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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
99/133

[99]

 それに――


(エマの着けてるグローブ……)


 さやかは、エマと自分の拳の噛みあった瞬間にその事に気が付いていた。

 エマが身に着けているグローブは、近接格闘用として指先や甲の部分に装甲の付けられた専用の物なのである。

 しかも、その際に見せた彼女の無駄の無い動きと隙の無い構え。


 間違いない。


 エマは中距離・遠距離攻撃を専門にするだけの戦術生体兵器などではない。

 国防陸軍最強と謳われ、近接格闘と近距離戦闘において無類の強さを発揮した篠塚夏彦の横にいたから目立たなかっただけで、エマの近接格闘の実力は、


(十分に一流……)


 相手に不足は無い、が――。



「くっ!」



 エマの攻撃を受け流しきれず、さやかは壁に叩きつけられた。

 やはり、強い。

 強すぎる。

 櫻子の顔が目に浮かび、さやかは思わず首を振る。


(『あの人は、暗にさやか姉にエマ姉を――』……か。そうね、そういう事なんでしょうね、きっと……)



「さやか先輩……手加減してくれるんですか?」


「そんなつもりは、無いけど……。投降してくれるなら考えてみてもいいかな」


「…………ふざけないで下さいっ!」



 叫ぶや否や、エマの拳がさやかに向けて殺到する。

 鋭さを増すエマの攻撃。

 だが、さやかは、関節の稼働域を最大値に取り――

 流れるような動きで、エマの腹部に一撃を叩き込んだ。


「!」


 思わぬ一撃だったのか、エマは、苦しげに顔を歪ませた。

 が、それでもすかさず退き、構えを崩さなかった。

 さやかは、畳みこむように攻撃を連続させる。

 防御する両の腕、肩、ふとももなどの抗刃抗弾防具(プロテクター)を付けていない部分を中心に拳のみならず、蹴りを連続して繰り出していく。

 エマは、攻撃の都度よくこれを防ぎ、時折、返す手で反撃してくる。

 だが、さやかは、神経反応速度を最大値に取り、なおも攻撃の手を緩めない。

 さやかの攻撃の速度はその度ごとに跳ね上がり、その鋭さを増していく。 


(私が『ケルベロス』と呼ばれる理由を教えてあげる――)  


 そこだっ!

 さやかの渾身の拳が、エマの右肩にめり込み、拳を引き戻した反動から繰り出した左の回し蹴りが、エマの右わき腹を強打した。

 エマの表情が凍りつき、体勢が大きく崩れた。


(よしっ!) 


 と、さやかが思った瞬間、エマの頬に微かな笑みが浮かんだ。

 だが、さやかに訝しむ間さえ与えず彼女は叫ぶ。


精霊女王タイタニアン・バースト!!」



 エマのその必殺技が至近距離から発射されたまさにその瞬間だった。


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