表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
91/133

[91]

『……夏彦くんは来ない?』


『そう』


『絶対に?』


『ええ。ほら、私の携帯端末見て。先任伍長が間違えて配布したの、名前の所が篠塚夏彦になっているでしょう? これだから、旧式の端末はイヤよね。普通なら本人と違うから、乗る時にキャンセルされる筈なのに……。ホント、陸軍は貧乏で――』



 うわーん。

 気が付いたら女の子が目の前で声を上げて泣いていたわ。


 その時、私もやっと気が付いた。


 目の前の女の子、夏音(かおん)ちゃんが、どれだけ夏彦に会うのを楽しみにしていたかって事に。

 そして、どれだけ彼の事を愛しているかって事に。

 さすがに当時の私も、自分がどれだけヒドい事をしたかに気が付いたわ。

 私は、慌てて夏音ちゃんを慰めた。

 とは言っても……まあ、さすがに夏彦は来ないと言ってしまった訳だから、まさかその内来るかもなんて言えないでしょう? それに、そもそも来ないのは、私が彼の分のチケット持っている時点で確定な訳で……。

 そう、だから、私は携帯端末で大阪の兵営に連絡を取って、兵営経由で夏彦と回線と開いてもらったの。当時の私は、まだ夏彦の連絡先を知らなかったから。

 で、夏音ちゃんに携帯端末を渡して……私と夏音ちゃんが、代わる代わる出て夏彦に訳を話したわ。夏彦の方も千葉の航空基地で輸送機から下ろされて途方に暮れていたらしくて。出て来た時あんまり嬉しそうな声だったから、もう、おかしくて、おかしくて、夏音ちゃんと二人で思わず笑っちゃったわ。

 で……そこで、その年の夏の休暇を私は夏音ちゃんの疎開先の親戚のお家で過ごさせてもらう事になった……」


「楽しかったよね。夏音さんとエマさん二人で浴衣を着て行った夏祭り」


「ええ。それに、近所の川で水遊びしたり……」


「ふふふ……エマさんたら、すごいカナヅチなんだもん。『夏音ちゃん、絶対に、絶対に手を離さないでね! 絶対よ!』ってすごい必死で――」


「もう……夏音ちゃんたら、ほのかの前で」



 懐かしそうに目を細めるエマに、当時を思い出したのか、やはり嬉しそうに、それでも幾分しんみりとした調子で微笑む夏音。そんな二人の姿にほのかもじんわりと胸が暖かくなった。

 それで――。

 とほのかは、目の前の二人の目を見つめてそっと言った。



「お二人は、友達になったんですね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=723477946&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ