61.完成原稿を「改稿」してみよう
今回はちょっと書籍化作家さん向けの内容となっておりますが、改稿の舞台裏を見てみたいという読者様も是非。
10万字にも及ぶ小説を完成させたあなた、おめでとう!
なかなかいい作品が書けたのではないでしょうか?
公募に送るのもいいでしょう、Web小説としてアップするのもいいでしょう。
やはり自信作でしたから、見事に入賞!
晴れて書籍化打診!
さあ、憧れの出版業務に突入です。
ここで問題です!
書籍化の決まった作家が一番にやることは何でしょう?
それは──「改稿」作業!
まだざらつきのある掘り出し立ての作品を、商業用に整えて行くお仕事です。
作品を木像だと仮定すると、「改稿」はやすりがけ、艶出し研磨のような作業です。
誤字脱字や慣用句の誤用、展開に無駄や矛盾がないか。そういった点を編集者が洗い出し、作家と共に直して行きます。
その際に、編集者から大掛かりな改稿を提案される場合があります。
例えば
「このキャラクターならばこの展開でこういった行動を取らないのではないか」
「なぜこのような行動に至ったのかの説明が抜けている」
「後半にあったこの展開の前ふりを前半に入れておいた方が、読者としては分かりやすくなる」
「このレギュラーキャラクターの見せ場が少ないので、もっとエピソードを追加してはどうか」
などなど。
作品は作者のものですから全部突っぱねてもいいのですが、編集者の言葉に納得し、尚且つより良い作品にしたい場合、聞き入れて改稿してもいいでしょう。
この時、既存の作品に文章をちょいちょい加えるだけなのであればそこまで大変でもないのですが、上記のような複数の展開を変えなければならない場合、「構成力」が試されます。
一度ストーリーを因数分解して「どこにそのエピソードを入れるべきか?」を考えます。
そう、まるで現代文のテストのようですね。
抜けた文章をどこに入れるか、正解を探って行かなければなりません。
まさかの「国語力」がここで問われるわけですね。(だから現代文が得意だった人、改稿が得意である可能性が高いですよ!)
また、章をまるごと書き換えなければならない場面も出るかと思います。
三万字削除→三万字追加、などというケースも割と商業では普通に見られます。
そうすると、かなり大掛かりな「エピソード大移動」をしなければならないかもしれません。
筆のスピード感も大事になって来るので、頑張って書きましょう。分量に関しては根性でどうにか片付けて下さい。
完成原稿を送ると、再び「改稿提案」が送られて来て、細かいところを修正して行きます。
そうして何度か原稿の往復を繰り返し、商業出版に耐えられるまでの形を作って行くのです。
改稿作業は実のところ、普通に物語を書くのとは違います。
自分の間違いに気づき、またそれを認め、物語をよりよく再構築する能力が求められています。
編集者は見る目があって「アドバイス」は出来ても「改稿」は出来ないので、あくまで最後まで書くのは作家です。
編集者によると出版された本と原作(Web版)とを見比べればどのように改稿されたのかが一目瞭然なので、この作家がどのような意見を受け入れて改稿したのか?というところは見ているそうです。
また、改稿がしっかり出来ており作品の完成度がWeb版より上がっていると、「編集者の意見を取り入れてくれる作家さん」ということが分かるので「打診してみようかな?」となることもあるみたいですよ。
もちろん、本筋の素晴らしさは大事。
でもそれと同じくらい、改稿作業も侮れないものです!