28.誰だ?なろうに文章力は不要と言った不届者は。
いつの間にか拙著「没落令嬢の幸せ農場〜最愛の人と辺境開拓スローライフ〜」が20000ptを超えていました。
なんか凄いことになって来たなーと案外他人事です。
さて、自分が月間ランキング上位に載ったことで、他の上位作品も気になって読んでみました。
もちろん題材の面白さ、ストーリー運びの上手さなどは共通しているのですが、ちょっと面白いなと感じたのは「文章」の個性です。
なろう上位の文章は、平易な文章と詳細な書き込みのある文章とで二極化しているようなのです。
以前、どこかで誰かが言っていました。
「なろうに文章力は必要ない」
最初に申し上げておきたいのは、文章は上手に越したことはありません。でもって、上位ともなると皆さんお上手です。
しかし恐らく上記の発言をした方は、なろうのその時の上位作品を読んで素直にそう感じたのでしょう。
おーい、ちょっと待てよ?と私は思うのです。
もしなろうの文章が平易でつまらないと感じた読者がいらっしゃるなら、私はこう言いたい。
「それってなろうの形態に合わせて、進化した文章なのかもしれないよ?」
先にも書いたように、なろうで「読まれる」文章には二種類あると思います。
ひとつめは、驚くほど平易でさくさく進んで行く文章。
ふたつめは、かなり詳細に書き込まれた、漫画の場面展開のような文章。
ひとつめから紐解いて行きましょう。
我々は大昔、本と言えば縦書きで、紙でめくって読んでいました。
でもそれが、ある日横書きで、小さな光る板をスクロールする方法になった場合──
行間を空ける。
文字数を限りなく少なくし、目に痛くならないように早く読んでもらうことにする。
こうなっても何らおかしくはないのです。
紙はじっと待っていてくれますが、画面は目に悪いし、電池が切れますし、ネット環境が整い過ぎてるから別の記事を読みたくなってしまいますもの。
だから、以前はこういった文章が多かった気がします。
ふたつめの文章は、最近よく出て来るようになったなーと思う文章です。
「読ませる」というよりは、「画面を見せる」ような文章です。
漫画のように、状況説明や背景がしっかりしている。
キャラクターメイキングがはっきりしていて、頭にしっかり記憶出来るようになっている。
玉虫色の表現を使わず、なるべく謎めいた部分は排除する──
これは結構「熟練の技」な気がします。
ずっと小説を趣味で書いて来た、特に女性に多い気がします。
謎や想像させる部分というのは、完結保障をされていないウェブ小説では悪手です。
だからあえて情景や心情を、先回りして詳細に説明しておくのですね。
sideという書き方が流行ったのも、こういった事情があるようです。
かつての小説にあるような「行間を読ませる」工夫を、あえてすっ飛ばして書いているのです。
当然、これによって読者への負担はグッと減ります。
さて、そういうわけで、どちらの文章も「読者への負担」を減らす「脳みそに優しい」文章だということです。
それを「下手」だと断じてしまうか「読みやすい」と捉えるかは読者次第です。
しかしひとつ言えるのは、なろうの読者は「お金を払って読んでいない」ということ。
お金を払ったのに平易な文章では「読み応えがない」と捉えられてもおかしくないわけですから。
その「無料サイト」というあたりが上手く作用して、いわば「お互い様」のような、いい塩梅の関係がなり立っているのかもしれません。
なろうの文章は読者と作者の「ライブ感」によって生み出された文章だと私は感じています。
両者の阿吽の呼吸が、なろうの二極化する文章を作り出しているのです。