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 おや、そうですか。旅館の女将から私のことを聞きましたか。ええ、あの人にだけは話しました。他には誰にも話していませんし、わざわざ話すようなことでもございませんからね。

 わが家でも語られるのは、かしこまったときではないんですよ。私が父からこの話を聞いたのも、私が二十歳のころでした、家族で大きな花火を見に行った帰り道に、川のそばを通ったとき、父がぼそっと私に話し出したのです。そういえば、って。

 夏の家族の記念の日みたいな日で、いささか感傷的になっていたのでございましょう、川の流れる音から河を思い出し、わが家のささいな話について語り出したのです。

 私も、なんていうこともないときに友達に話したことが貴方様に繋がったというのも、何かのご縁なのでしょう。


 よく物語とかお話しでは、先祖代々何かしらの運命を背負った人が大変な苦労をなさっているようですが、私どもはそういった類いのものではありませんの。大したことではありません。ただ夢の中に、大きな大きな、それはそれは大きな河が出てくるのですございます。

 父も、祖父も、曾祖父もといった具合に、父方の家系に続くことらしいのです。

 毎日見るわけではありません。夢ですので忘れてしまうこともしばしばです。ですから父から話を聞くまでは、夢とはそんなものなのだろうと思っておりましたし、話を聞いてからも、本当にご先祖様が見てらした河と、私が見た河とが本当に同じものなのか、確かめてみることもできません。

 父の話で面白かったのは、見る人によって河との関わり合い方が、どうも違うらしいのです。

 私は河辺のお花畑でいろいろ遊ぶ夢を見ます。花を摘み、輪を作り、蜜を吸い、占いをします。

 父は河の上で舟に乗って釣りをしているのだそうです。ご先祖様のある方は泳ぐ夢、ある人は魚になったり、ある人は亀になって泳いだりと、河を見るのは一緒なのですが、そこで何をしているかが皆違うらしいのです。

 ですから不思議な家系だと大げさなことを言いましても、人様に話して聞かせることではありませんし、自分の子どもに居ずまいを正して聞かせるようなことでもありません。ただ河の夢を見る、それだけのことなのでございます。


 でも貴方様はその先が聞きたいのでございますね。

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