54.編集者「面白ければ何でもいいです」
このようなエッセイを書いて来て急にこんなことを言うと暴論に聞こえるかもしれませんが、結局のところ小説なんて「面白さ」があれば何をどう書いたっていいと思います。
「面白さ」を追求するのが、創作者の使命です。
逆説的に言えば、どんなに素晴らしい文章でも、タメになる内容でも、面白くなければ誰も読んではくれません。
私は一応商業作家ですので、編集者にどんな小説が拾い上げされるのか尋ねたことがあります。
彼らがいつも言うのはこればかりです。
「面白ければ何でもいいです」
なんと雑な話でしょうか。
こういうジャンルが欲しいとか、評価ポイントが欲しいとか、そんな話ではないのです。
しかし逆に考えれば、
「面白いな~」
彼らにこう思わせれば、ジャンルやポイントがどうあれ、書籍化への道が拓けることになります。
拙著「書籍化地獄(https://ncode.syosetu.com/n0011io/)」にも書きましたが、基本的には一編集者の「面白い」「これ、本にしたい」という動機から書籍化への道は始まります。
「面白さ」の前では、些細な欠点など霞みます。
もし自分の欠点につまづいて小説が書けないと言う方がいらっしゃいましたら、欠点を直すより先に面白さを追求して行った方がデビューへの近道です。
また、もし公募に出してその選評が散々だった場合は、その欠点を直すより「面白さが足りなかったから欠点が目立ったのだろう」と思考を切り替えた方がいいです。
(私はそれに気づくまで10年ほどかかってしまいました……)
逆を言うと激しい選評を受けた作品ほど、選者を苛つらせるほどの〝惜しい〟作品であったということです。
もし厳しい講評が来たら、「欠点を直せ」というメッセージではなく、「面白さが足りない」というメッセージと受け取った方が、次に繋がると思います。
実は本当にダメダメな作品を講評つきの公募に送ると、講評はかなり優しめの文章になります。それだけ未熟な作家なので、やんわり注意するだけにとどまるのです。もし短く優しく講評されたなら、厳しさすら貰えないほど面白くなかったのだと猛省しましょう。
テンプレだのホットスタートだの、Web小説はランキングという壁があるのでどうしても常に攻略法が付き纏います。そんな些細なことは当エッセイから盗むとして、我々は常に「面白さ」を追求して行きましょう。
きっとそれが最良の作品を作り上げられる一番の近道です。