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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
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[87]

「あの夏の前の年……ちょうどクリスマスの頃。

 その時、十歳だった私は、国防軍に志願した。

 大陸国がベトナムやインド、そして海を越えてフィリピンや日本に攻め込んで来たのがあの年の三月だったから、開戦して九カ月目くらいの頃だったわ。

 今から考えると、その頃の私は、十歳の子供なりに、世の中を、この国を守りたいって真剣に思っていたんでしょうね。同級生の子達もどんどん軍に志願していたし。

 それに、私の家族は、パパがすでにパシフィック・サーバントの職員として戦争に従軍していたし、ウェブファッション誌の読者モデルだったお姉ちゃんも軍の広報の仕事をやっていたから……きっと仲間はずれで寂しかった、って言うのもあったんでしょうね。ママが生きていれば状況も少しは変ったんでしょうけど……ママは、その少し前にガンで天国に行ってしまったわ。

 だから、私には、躊躇する理由が無かった。

 で、年が明けて春頃、私は戦術生体兵器になるための『脳改造外科手術』を受けて晴れて戦術生体兵器になった。


 そして、配属されたのが戦術生体兵器小隊(エコー)


 通称、(エコー)小隊。

 初めて、宿舎に入った時の事を昨日の事のように覚えているわ。

 入口に入って最初に会った人が、隊長の園田大尉だった。

 大尉は、私の目を見て言ったわ。



(エコー)小隊へようこそ、エマ・ウィンターズさん。私は、小隊長で大尉の園田あかり。みんなからは、大尉って階級で呼ばれてるわ。でね――』



って、言って大尉は、片方の目をつぶって内緒話でもするみたいに言ったわ。



『私は、みんなの事を下の名前で読んでるんだけど、これって本当は規則違反だから他の小隊の人達には内緒よ』



 でも、その時の私は、大尉の言葉以上に大尉が手に持ってるものに目が行っていた。

 だって、あまりにも軍隊の兵営に似つかわしくないものだったから。


 え、何かですって?


 ごめんなさい。勿体ぶるつもりは無かったんだけど……大尉は、七夕飾りに使うような細い折り紙の輪を繋げたものと、ハートや星の形に切り抜いた厚紙を持っていたの。

 大尉は、私の視線に気が付くと、クスリと笑ってさっきよりもさらに声を潜めて私の耳元で言ったわ。



『今日、あなたの歓迎会と小隊の子たちの誕生日会を一緒にやろうと思って、その準備をしてて……でね、これ先月、中隊長に見つかっちゃって大目玉だったから、これも内緒にしてくれると助かるんだけど……』



 そう言って大尉は、私の視線の高さに合わせて身をかがめると『お願いっ!』って手を合わせたの。

 そんな大尉の顔を見つめていたら、なんだか胸の奥が急に暖かいものでいっぱいになったような気がして――私は、この時、一瞬で大尉の事を好きになったわ。

 手術を受けるまでの研修期間でも、その後のリハビリの期間でもこんな人を軍で見た事がなかったし、私は、しゃべり方とか表情がこんなでしょ? みんなから、『お高く止まってる』とか『友達には、なりたくない』って言われて、学校でも一人でいる事が多くて、その当時の担任の先生も何となく私を避けてたから――大尉にそんな風に話してもらえて本当に嬉しかった。

 私は、大尉の言葉にすぐに頷いたわ。



『じゃあ、内緒よ。約束ね』


『はいっ』


『これからよろしくね――エマ』


『はい。よろしくお願いします……大尉』



 あの時の大尉のやさしい顔と声が今でも鮮明に記憶に残っているわ。

 やわらかな笑顔と包み込んでくれるような暖かな声で……まるで、ママが天国から帰って来

てくれたみたいだった。


 泣きそうになるぐらい本当に、本当に嬉しかった。

 

 でもね、その後が問題だったのよ。

 その後、出会ったのが……忘れもしないわ。


 夏彦よ。


 出会いは、最悪だった。

 夏彦ったら、初めて会った私に何したと思う?」



 恥ずかしそうにそう問い掛けるエマに、夏音(かおん)がクスクスと忍び笑いを漏らす。

 一方で


(夏彦先輩が?)


 ほのかは首を捻った。

 しばらくして、「降参です」と微笑むほのかにエマは、恥ずかしそうに話の続きを語り出し

た。



「こう、指をね、両手の人差し指同士を合わせて……夏音ちゃん、笑わないで。私だってすごく恥ずかしいのよ。

 で、立てた両手の人差し指以外は、こうやって組んで……。

 ね、もう分かるでしょ。

 ほのかは、兄弟がいるの? 

 だったら、私よりも詳しいかしら?」


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