第二話
まさか、自分からこの場所に来ることになるなんて。正直憂鬱です。
「久しぶりだねキリエ。何百年振りだい?君から連絡受けるのは初めてだね」
まるで、王宮の玉座のような場所に偉そうに座っている男。力だけはこの世界の最高神に匹敵する神ファブリス。高位の神の癖に何故か昔から私に興味をもち勧誘したり。拉致しようとしたり。ストーカーです。
「お久しぶりです。ファブリス様。出来れば二度と会いたくありませんでした」
こちらは頼む側だが下手にはでません。この神様は下手に出たくらいでは気分を変えませんし。
「ハッハハハハ。僕を前にしてずかずか本音を言うのは君くらいだよ。どうだい?前から言うように僕の元にこないかい?そっちの神にはいっておくから」
ちっ、喜びましたか。ストーカーに何を言っても無駄ですね。
「邪神の使いにはなりたくないですから」
「僕は自分が邪神のつもりはないんだけどね。別に面白い事をしたいってだけだし生物の繁栄は望んでるよ。それで、そっちの人間が君が頼んできた人かい?」
ファブリスが視線を向けた先には雄二さんが顔を青くしている。現在魂だけの状態なので私から離れる事はおろか、喋ることもできません。しかも、無駄に強い力を振りまいているのですから。無抵抗な魂の状態では苦しいのでしょう。
「僕には君がこの程度の人間の為に頼み込んでくることがわからないな」
「別に入れ込んでませんよ。ただ、間違えて魂を刈り取ってしまったので」
あと、腹がたつからですけど。
「え?またそんなような事やっちゃったの?」
またとは心外です。ファブリスの前ではそうドジはやってないはずです。まぁ、どうせ定期的に調べているのでしょうが。あぁ、もう隠す気もないのに笑いをこらえているのが腹がたちます。
「どれどれ、ちょっと興味が出てきた。君の過去をみせてもらおう」
「その前に無駄に溢れさせている力を抑えてください」
「あぁ、ごめんね。そろそろ魂が消し飛んじゃうか」
あぁ、ようやく一息つけます。さすがに格上過ぎて私にまで影響でますから。雄二さんも幾分かよくなりました。
「さてさて、じゃあ君の人生をみせてもらおうか」
ファブリスが雄二の瞳をのぞきこむ。私もできますがもっと手間がかかるので羨ましいです。
「はぁ。なるほど。君呆れるくらいクズだね。自分を早々に」
その言葉に雄二さんは少し表情を変えますが何も言い返せないようです。
「いやいや。でも君状況判断だけは人並みにできている。普通、楽観的とか願望が入るものだけど君はきちんと冷静に分析できている。まぁ、つまりはあのまま死ぬことこそ正解だったわけだ」
さらに追い打ちをかけるのはファブリスらしいです。だからこの神様嫌いなんですよ。
「まぁ、いいか。でも、僕が担当する世界では剣と魔法の世界だよ。正直何日生き残れるっかなって感じだけど?」
「だからこそあなたにお願いしたいんです。私が知る神々の中でできる力とやってくれそうな神はあなただけですから。この世界で自分が誇れるようになれる力を」
その瞬間。あたり一帯が凍り付いた。先ほどよりいもなおひどい。私だって力を入れえてなければ呼吸することを忘れてしまいそうです。周囲に幾分か和らげるための結界を貼ります。それでも気休めにしかならないですが。
「キリエ。君は正気かい?僕は君の頼みならある程度までなら無条件で聞き入れる程度の度量がある。でも、僕の聞き間違いかな?君はそれに付け込んでこんなレベルの人間を僕の使途にしろと?」
さすがに、矛先がこちらに向くと効きますね。でも、臆するつもりも必要性もないです。
「都合がいいんじゃないですか?あなたは自分の世界の人間に力を与えることを禁止されています。どうせ余計な混乱を生むだけだからと。でも、あなたはそれが不満だったはずです。ここに異世界の人間がいます。さて、異世界の人間があなたの力を授けても問題ない。例えこれから向かう先があなたの世界でも」
「うん、確かにルールには触れてないね。うん、そうだ。確かにできるし。僕もあのルールは気に食わなかった」
すぐに威圧することをやめる。もともと怒ってなかったくせに威圧なんてやめてほしいものです。
「なるほどなるほど。でも僕にメリットがないんだよね。君が僕のもとに来てくれるならすぐにでも最上級の力を授けるけど」
「ごめんこうむります」
それだけは絶対に嫌だ。それにそんなことしなくてもどうせこいつの考えは決まっている。
「う~ん。どうしよっかな」
「悩んだフリはもういいじゃないですか。どうせ、やっていただけるんですよね」
面白くなる可能性がることをこの男が見逃すはずがありませんから。
「僕としてはもう少しメリットがほしいんだけどね。 まぁ、いいや。面白そうだし。やってあげるよ。あぁ、でも安心して。僕は行動を縛ることはない。ただ力を与えるだけ。後は好きにしたらいいさ。まぁ、僕の使途だってばれたらいらないちょっかいは出ると思うけど。それに負けない程度の力はあげるよ。まぁ、具体的に何になるかはやってみないと分からないけど」
これがファブリスの邪神と言われるゆえんだ。彼は力を与えるだけで行動を縛ることを一切しない。予測できないことの方が面白いからだ。そして、その性格もなにも考慮せずに力を与える。ただ、彼が目についたからという理由だけで。本人に悪気なんてない。ただ、見ていて面白くなればいいなと思う程度だ
「じゃあ、肉体を入れる器から作らないとね。あぁ、その分の力はキリエからももらうけどいいよね」
「あなたの力で十分じゃないですか。私よりも数十倍力あるんですから」
「これでも僕は邪神認定されるか微妙なところにいるからね。下手に力弱めたらほかの神から滅ぼされかねないんだよ。その点君は人の魂を刈るだけで。無駄に力は余ってるよね」
確かに私の世界では超人的な人間というのはいないので人の魂を刈るのにそこまで力は必要ないです。しかし、力が少なくなればなるほど私の体力の上限も減るわけですから結果お腹のもちも悪くなって・・・・死活問題になりかねないのですが。
「まぁ、信者になってくれるといった方に期待しましょうか」
三食きちんと食べられれば死活問題には繋がらないはず・・・・です。
「じゃあ、肉体は元の体をベースでいいよね」
そのまま手を向けただけで体を作り上げてしまった。肉体をこうも簡単に作り上げるとはわかっていたことですが出鱈目です。うちの最高神様でもできますかねこんなこと。それにしても・・・
「なんだか、少し違いません?」
雄二さんには見える。だが、体のパーツが引き締まっていたり。目がキリリとしていたり。少し美化されている。七割り増しくらいで。
「いや、使う力は同じだからね。あまり違いすぎちゃうと魂が定着しない恐れがあるけど。誤差範囲ならいいかなって」
珍しく気前のいいですね。
「じゃあ、魂を定着させてそのまま能力も付加させてあげるね」
雄二さんの新しい体が光り輝く。なんか、私の力がごそっと消えていく気がするんですけど。
「転移させる場所pは人目につかない場所だから安心して。何か困ったようなことがあれば僕の名前を呼ぶがいい。代償次第で聞いてあげなくもないかもよ」
「ちっ、いきなり転送させる気ですか?」
「その方が効率良いからね」
そのまま雄二さんの体が消える。一応別れの挨拶ともう一度くらい念を押してお供え物の剣をお願いしたかったのですが。まぁ、仕方ありません。そのうち様子見に行きましょう。今は早く戻って力の回復を図りましょうか。
「では、ファブリス様。用件は終わりましたので失礼しますね」
こんな場所に長居は無用です。
「君は・・・頼むだけ頼んで用がなかったら帰るとか良い性格してるよね・・・まぁ、そういうところがいいんだけど。まぁ、気が向いたらまた来なよ」
ずいぶんあっさり帰しますね。絶対一悶着あると思ったのですが。
私が、なぜファブリスがこうもあっさり帰したのか気づくのは数分後のことであった。
主人公が喋れなくした理由ですか?書きやすかったからです。






