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冷たいコンクリートの壁。夕陽を反射するガラス窓。
ご無沙汰していた図書館は、変わらない姿でそこにあった。
自動ドアを通過すると、木のぬくもりを感じる内装と、背の高い本棚。たくさんの本が出迎えてくれた。
「お久しぶり、真心ちゃん」
図書館の貸出カウンターの中から事務服に身を包んだ司書のお姉さんが、人懐っこい笑顔で私の名前を呼んだ。私はぺこりと頭を下げて、カウンターに歩み寄る。
「お久しぶりです樋口さん」
「わー、すっかり女子高生だね。見違えたよ。お姉さんになっちゃって」
どう言葉を返そうかと口ごもっていると、樋口さんは構わずに言葉を続ける。
「真心ちゃんが中三の夏ぐらいからあんまり来なくなったでしょう。どうしてるかなーって皆で話してたんだよ。高校生になったらそれはそれで忙しいよね。でも久しぶりに会えて嬉しいわぁ。来てくれてありがとうね。真心ちゃんの好きそうなシリーズの本もたくさん入ってるから今日はゆっくり見ていってね」
「あはは」
その時、館内アナウンスが流れた。
『ご来館の皆さまにお知らせ致します。今日十六時からおはなしの部屋でおはなし会を始めます……』
「?」
聞き慣れないアナウンスに戸惑う。こんなの前はなかった。アナウンスを聞いて、親子や小学生がバラバラと児童室の一角にある小部屋に移動を始めたのが目に入った。
それを見て戸惑う様子の私に、樋口さんが欠けた情報を補うように言う。
「今年の春からね、おはなしのボランティアさんが入ってくれておはなし会を定期的にしているの。真心ちゃんがよく通ってくれている頃にもしていたんだけど、その時は職員でやっていたから不定期にしかできなくてね。今は毎週水曜日の十六時と土曜日の十五時にやっているのよ」
「そうなんですか」
「ねぇねぇ、ちょっと聴いていってみない?」
「え? いや、でも、おはなし会って、もっと小さな子ども向けなんじゃ……」
「そんなことないから。真心ちゃん、きっと楽しいと思うよ。それにきっと元気が出ると思う」
「え? え?」
樋口さんはカウンターから出てきて、腰の引けている私の背中を児童室の方へぐいっと押した。