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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第二章 東大陸編
20/137

20 帰還


 ◇◆◇


「買っちゃった」

「買われちゃった!」

「……立ち合っちゃった」


 エルニアーチ家の客間にシンシア、リッセルの二人が並ぶ。ルースは外に出ている。

 その二人の前で、トモヤ、ルナリア、リーネが次々とそう宣言した。

 前者二名はノリノリ、後者一名の目は死んでいた。


 一拍置いて。


「「え、えぇぇぇええええ!」」


 二人の絶叫が、館を大きく揺るがした。




 トモヤがルナリアを購入した日から三日後、帰りは奴隷商の修理した馬車と共にゆっくりと時間をかけて帰ってきた。リーネの持つ馬一頭にはさすがにルナリアを含めた三人で乗ることが出来なかったからだ。

 ルガールに無事戻ってきたトモヤ達は、冒険者ギルドに寄って依頼の完了を告げた後、直接依頼主であるリッセルのもとにやってきたのだ。

 一日ほど早く帰ってきていた他の冒険者達(鋼鉄の盾)によって、トモヤ達がレッドドラゴンを二体も倒したという情報は既にリッセルのもとまで届けられていたのだが、それでも彼らは驚きを露わにしていた。


 そう、依頼内容の完了ではなく、トモヤが奴隷を購入したという点に関して。

 それも買われたはずの幼い少女が嬉しそうに『買われちゃった!』というものだから訳が分からなかった。



「なるほど、ここ数日の間にそんなことがあったんですね」


 数十分かけ、トモヤとリーネがこの数日間で体験してきたことを所々脚色(二人のステータスや水浴びの件など)し、重要な場所は余すことなく伝えた。

 するとシンシアは納得した様に頷いていた。


「しかし凄く驚きました。この国では奴隷の扱いは比較的いい方だと思っていますが、さすがにこれほど奴隷側にとって都合のいい条件を提示した方なんて初めて聞きましたよ。正直引いてます」

「引かないでくれ」


 心からの懇願に対し、シンシアはくすくすと笑う。

 どうやら冗談だったようだ。


「ルナリアさんでしたか?」

「そうだよ」

「ふふっ、とても可愛らしい方ですね。私はシンシアと申します。よろしくお願いしますね」

「うん、よろしくね!」


 優しく微笑みかけてくれるシンシアに心を許したのか、ルナリアはさっさと駆け寄っていく。

 近づいてきた可愛らしい少女の頭を、シンシアは嬉しそうに撫でていた。

 二人は少しの間幸せな時間を堪能するも、シンシアは周りに人がいることにはっと気付き顔を上げる。


「す、すみません。ルナリアさんが可愛すぎてつい……」

「ああ大丈夫大丈夫、俺たちも帰ってくるまでずっとそんな感じだったから。なあリーネ?」

「うん、そうだな。ルナの可愛さに私も何度やられかけたことか……」


 そこからトモヤ達三人でルナリア可愛すぎ問題に関わる議論が始まろうとするが、話が逸れていくのを止めるようにリッセルがゴホンと音を鳴らす。


「それでトモヤ殿とリーネ殿は、既に報酬をギルドでもらっているといるという理解でよかったか?」

「はい、討伐依頼の聖金貨100枚はしっかりと頂きました。他にも魔物の素材買取などでギルドからいくらか貰いました」


 報酬はリーネと話し合った末、半分ずつにしてあった。レッドドラゴンの死体についてもリーネが必要としているのは巨大な牙一本だけだったらしくその部分以外は売却したのだ。鱗などは強力な鎧を作るのに利用されるらしい。

 他にも、道中に出会った魔物たちも売ることにした。受付嬢のエイラがすごく驚いていた。


「それで、二人はこれからどうするつもりなのだろうか? 確かトモヤ殿は以前、少ししたらこの町から旅立つと言っていたが」

「そうですね、もう少ししたら旅に出るつもりですが……」


 そう言いながらトモヤが視線を向けるのは、いつの間にか側に戻ってきていたルナリアだ。

 一人旅ならともかく、彼女のような守るべき存在と一緒なら十分な準備が必要となってくる。

 旅立つ前に色々と試しておきたいことがあった。


 気を引き締め、トモヤはリッセルに真っ直ぐ向かい合う。


「それでその、以前引き伸ばしにしたお願い事をしようと思うのですが」

「ああ、シンシアを助けてくれた時の礼だな! うむ、なんでも言うといい!」

「旅立つまでのしばらくの間、この家で厄介になることはできないでしょうか?」


 旅までの期間をあけるの理由と同様、ルナリアを連れ添った状態で町の荒くれもの溢れる宿屋に泊まろうとは思えなかった。

 その頼みに、リッセルは力強く頷いた。


「ああ、もちろんだ。シンシアを助け、レッドドラゴン討伐をも成し遂げたトモヤ殿を私達は盛大に歓迎しよう。我が娘もそれを喜ぶだろう、そうだろうシンシア」

「おおおお父様、いきなり何を言ってるんですか! 違いますからねトモヤさん、今のお父様の言葉には特に深い意味があるというわけではなく」

「そうなのか? シンシアが喜んでくれるなら俺も嬉しかったんだが」

「なっ……」


 ぷしゅーと、シンシアの顔が赤く染まる。

 すると隣でリーネがそっとささやく。


「トモヤ、今のはさすがにわざとだろう?」

「ちょっと。いやだってほら、さっき引かれたし」


 そして、トモヤとルナリアがこの城に滞在することが決まる。

 リッセルは用事があるからと客間を出ていき、残った四人でさらに話は進んでいった。



「それでも、旅に出るとするとルナさんが心配になりますね。トモヤさんが側にいるとは言え、もしものことがあると考えたら……魔族の少女ですので、嫌がらせをしようとする人もいそうですし」

「そんな奴がいたら二秒で潰すけど……そうだな、確かにそろそろルナのステータスを見てもいい頃合いかもな」


 ここ数日でトモヤ達の信頼度は順調に高まっている。

 それぞれが持つ能力に関わりなく尊重しあえているといってもいいだろう。

 ステータスを見たところでいまさら関係は変わらない。


「なあルナ」

「なに、トモヤ?」

「ルナのステータス、見ていいか?」

「……トモヤにだったら、いいよ」


 意味深なセリフ、と茶化すことも出来ない。

 そう答えるときのルナの表情がどこか悲しげだったからだ。

 ステータス絡みであまりよくない過去があったのかもしれない。


「トモヤさん? ルナさんのステータスを見るということは既に彼女のステータスカードも作っているんですか?」

「いや、そうじゃなくて鑑定でだ」


 シンシアはトモヤのステータスカードを直接見たことないため、トモヤが鑑定のスキルを持っていることに疑問を抱くことはなかった。

 素直に尊敬する目でトモヤを見ている。


 その視線に申し訳なさを感じながらも、トモヤは意識をルナリアに集中する。

 白い肌、青の瞳が相変わらず可愛らし違う集中、と一人内心で慌てる。

 そして、ようやく鑑定Lv∞が発動した。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ルナリア 12歳 女 レベル:8

 職業:白神子(しろみこ)

 攻撃:30

 防御:40

 敏捷:30

 魔力:120

 魔攻:80

 魔防:60

 スキル:治癒魔法Lv1・召喚魔法Lv1・神聖魔法Lv1・隠蔽Lv1・神格召喚(しんかくしょうかん)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 神格召喚――ミューテーションスキル。■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

                    

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「……なっ」


 そのステータスを見たトモヤは、驚きに目を見開いた。

 その反応にこの場にいる全員が注目する。


「どうしたんだトモヤ!?」

「トモヤさん!?」


 緊迫した声が響く。


「……トモヤ」


 そして、ルナリアの不安気な呟きも。


 しかしトモヤはそれらに意識を割くことが出来なかった。

 それほどまでに衝撃的な内容だったからだ。


 レベルの割にステータスが全体的に低い?

 まさかのミューテーションスキル持ち?

 鑑定Lv∞でも神格召喚の説明が読み取れない?


 その、どれでもなく。


「じゅ、12歳!?」


 年齢についてだった。

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