9、家完成、もう永住しよっかな
誤字、脱字があれば教えていただけると嬉しいです。
3mほどのトンネルを超えるとそこは……なんと…………部屋だった。
20畳ほどの広々とした空間に天井までの高さは3mほど一人と2匹が住むには十分の広さだ。
そして中央に見えるのは大吉こだわりの囲炉裏である。
部屋の中で火を燃やしても大丈夫なようにその真上には空気穴が開けられている。
空気穴はまっすぐ上ではなく横に開けられており、雨が降っても入ってこないようになっている。
さらにそれでも雨水が入った時用に空気穴の途中に水を抜くための穴がある。
大吉が潜りながら掘ったので大吉の体分の大きさの穴で少し大きいが出口になる穴は拳一つ分なので大型の生き物は入ってこれない。
囲炉裏ではすでに木が燃えていてその明かりが部屋全体を明るくともしている。
家具は基本掘り出しで形を整えている。
河原から砂岩や泥岩を持ってきて磨いているので、大理石のように美しい。
その上には枝を削って作った割りばしや、森で見つけた粘土質の土で作った皿やコップ、鍋などがいくつか置いてある。
土で作ったものは、しっかり野焼きしてあるので水を入れたり煮たり焼いたりしても平気だ。
その中にやけにリアルに作られた大吉、ハク、ママガーの人形があるのはご愛敬だ。
入って奥の正面にあるベッドは、岩をくりぬいたところに砂を入れさらにその上に枯草を入れ最後に森で見つけた綿で糸を紡ぎ作った布をかぶせてある。
とりあえず床で寝るよりいいかというぐらいのものだ。
右側にはキャットタワーならぬタイガータワ―がある。
さっそくママガーとハクが登っていた。
左奥には岩が壁にピタッと引っ付けて置いてある。
これはわざわざ壁に合うように整えた岩でこれを動かすと、貯蔵庫になっている。
もし雪がふるようなことがあればここに雪や氷を詰めて雪室を作りたい。
結局、入口は少し岩や木などで隠してはいるが普通に入れるようにした。
そうしないとママガーやハクが自由に出入りできないし、ママガーがいるときは何か近くにいるとうなって教えてくれるし、大吉自身もこのサバイバル生活で五感が研ぎ澄まされ、ある程度の気配は気づけるようになったし、殺気を感じたら寝ていてもすぐ飛び起きれるくらいにはなった。
大吉の趣味の一つである秘密基地づくりの知識で想像以上に充実した拠点ができた。
もうこれは家と言ってもいいだろう。
「これでついに俺も家持かぁ。」
異世界でとりあえず安心して住むところをと作っていたはずなのにこのこりよう…
まぁとにかく満足はしているみたいだ。
するとママガーがひとりで部屋から出て行った。
「あれっ、もう飽きたんかな。今日はハク、お留守番かぁ。こっちおいでモフってやろわ。」
家を作っている最中もたまにママガーはハクを置いて出かけることがある。
一緒に行っているときはハクに狩りの仕方とか教えて一緒に獲物を食べていると思うのだが、たまにはひとりで息抜きをしたいのか。
そんなときは手作りのおもちゃでハクと遊んでモフらせてもらい、いやされているので別にいいのだが……
30分ほどハクと遊んでいるとママガーが何か石をくわえて戻ってきた。
そして、大吉の前に置いた。
「これは、くれるってこと?なんやピンクできれいな石やね………んっ、これもしかして………。」
そう言いながら大吉はその石をなめた。
「しょっぱ!!これ、岩塩やん。やったーーーー!!!!」
久しぶりの塩分にテンションがあがり、大吉はママガーに抱き着いた。
よく考えたら大吉がママガーに触れたのは木の上からしがみついて頭から落とした時以来………
ママガーはその時の恐怖を思い出したのか一瞬ビクッとしたが、もう、しょうがないわねぇと言わんばかりにクゥ~ンと鳴いた。
ハクはその様子が嬉しかったのか大吉とママガーの周りを走り回っている。
「今日は、せっかくやから、魚でだしを取って、塩で味を整えて川魚スープでも作るかな………」
ドォォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!!!
外からだ。
バッと大吉は出入り口の通路を見た。
普段なら岩と木で隠してあるので外は見えないはずだが、そこには何もなく外の様子が見える。
急に入口が暗くなった。
そして、なにか大きな生き物の口が出入り口の中に無理やり入ってきた。
グルゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ、ガァァァァァァァァアアアアアアアア
口を開けたと思うといきなりものすごい大きさの声で吠えてきた。
その衝撃で、テーブルの上にあった食器類が地面に落ち何枚かが割れる音がした。
その瞬間、大吉の横から黄色い稲妻が通ったようにママガーがその生き物の鼻に噛みついた。
ガァァァァァアアアア
その生き物もさすがに痛かったのか、顔をひっこめたがママガーは鼻から離れずそのまま外に引っ張られていった。
ハクがママガーのもとに走り出そうとする。
そのハクを捕まえて
「ハク、ここに隠れとんねんで。」
有無も言わせぬ迫力で大吉はハクを抑える。
大吉が考えていることは、ハクが行っても殺されるだけ、ママガーだけだったらあの生き物に殺される。
だったら助けに行かなければならない。誰が………俺しかいないだろう。
殺すというイメージで吐き気がしてくる。
しかしここで吐いてしまったらハクを不安にさせる。
大吉はぐっとこらえた。
「ハク、大丈夫やで。ママガーのお手伝いに行ってくるわ。」
自分自身をもごまかすように笑顔でハクの頭をなぜて大吉は部屋から出て行った。
行った。
〈布の作り方〉
いくつか方法があって、毛皮を使う方法もありますが今回は糸から作ります。
糸をつむぐには、大きな糸つむぎ機が有名ですが、ツム(スピンドル)という独楽のような道具があり、それを独楽のように回しても糸がつむげます。
作り方もツムの方が簡単ですし、なれさえすれば結構楽しいです。
そして本格的な織り機がなくても、木の棒と糸さえあれば織り機は作れます。
試してみてください。
〈野焼き〉
縄文時代の器の作り方です。
できた土器を乾燥させ、その周りで火をおこして焼きます。
家事注意です。
〈雪室〉
天然雪を使った冷蔵庫です。
雪が溶けることで室内の温度と湿度は保たれます。