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堺県おとめ戦記譚~特命遊撃士チサト~

堺県おとめ戦記譚~特命遊撃士チサト~ 怨霊武者掃討作戦(短編化)

作者: 大浜 英彰

萌えミリタリー系シリーズ「堺県おとめ戦記譚~特命遊撃士チサト~」の第6話「支局ビル宿直室の酒宴 これが素顔の戦士達!」(N2417EW)と外伝編Part3「淡路かおる剣客帖」(N3127EW)をベースに、前述した2作品で描かれた「怨霊武者掃討作戦」の顛末を粗筋として短編化した物になります。

 ある日、堺県堺市に時代錯誤の鎧武者と足軽の群れが現れた。

 誰言う事なく「怨霊武者」と呼ばれた武士達は、太閤秀吉の末裔を名乗って豊臣政権復活を企てた狂気の霊能力者、豊臣秀一に蘇生された豊臣方の侍達だった。

 当該地域を管轄する人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局は、直ちに攻撃を開始したが、倒しても復活する足軽の軍勢に防戦一方の苦戦を強いられた。

 支局長である明王院ユリカ大佐は、速やかに管轄地域内への戒厳令を発令。

 警察や自衛隊との連携の下、民間人の強制避難と避難所の防衛が執り行われた。


 上層部による対策会議において事態を解決する糸口となったのは、市内の神社に仕える巫女達が祝詞を唱えながら無我夢中で薙刀を振るい、鎧武者と足軽の群れを消滅させたという報告だった。

 民俗学者や宗教学者といったオカルティズムに造詣の深い研究者達で組織された研究班により、県内の百舌鳥・古市古墳群を繋ぐ霊的地脈で霊能力者の祝詞を増幅させ、怨霊武者の活動を止める作戦が発案される。

 

 かくして決行される「怨霊武者掃討作戦」。

 堺県第2支局の特命遊撃士達が真っ先に取り組んだのは、巫女を始めとする霊能力者達を百舌鳥・古市古墳群までの安全な輸送と、祝詞による霊的回路が完成するまでの護衛任務だった。

 再三繰り返された怨霊武者による妨害。

 人類防衛機構と自衛隊、そして所轄警察による連合部隊が迎え撃つも、アサルトライフルやグレネード弾で破壊しても時間を置けば再生してしまう怨霊武者に、過酷な消耗戦を余儀なくされた。

 若き特命遊撃士の吹田千里准佐も、目前で倒れた部下の残したライフルを拾い上げて戦闘を続行する有り様だった。

 辛くも古墳群まで到着するも、間近まで怨霊武者が迫る状況下。

 公安職の少女達に守られた霊能力者達により、祝詞の詠唱が各古墳群に捧げられた。

 祝詞を唱え終えると同時に、大仙古墳を筆頭に各古墳群から青白い光が放出され、管轄地域を包み込んでいく。

 光に直接触れた怨霊武者は急速に朽ち果て、そうでない者達からも再生能力は失われた。

 回路で結ばれた古墳群の霊的地脈によって祝詞が増幅され、破邪のエネルギー波として実体化したのだ。

 再生能力を失った怨霊武者なら、特命機動隊や自衛隊の標準装備でも無理なく戦える。

 防戦一方の生者達が、一転攻勢へ打って出た時だった。


 市街地各所に布陣していた怨霊武者へと浴びせられる、近代兵器の集中砲火。

 それは、自分達の時代を好き勝手に蹂躙した過去の亡霊に対する生者達の怒りの咆哮のようでもあり、自分達こそが時代の寵児であるという近代兵器群の奏でる尊大な凱歌のようでもあった。

 アサルトライフルの三点バーストで頭を粉砕され、機銃掃射でなぎ払われ、次々風化していく怨霊武者達。

 そうして敵を殲滅し、制圧された敵陣を奪還する事で、市街地の支配権は生者の手に取り戻されつつあった。


 大阪湾に出来た小島に浮かぶ、黒く禍々しい大坂城。

 それは、小豆島の残念石を始めとする「大坂城に成り得たかもしれない」建材達が集結して出来た呪いの要塞にして、豊臣秀一の居城である「真大坂城」だった。

 居城の玉座に座しながらも、追い詰められた秀一。

 彼の切り札は、自身の身体を太閤秀吉の怨念の依り代とする事だった。

 太閤秀吉の怨念の権化となり、真・豊臣七本槍を率いて徹底抗戦を試みる豊臣秀一。

 それに対して人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局は、特命教導隊の東条湖蘭子上級大佐を指揮官とする臨時選抜隊を結成し、真大坂城の攻略と管轄地域防衛の二面作戦を展開するのだった。

 勇猛果敢な臨時選抜隊の活躍により、真大坂城は落城。

 真・豊臣七本槍は討ち取られ、豊臣秀一の死で太閤秀吉の怨念も浄化された。


 こうした状況下で少佐以上の特命遊撃士に下された新しい作戦指令は、武将及び剣豪クラスの怨霊武者を対象とする追撃任務だった。

 足軽や一般武士クラスの怨霊武者はさておき、精神力の強い武将や剣豪ともなれば、再生能力を失った今も一筋縄ではいかない。

 生前の人格と戦闘能力はそのままに戦う武将や剣豪達は手強い敵だったが、伝説の武人達との戦いは、特命遊撃士の少女達にとって有意義な物でもあった。

 恩に報いる忠義心に、名誉を重んじる武士の心意気。

 こうした「戦う者の美学」を、特命遊撃士の少女達は武将達との戦いの中で直接学んでいく。

 銘刀「千鳥神籬」を武器とする淡路かおる少佐もまた、宮本武蔵と演じた真剣勝負を通じて、剣士として一層磨かれていくのだった。


 やがて全ての戦いが終息し、堺県第2支局管轄地域は平和を取り戻した。

 激戦となった「怨霊武者掃討作戦」だが、特命遊撃士の少女達を戦士として一層に成長させる良い機会ともなったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本編では描かれなかった作戦の展開なども知れて良かったです( ´∀` ) 真大坂城への討ち入りシーン……映像で観てみたいですねぇ( ´∀` )
[良い点] まさかの第三弾があったとはw 三作の中ではコレが一番面白かったですね。架空ながら現実日本をベースにした舞台、既存キャラと史実偉人が絡んでのバトル展開はムネアツです。 毎回、最後にちゃんとハ…
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