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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
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[88]

「そうよ、夏彦は、同じ隊の仲のいい男子と間違えて、『カンチョー!』って言いながら、私のお尻に指を突き立てたのよ。

 ええ、夏彦がよ。

 そう。ウソみたいだけど、それが夏彦だったの。


 今から考えると意外だけど、当時の夏彦は、どこにでもいる普通の男の子だったのよ。


 え? その後、私がどうしたかって?

 決まってるでしょう……土下座する夏彦の前で大泣きしてしまったわ。

 隊のみんなが、それこそ宿舎のそこらじゅうから集まって来てしまうくらいにね。

 で――まあ、その日から、そんな感じで私の軍での生活が始まって……。

 それ以降は、特に面白い話題は無いわね。ほのかも空軍にいたから知ってると思うけど、陸軍も大して代わり映えしないと思うわ。



 訓練と実戦。


 いつも通りのマズイ食事と退屈な兵営生活。



 それでも、時間が経つにつれて実戦の比重が高くなっていったわ。

 最初こそ、支援や援護が中心の割と安全な部署だったけれど、どんどん最前線に出される機会が増えていった。

 まあ、だんだん余裕が無くなって来た、と言うだけの事かも知れないけれど、当時の私達には知る由も無かったことだから。

 え? 夏彦の事? 

 どうしようかしら……。

 夏音ちゃんには、メールで夏彦も色々話してたみたいだし……。

 まあ、あの夏が来るまでの数ヶ月間は、私の前では、叱られた子犬みたいにしょんぼりしてた、とだけ言っておこうかしら。他の女子達からも、すごく怒られていたみたいだし。

 ちょっと気の毒なくらいに。

 分かるでしょ?

 あれで、夏彦は、気にするタイプだから。

 私に悪いことした、って本当に気にしてたのよ。

 そんなに気にする事無いのに……とは、思ったけど私の方から言うのもね。

 で、そんなこんなであの夏が来た……。

 ところで、ほのかの所属部隊が駐屯していたのは、どの辺だったの?

 ああ、東京だったのね。と、言う事は、防空部隊かしら。

 ほのかの能力から考えれば、まさに適切な配置ね。

 ちなみに、私達は大阪だった。


 大阪市の郊外。


 そこに私達の兵営が仮設だけどあって、他の戦術生体兵器小隊と一緒に駐屯していたわ。

 所属する兵士達の出身地はまちまちで、人種や民族も色々だったわね。

 ちなみに、私のいた(エコー)小隊は、関東から北の出身者が多かったみたい。

 だからだと思うんだけど、夏前に休暇が出たわ。

 故郷に帰って来れるくらいの長さの休暇よ。まあ、たったの五日だったけど、戦術輸送機に便乗させてくれたから、移動には時間も掛からなかったし……。

 

 だから、決して短い休みではないわ。

 

 今から考えれば、破格と言ってもいいでしょうね。

 で、休暇当日――私は、先任伍長から戦術輸送機に乗せてもらえるチケットを貰って輸送機に乗り込んだ……。


 その輸送機が私の地元の千葉に行くのでは無く、夏彦の疎開先だった北海道行きとも知らずにね。


 ええ、そうよ。

 マイ姉……当時の先任伍長だったグエン・マイの事を私達は、そう呼んでたんだけど、マイ姉ったら、チケットを取り違えてたのよ。私と夏彦だけ間違えて逆に配布(シェア)しちゃったらしいのね。

 で、チケットを取り違えた私と夏彦は、互いの目的地へ行ってしまったというわけ。

 そして――」


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