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す→れ←違↑い↓  作者: 竹村 翔
5/6

Start counterattack.

「>」 = メッセージ上での会話

「 」 = 通常の会話

『』= ネット上のリプライ


大変、お待たせ致しました。第5章お楽しみください!

 「>おい、たこ、まずいことになってるぞ。」

 「>なにが?」

 「>知らないのか?ツイッターを見てみろよ。」

 「>え、何だよこれ。」

真澄と手を振り、帰宅した俺はいつも通りのルーティーンを終わらせて、ベッドに寝転んでいた。

ツイッターを見て、マジかとは思ったが、そんなに焦ってはいなかった。

なぜなら、事実無根だからだ。

こんなものをツイッターに流すのは、あいつしかいない。

あの日、僕の邪魔をした奴。

高貴。

許さない。今度は僕の番だよ。

 僕は闘争心に燃えていた。

奴のツイートにはすごい数のメッセージが寄せられている。

『なんやこいつ。』

『なんだこれ。大丈夫ですか?』

ツイッターのいいね数は、すでに四千を超えていて、今も伸び続けている。もう学校だけの騒ぎではない。

すぐに、僕のアカウントは特定されて、誹謗中傷のメッセージがかなり来ていた。

こんなの、見ているだけでメンタルがやられる。

スマホは電源を落とした。

幸い、真澄はツイッターをしていない。

この騒ぎを伝えるべきか悩んだが、僕だけの話なので巻き込むのはやめておいた。

 早速、優にパソコンでメールを送る。

 「>このままにしておく訳にはいかないから、僕はあいつを地獄に送ってやろうと思う。」

 「>俺も手伝うよ。」

結局、一人は巻き込む事になったが、仲間は多い方がいい。ありがとう、優。

 「>早速だけど、僕は明日から学校に行かない。悪いけど、いじめられるのは嫌だからね。」

 「>わかった。あいつの行動は俺が監視しておくよ。その代わり、今度飯奢れよ。」

ありがたい。飯ぐらい喜んで奢るよ。ファミレスでもいいなら。

朝、雨が窓に当たる音で目が覚めた。

昨日は、あのまま寝てしまったようだ。夢に真澄が出てきたけど、ずっと昨日の事を考えている訳ではない。嘘だけど。

しっかり、プリクラは財布に入れておいた。今度は無くさないようにしないと。

そんなことを考えつつ、スマホを確認しようとしたけど、電源を切っていたんだった。

スマホは事が解決するまで、電源をつけないことにしよう。まず、通知の多さで動きが重たくて、使い物にならない。今は、パソコンの方が使える。ツイートの様子を確認することも出来るし、なんなら僕が、自分自身を叩く事も出来る。今度、興味本位でしてみるのもいいかも。

 とりあえず、家族に挨拶をしようと下まで降りることにした。

 「宏也、ちょっとこっちに来なさい。」

なぜ呼び出されかは、大体検討がつく。母と妹がスマホの画面を突き出してくる。

 「これ大丈夫なの?」

心配をしてくれている妹に反して、母はご立腹の様だった。

 「人をいじめているの?ツイッターにも晒されて、こんな状態でどうするの。謝りに行きなさい。」

やっぱり、みんなそうだ。事実無根のことを鵜呑みにして犯人を仕立て上げる。僕は、反論はしなかった。しても同じだと感じたからだ。

やはり、こんな状態で学校には行けない。反宏也団体とか出来て、殺されるかも。あのツイッターを見た人は、僕を敵だと認識している。ツイッターアカウントも一瞬で見つけられた。高校の特定も時間の問題だろう。

その特定能力で僕たちのプリクラを探してくれたらいいのになんて考える。

だけど、その考えは間違いだった。

 妹が声を張り上げる。

 「お兄ちゃんのプリクラが上がってる!」

画面には、誰かが拾ったのであろう、無くしたはずのプリクラが映っていた。

おいおい、まじか。それはまずい。このままだと、真澄にも被害が及ぶ。

なんとかしないと。だけどどうすれば。インターネット上に一度あがってしまったら、消えることはないことは重々承知だ。

荒くはやり返せない。ここで僕が事実無根です、なんて言っても、誰も信じてはくれないだろう。

どうする。どうすれば。

 「宏也、ごめんなさい。私、勘違いしてたみたい。」

いきなりの謝罪にクエスチョンマークが浮かぶ。

 「真澄ちゃんを巻き込む可能性があって、こんな事しないわ。そのプリクラ、前々から大切にしていたでしょう。あなたは、真澄ちゃんを守ったのよね。」

 母の解釈はあながち間違ってはいなかったが、違う。僕は守ってなんかいない。僕が守られたんだ。だけど、家族の誤解が解けたなら、それでいい。僕は首を縦に振って、ダイニングテーブルの椅子に着いた。

 「ご飯は食べる?」

気を遣ってくれているだろう声。またもや、首を縦に振る。今日のメニューは、パンと目玉焼きとサラダにお茶。

僕は、オレンジジュースが嫌いだから、妹のコップにだけ注いであげた。

ありがとうと返事が返ってきた。しっかりした妹だ。だから、嫌いにはなれない。

 「学校は行かないわよね。」

当然、首を縦に振る。妹はクスッと笑って、ニートかよと言い返してきた。

気がつけば、僕は妹を見つめていた。

 「なに?」

その声でハッと気がつく。なんでもない。この野郎が、あの子に見えるなんて事、あるはずがない。

 もう一度、食事に目を移し返し、目玉焼きを口に入れる。この堅さは、僕をよくわかっている証拠だ。黄身の焼き加減は絶対ウェルダン派。黄身にお肉の単位を使うのはどうかとは思うけど、なんか格好いいから母に注文するときはこれで伝えている。

 雨の音が強くなってきた頃、母がこんな事を聞いてきた。

 「でもこれから、どうするの?しんどかったら、ダンスも休みなさい。こんな状態だったら、大阪の子達にも広がっているだろうからね。」

僕は、迷わず答えた。

 「仕返しをする。」

目は、母の黒い瞳をしっかりと捉えていた。そこに、僕の気持ちのすべてを詰めた。

母は口元を少しあげ、「そうこなくちゃね。」と席を立つ。横の奴も、なぜか拳をゴリゴリさせている。

 「殴りはしないよ。暴力反対。」

二人は肩を落としているが、当たり前だ。少しは武道の心が残っている。気が弱いだけだと思うけど。

 「ごちそうさまでした。」

お皿を、流しに持って行き水につけておいた。洗い物は母に任せる主義。いつもありがとう。

 妹には、雨の中、学校に行くのを励ます言葉をかけて、頭をくしゃくしゃしておいた。

「お前外に放り出すぞ」って暴言は流しておいて、ゆっくり階段を上がっていく。

そこで、思い出した。リプライだ。あいつに、違うアカウントでコメントを送ってみよう。

 早速、部屋に戻り、パソコンを開く。

パソコン用のアカウントは元から作っていたので、そのままコメントを送る。

もうすでに、いいね数は七千を回っていた。すごいな。もっと違う方法でバズりたかったのに。

 たくさんの胸くその悪いコメントの中に、自分の影武者を忍び込ませる。

 『こいつから、他にされたことは?』

カーソルをツイートボタンにあわせ、クリックする。自分のコメントが一番上に表示されたが、相手にはどう見えているのだろうか。できれば、目について返信が返ってくるなんて奇跡が起こってくれれば満点だ。

もし相手から何か返ってきたら、直ぐに気づけるようにパソコンの電源はそのままにしておこう。

さて、どうするか。真澄は大丈夫だろうか。何かと心配だが、たった一つのツイートで真澄までいじめられるなんて事は無いだろう。

だが、本当に犯人が奴かどうかはまだ確信が無い。あの時、僕に恨みを持っているっていったら、やはりあいつしかいないのか。

まぁ、奴の行動は優に監視してもらっているから、真澄に何かあれば直ぐに連絡が来るだろう。

何気なく窓の外を見る。

雨か。

雨が降ると思い出す。家に来て話をしたり、ゲームをしたり。ホラー映画を一緒に見て泣きじゃくったあの日も。真澄が家に来るときはいつも雨だった。

もちろん、晴れの日もあったけど。なんだか、記憶に残っているのが雨の日の事ばかりだ。

だけど、昨日は晴れていた。

神様は僕たちに恵みをくださったのかな。だけど、僕はその恵みを荒く使いすぎたのかも。

こんな事が起きるなんて思ってもいなかった。災いは僕だけだといいけど。

雨の降る激しい音と合わさって、パソコンの通知音が鳴る。

 「おいおい。まじで返ってきた。」

予想外の展開に思わず声が出てしまった。だけど、返信の内容も負けずに衝撃的だった。

 『彼女を取られた。』

思考が停止し、手が震えている。心臓もスーパーヒーローになったのかというほど早くなっている。

彼女?真澄が奴の彼女だというのか?

やはり、先週の僕の悩みは間違っていなかった?彼氏がいたから、あの態度だったのか。それなら言ってくれよ。僕が悪者じゃないか。

僕に対する返信のいいね数がどんどん伸びていく。それと並行して無くしたプリクラのコメントのいいね数もどんどん伸びている。

彼氏持ちの女の家に上がって、大切にしていた物を一緒に探し、ハグをして、家まで送った。

そりゃあ、こんな事をされてもしょうが無いだろう。僕は自分のしたことに気づいていなかった。

それじゃあ、あの熊のぬいぐるみは、そうか。そうだったのか。

だけどどうして、真澄は言わなかったのだろうか。僕が奴を嫌っていることを知っていたから?

なにがどうであれ、もうしてしまった事には変わりは無い。

喧嘩をしていたのだろうか、ちょうどそのタイミングだったか。

駄目だ。大事なことを忘れそうな気がする。あの時、真澄は僕を守ってくれたんだ。付き合っていて、あんな事を彼氏に言うか?

彼氏より僕が大切だったりしたら嬉しいけど、そんな映画みたいなことはあるはずがない。

僕が告白をずっとしなかったから、奴に真澄を渡してしまったのだ。真澄はその場の雰囲気に呑まれやすいタイプだ。告白されたら思わず返事をしてしまうだろう。

もたもたしていなければ、僕の彼女になっていたかもしれなかったのに。

だけど、待てよ。本当に真澄が奴の彼女なのだとしたら、真実を確かめたい。

今の状態だと、奴からすれば真澄も敵だ。元から僕だけを標的にしていたわけではなかったのか。もう彼は真澄を好きじゃない。好意は悪意に変わって、完全に僕たちを敵視している。

そうだ、真澄はもう彼女ではない。だから僕がハグをしても怒らなかった。となれば、やはり奴は僕たちを陥れようとしてツイートを書いたのか。

さらに、やり返さないといけない使命が出来た。

真澄のためにも、僕のためにも。

やはり、真澄にもこの事を伝えるべきか。今は学校にいるだろうから家に帰ってきたぐらいに電話でもしてみよう。

一応、優にもパソコンからメールを送っておく。

 「>多分、真実がわかった。奴の行動の監視を引き続きよろしく。」

もう、時刻は10時を少し回っていた。いろいろ考えているとなんだか疲れた。気持ちのリフレッシュと練習を兼ねて、ダンスでも踊ろうとするか。

今週は恥をかかないように、たくさん踊り込んだけど、やはり理想には追いつかない。憧れのアーティストの踊り方ってどうしてあんなにもかっこよく見えるのだろうか。

癖があってもかっこいい踊り方。自分の身体を理解しているってことか。

鏡の前で腰の位置を確認する。自分の納得いく位置で止めてみて、もう一回音を流して通してみる。少しだけ良くなったかも。この繰り返し。

地道に自分を研究しないと。

 カウントで通していると、自分のカウントの取り方が金髪先生と同じだと言うことに気がついた。やっぱり似るんだ。

これからダンスを始める人は、初めの先生をよく選ぶべきだと思う。

みんなそれぞれいい癖があるけど、その中でも誰に似たいかで決める。だからこそ、体験はたくさん行ったらいい。自分の好きな人と。

なに言ってんだ。自分でツッコミを入れた。

そうだ、真澄はもう帰ったかな。

こんなに踊り込んだのは久々だ。気づけばもう14時。だけど、まだ学校は終わっていない。

早く帰ってこないかな。真澄からLINEは来ていたりするかな。LINEは今見られないから、事情を説明して、パソコンからスカイプ通話なんて。ずる賢い考えだけど、これから、真澄と作戦を立てる時とかもそうするしかないから、結局はいいだろう。

だけど、なんだか複雑だ。今はもう別れているのかもしれないけど、あんなくそ野郎に先を越されたなんて、うまく言い表せないけど、胸の奥がくしゃくしゃする。さっき、妹にしたみたいに、真澄からくしゃくしゃされている感じ。僕は、「外に放り出すぞ」なんて言わずに、そのまま幸せを噛みしめるけどね。けど、このくしゃくしゃは、放り出した方がいいのだけど。


胸のざわめきが、雨と一緒に流されればいいのに。

もう少しで、届きそうなのに。

悪い方を先に考えて、一歩を出せずにいた。

そんな先回りをしても、意味はないのに。結果もでないのに。

殻を破った、生の心を表せれば良いのに。


雨。

雨って、どうしてこんなにも綺麗で透き通っているのだろう。

時には、色をつけて、感情を露わにするけど、結局はまた綺麗な透明に戻る。

今、激しい音を立てて、怒りをぶつけているのは、なにもわかっていない者への忠告なんだろうか。このままにしていたら、まずいぞって。

誰かにとっては嫌で、降ってほしくないものかもしれないけど、こんなにも美しく、輝いているのを見逃すのはあまりにも勿体ない。

少し、雨に当たってみたいな。

僕は、階段を降りて玄関を開けた。雨の匂い。

今まで避けてきた、嫌なこと。

雨とのすれ違いを、今、向き合ってみよう。大股に一歩、足を出した。

頭に当たる大粒の雨。顔を流れる、水玉。服が身体にくっつく。

直ぐに全身が、ぐちょぐちょになったけど、今はこれがいいのだ。

真澄はなんて言うかな。気持ち悪いなんて言うかな。

僕はこのまま、水に溶けたい。

そんな、訳のわからないことを考えて、お風呂に直行した。

時刻は17時。そろそろ家に帰っているだろうか。

家の電話を使って、真澄のスマホに発信する。

一回。二回。とかけたが、真澄は電話に出なかった。

まさか、真澄に何かあったのか。

それなら、真澄は僕に何かしら送ってくるだろうから、考えすぎか。もし何かあれば、優からも連絡が来るだろう。

まだ、そんなに考えるのはやめにしようか。

そのまま、一度も電話が鳴ることはなく、今日は終了した。

朝。ふと気になった。

あれ、なにも優から連絡が無い。高貴がなにもしなかっても、僕が送ったメールに返信はしてくるだろう。

真澄の事も心配だが、今の危険度と言えば、優の方が危険かもしれない。殴られて怪我をしたとかじゃないだろうな。そんなことになってたら、もう、ただじゃおけない。

とりあえず、パソコンからもう一度メールを送ったが、返信は帰ってこなかった。

自分の考えに疑いはかけつつも、確認のために、優の家に向かうことにした。

優の家に向かう途中、真澄のことも気になったので、少し寄ってみる。

シャッターは閉まっていて、チャイムを鳴らしても誰も出てこなかった。やはり、ちゃんと学校には行っているようだ。すこし安心はしたけど、本心は顔を見たかった。

そんな欲望は、殻の被った心にしまって、本来の目的地に向かおう。

 雨は、相変わらず降り続いているけど、今日はすれ違うことにした。傘を差して、濡れてもいいようにタオルを持っている。すれ違いどころか、拒絶だ。雨からすれば、今日の僕は裏切り者だ。

裏切った水玉を傘で弾きながら、少し色のついた水溜まりを避けて、せめて踏みつけるのはやめておこうと思いながら、道を進んだ。

道中、少しだけ怒った雨を傘にうけたけど、なんとか優の家にたどり着くことが出来た。

真澄の家のチャイムをならす緊張とは、また別の緊張をしたけれど、絶対にそんなことはない、と心に言い聞かせて、震える手を押し込んだ。

一回押せば、勝手にピンポーンとなるタイプではないのを忘れていて、早く離しすぎてピポンと変な呼び出し音になってしまう。

その音にもしっかりと反応をしてくれて、家の奥から「はーい」とお母さんの声が聞こえ、どんどんと走る音をたてながら、家のドアを開けて出てきてくれた。

 「あ、おはようございます。優君はいますか。」

久々に会うお母さんに緊張しながら、優の所在を確認する。

 「あぁ。ひさしぶりね。あがって。」

手招きをされて、家にあがる。優がいるかどうかは、お母さんの顔を見てわかった。

自分の部屋にいた優は、頭に包帯を巻いて、手はガチガチに固定されている。

 「あいつか。」

 「なんでわかったんだよ。勘、鋭すぎ。恋愛には疎いくせに。」

 「うるさいよ。」

怪我の具合を感じさせない、いつものノリに少し安心はした。

 「だけど、どうして。」

怒りのこもった声で、真実を聞く気持ちを作る。

優は、真剣な顔に戻って、低い声で話し始めてくれた。

 「普通に授業が終わってぼーっとしていたら、一組がざわざわしてきて、ほんとに帰ったぞ、とか聞こえてきたんだ。初めは何の騒ぎだと思ったけど、まさかと思って、廊下に出てみたら、まさかのまさかで。咄嗟に、真澄ちゃんを追いかけたんだけど、無視されてそのまま本当に雨の中帰っていったんだ。」

血の気が引いた。なにも知らずにのうのうと過ごしていた自分が本当に憎らしい。

 「俺、真澄のとこ、」

 「ちょっと待て。駄目だ。その日の帰り、高貴に呼び出されて、「今度、真澄に関わったら殺すってお前の親友に伝えとけ」って脅されて、カチッときたから、「たかが高校生の遊びだろ。やれるもんならやってみろよ。」って言い返したら、これだ。今のあいつなら、本当にやりかねない。」

 「だけど、そんなの今頃なにされているか。」

 「馬鹿かお前は。親友がこんなのになっているのに、まだわからないのかよ。真澄ちゃんを助けたいなら、今は我慢するべきだ。とりあえず、徹底的にやり返すぞ。さぁ、俺のことをツイッターにあげるぞ。動いたら痛いから、連絡も出来ずにすまねぇな。」

 「いや、こちらこそごめん。こんな目に巻き込んでしまって。治療費は支払うよ。」

 「治療費?あぁそれなら保険でちょちょいさ。いつもお世話になってんのは俺の方だし。」

 「なにいってんだか。本当に申し訳ない。今度見舞いと一緒に持ってくるから。」

こんな目に遭ったのに、まだ僕のことを気遣ってくれているんだ。だからこそ、ツイッターにあげろ、という事が本当に理解できなかった。

 「だからもう、優を巻き込むことは出来ないよ。ツイッターにあげるなんて。」

 「違う。これからが本当の逆襲なんだよ。」

優の眼差しは、異様に説得力があった。

 「俺の姿をリプライして修羅場にするって作戦。どうだ、妙案だろぅ?」

優を庇おうと思うばかり、その手は全く思いつかなかった。

 「本当に、ありがとう。絶対に貶めてやろう。作戦実行だ。」

 「なんだよ、その中二病感。」

 「うるさいよ。」

感動と決め台詞がかっこよく決まったのに、最後ので台無しだ。だけど本当に優には感謝だ。ファミレスから、焼き肉に昇格だ。怪我が治るまでは、行けないけど。

 「じゃあ、この写真を投稿するよ。」

 「おぉ。盛れてる。」

包帯でぐるぐる巻きなのに、なにが盛れているだ、と思う。

そんなことを考えていたつかの間、包帯で巻かれた白い頭がこちらに向き、興奮を抑えられない様子で声を張り上げてきた。

 「通知が止まんねーんだけど。」

投稿から三秒でいいね数が爆速に増えていく。優のケータイがフリーズしかけている。

 「作戦、成功じゃね。」

 「そ、そうだね。すごい。」

僕たちのツイートは瞬く間に、一千いいねを超えて、僕たちを護衛してくれる人が集まってきた。中には、まだ状況が飲み込めず『ん?どういうこと?』などと疑問を抱く人も少なくはなかった。

そんな人のためにも、もう一度違うツイートをしてみようと企んだ。

 「よし、じゃあ次は、「我々は、真犯人を把握している。直ぐに晒すことが出来るぞ。このツイートを消して、直ちに謝罪文を掲載しろ。」でいってみよう。あいつ、本気でびびってちびるんじゃね。」

 「このツイートも、中二病感やばいけどね。僕の写真も晒されたんだから、あいつのも、もう晒しちゃおうよ。」

僕の中には、復讐心しかないのか。だけど、優は違う。

 「うまく立ち回らないと、下手したら、また事実と違うことを書かれるぞ。」

優は、一歩先を読んでいた。奴の思惑通りにはさせないということだ。徹底的にやり返すとは、こういうことか。

 僕たちは、早速このツイートをした。さすがに、疑問を抱いていた人たちも理解をしてくれたようで、『あれ、こっちが真実?』と気づき始めた。

 「よし、あとは高貴の返信を待つだけだな。だけどどうして、あんなツイートをしたんだろうか。」

 「そうだ、それを伝えるのを忘れていた。わかったんだ。奴の思惑が。」

 「何だよ。」

 「奴が、どうして僕のフェイクツイートをしたかは、真澄が関係しているのに間違いない。真澄は、奴と付き合っていたかもしれないんだ。」

 「まじかよ。」

 「もしそうなら、僕はいけない事をしてしまった事になる。今の奴なら、僕をその場で殴ったはずだ。だけどしなかった。ということは、あの時にはもう、真澄と別れているっていうこと。奴は、嫉妬心だけでこれをしたんだ。」

 「じゃあ、あのボールを当てられた事件も、そういうことになるか。」

 「そういうことなんだ。奴が、教室で真澄に近づく理由もそれだよ。そして、優が言われたあの台詞で、すべてが繋がったってことだよ。」

 「まさに、墓穴を掘ったってことか。」

 「やり返さなかった、お前はすごいよ。」

 「まぁな。ただ、気が引けただけだけど。って初めて、お前にお前って言われたわ。」

 「そうかな。自己自粛生活で口調が変わったのかも。」

 「なんだそれ。」

笑いながら、そういう優にまたもや安心する。

 「とりあえずは、奴からの返事を待つか。」

 「そうだね。明日までに来なかったら、晒しあげよう。」

 「ドンと、いってやれ。」

案外早く、奴を追い込むことが出来た。

あとは、結果を待つのみだ。

「>さぁ、やってやろうか。」

あれから、返信が返ってくる事は無かった。

一応、優しい僕たちは、金曜日まで待ったのだが、生憎、こっちには爆弾を投下する準備は出来ている。もう躊躇はしない。真澄と、優、そして僕の憎しみを、お前にぶつけてやる。

僕は、高貴の写真をツイッターにあげた。

それは、当たり前にいいね数が伸び、僕への誹謗中傷は消え、反対に高貴へとターゲットを変えた。

 『心配した自分が馬鹿だった。』

 『今すぐ、謝りにいけ。』

 高貴が、直接謝りに来ることなどないと思う。僕に謝るぐらいなら真澄や、優にするべきだ。これだけ傷ついた人たちの気持ちを思い知ればいい。


 明日は土曜日だ。

久々に真澄に会う。久しぶりの顔。香り。全てが今は雨の香りで思い出せなかった。


 雨。


『覚えとけよ』


本当にお待たせ致しました。学生生活を楽しんでいると、書く時間がありませんでした。正直者なので正直にいいます。(何様)


さて、第5章お楽しみ頂けましたでしょうか!長らくおまたせしての章でしたが期待に添えましたでしょうか…。

どうか、柔らかいコメントを…お待ちしております…(辛口もまってます…)

第6章も引き続き執筆しておりますので、是非最後まで楽しんでいただければ幸いです。


では、この時世を一緒に乗り越えましょう!!

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