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「え? ここ?」
初めて入るおはなしの部屋の入り口はとても小さかった。例えるなら茶室の入り口みたい。白い壁のひざくらいの高さに、大人が身を縮めたらなんとか通るくらいの大きさの正方形がくりぬかれている。
もっとたくさんの親子でひしめいているかと思いきや、中にいたのは小学生と五歳くらいの子どもが十人くらい。
「この時間はね、おうちの人と離れておはなしを聞ける子だけのおはなし会なの。さあさ、靴を脱いで奥に入って」
戸惑いながらも小さな入り口から先に通学鞄を入れる。それからスカートを手で押さえながら、にじり込むように中に入った。
室内の壁は木の色で、子どもが二十人も入ればいっぱいになってしまう広さだ。オレンジ色のライトが室内を暖かく照らす。
四つん這いになりながらなんとか全身を室内に入れる。顔を上げると中にいた子どもたちが全員真心を見ていた。
奥には子どもたちに囲まれるようにして座っている大学生くらいの若い男性もいた。彼もこちらを見ている。
ひぃ~、やっぱり場違い……!
子どもたちの視線に怯んでそのまま後退しようとしたとき、小さな女の子が真心の前に立った。
「な、なに?」
その女の子がブレザーの袖を引っ張る。
「お姉ちゃん、こっち」
「う、うん」
手を払いのけるのを躊躇してしまい、女の子に引っ張られるままに室内の奥に膝で歩いて進む。子どもたちはモーゼの十戒の海のように道を開ける。
「ここ」
「え、ここ?」
「それでは、よろしくお願いしまーす」
樋口さんの明るい声とともに、おはなし室の引き戸が閉まった。その声に会釈を返していた若い男性が、子どもたちを見回した。
「じゃあおはなし会を始めようか」
カーペット敷きの床にぺたんと正座した私の膝に、さっきの女の子が当然のように座る。
「えっ?……ちょっ……!」
「お姉ちゃん、しぃー」
「あ、うん。しぃー」
二人で人差し指を口の前に立てて「しぃー」と小声で言い合う。タイミングを見計らったように、その男の人は語り始めた。




