?」
若干遠くから画面を眺めていた志度がまるで確認のように質問した。
「約50kgです。売人や密造者からも見つけ限り回収する予定です。」
「50kg…って、相当の量ですね!?」
“ホシクズ”の量を聞いた千里が大声を上げて驚いた。
「いや、生産コストを考えると不気味なくらい少ないんだよ。三桁キロは余裕で超えるものかと思っていたんだけど…」
千里の反応に、岩村は顎に手を当てて答える。そこまで考え込むほど少ないらしい。
「…もしかして、“売り払った”直後だったんじゃないか?密造者や売人に」
無言で話を聞いていた霞が、そこで鋭い発言をした。
「多分…そう」
霞の発言に、岩村は歯切れ悪そうに…でもどこか確信を握ったような顔をして答えた。
「霞くんの言ったように…この拠点から“ホシクズ”をできるだけ多くばら撒いた直後だったと考えると、話が合うんだよ」
そう言った岩村はPCを操作して、何かのリストのようなデータを表示させた。
「こ、これ!」
その画面を見た直後、周夜が声を出して岩村の方を向いた。
「見覚え、あるの?」
周夜のすぐ隣で画面を見ていた千里が、少し不安そうに周夜に尋ねた。
「うん。…あの時、日笠さんと一緒に見たリストと全く同じだ…」
日笠。周夜が口にしたその名前に一瞬だけ空気が重くなったが、それをかき消すように岩村が声を上げた。
「そう。あのビルの地下室からPCの本体が見つかってね。データを復元したら、このリストが見つかったんだ」
「これは…“ホシクズ”の売人のリスト?」
リストを見た志度が少し厳しそうな顔を浮かべ、岩村へ解説を求めた。
「“ホシクズ”専門ではないでしょうけど、“ホシクズ”の卸先のリストだと思われます。現在うちの別部隊が、彼らの確保を試みている所です」
「なるほどね…」
岩村の解説を聞いた志度は、納得がいったように頷いた。
「でもそれって…警察に任せればいいのでは?」
岩村の言葉に、周夜が不思議そうに聞いた。横にいる千里も同じ疑問を持っているようだ。周夜の発言に頷いている。
「もちろん後で警察に送るよ。でも、その前にこちらで色々聞きたいことがあるからね」
なるほど。必要な情報を先に聞き出すといういうことらしい。二人も納得がいったのか、岩村の話に納得の表情を浮かべた。
それから、どこか空気に重みのある岩村の報告は約1時間続いたが、第三発展都市部の“ホシクズ”が根絶されるのも、恐らく時間の問題だろう。
最後には、恭弥達は安心して解散することができた。
「う〜ん、次は何をしよう…?」
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます!
とうとうロスト・フェイカーもここまで終わってしまいました。ですが、陽人たちにはもっと頑張って頂きますので、まだまだお話は終わりません!
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というわけで、「ロスト・フェイカー 2」はこれにて完結いたします。また続編にお付き合いいただける方は、「ロスト・フェイカー 3」の投稿をお楽しみいただければ幸いです。
また全然違う作品も、現在内容を詰めているのでそちらが投稿されれば、その作品も見てくだされば非常に最高です!!!
ではまた、皆様とお会いできるのを楽しみにして書かせていただきます!