2、落ち着けと言われるとよけい焦る
誤字、脱字があれば教えていただけると嬉しいです。
気がつくとお花畑に囲まれていた。
立ち上がると向こう側には川が流れていて、川向いから死んだ祖母が笑顔で手を振っている。
祖母に向かって手を振り返しながら走って行く。
「ばぁちゃ〜ん………、ってあかん、あかん。川越たら死んでまうやん。」
大吉は、勢いよく飛び上がった。
辺りを見渡すが、生き物の気配はないようだ。
地面を見下ろすと漫画のように人型の窪みが出来ている。
上を見上げると30m以上は高さのある崖がそびえ立っていた。
「俺、なんで生きて………」
体を確認しようとすると、体がほんのり黄色くなっていることに気づいた。
どうも汚れではないらしく、少し光っているようにも見える。
試しに拳を握り、そこに意識を集中してみる。
すると拳の光が強くなった。
「おぉ、なんじゃこれ…」
大吉は立ち上がり、周りを見渡しバスケットボール大の石に近づき…
「チェストー!!」
本気かふざけているのかわからない掛け声を出しながら殴ってみた。
ドォォォオン
石が砕け散った。
「…………ハハハ…異世界転移でスーパーパワーゲット…なんちて…」
何がなんちてかはわからないが、拳は何ともなってない。
「そういえば崖から落ちたのに体が何ともないなぁ。」
一通り落ち着き、ホッとしようとした瞬間、身体中の光がどんどん強くなって来る。
それに比例して、力が抜けていく。
「なんや、やばい、力が抜ける…」
そう言っているうちにも光はさらに増していく。
焦れば焦る程光が強くなり、力が抜けていく。
「くそっ、落ち着け!!」
大吉は座り、座禅を組み始める。
働き始めてすぐミスや難題に困り悩んでいるときに、職場の先輩にお寺の座禅会に連れて行ってもらった。
広々としたお寺の中でお坊さんのお話を聞き、座禅を教えてもらう。
その時に、何となくだが今までの悩みを忘れ、落ち着いた気持ちで集中出来た気がした。
それから何かあるとそのお寺に行き座禅会に参加させてもらうことにした。
それのおかげかはわからないが、落ち着いて行動でき、ミスが減るようになってきた。
この時とっさに座禅をしたのはとりあえず落ち着こうと思ったからだ。
自我を極力排除し、自我以外の物を感じ取ろうとする。
すると、おへその下の辺り、いわゆる丹田から体全体に何か流れているように感じた。
これだ、と何かの流れを丹田に戻そうとする。
しかし、激流のように体から放出され、上手くいかない。
次は体の外に出ないように止めようとする。
少し落ち着いたようにも思えるがまだ足りない。
それならと血流をイメージした。
丹田から体全体を巡って丹田に戻る。
そして少しずつその量を減らすイメージをする。
目を開けると身体中は汗でびっしょりだ。
しかもマラソンを走り終えた後のように疲れがたまっており、力が入りづらい。
しかし、黄色に光って見えていた肌は元に戻っている。
「ふぅ、何とかなったか…」
ふらふらの体を踏ん張りながら立ち上がり、体の中を意識してみると、体を流れている何かは、体を少しずつ、だがしっかりと流れていることがわかる。
「これは、いわゆる気というやつちゃうんかな?」
疲れた体で考えるが答えは返ってこない。
「とりあえず、水が飲みたい…」
周りを見渡し、音を聞くと水の流れる音がする。
大吉はその音のする方へふらふらと歩いて行った。
〈座禅〉
自我を極力排除して、自分以外の存在を全感覚で受動的に感じ取ることによって、自我以外の存在に縁どられた自我自体を感じ取る。集中力を上げたり、心を落ち着かせたりする効果もある。
〈気〉
様々なとらえ方や考え方はあるが、ここでは、魔力とは別に考える。
体の中を通るエネルギーで、体を動かすときに消費し、筋力を増強してくれるものと考えてもらって良い。