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「空調が入っているとは言え、夜は冷えるわね」
「は、は……はにゅーん! ですね……」
「夏音さん、寒いの苦手だよ」
そう言って寝袋から出した顔を寄せ合う女性陣三人を部屋の隅に置いた電気ストーブのオレンジ色に輝く光が照らしていた。
エマの言う通りこの演習場は室内と言う事もあって空調が入っている筈なのだが、演習場の広過ぎるスペースのせいか一向に居心地が良くならず、むしろ、もうじき梅雨を迎えようかというこの時期にも関わらず夜が更けるに連れ寒さは増す一方で、致し方なくストーブを焚いて寝袋にくるまっている始末なのである。
「おやすみ」と言って寝袋に入ってからすでに三十分。
一メートルほど離れた所で寝袋にくるまっている夏彦とアレクセイはすでに眠ってしまったらしく規則正しい呼吸の音とアレクセイの物と思しき微かないびきが聞こえて来る。
げっそりと疲れ切っていた夏彦と寝付きのやたらといいアレクセイ。
この寒さにも関わらず二人は、ぐっすりと眠っている。
「「「………………」」」
しばし、そうして男子二人の寝息を聞きながら顔を突き合わせていた三人だったが、「おやすみ」「おやすみなさい」と小さな声で再び挨拶を交わすと、再び眠りに入るべくそっとおのおのの寝袋にその身を沈めた。
互いの呼吸の音を聞きながら、三人はひたすら眠気のやって来るのを待っていた。
「………………」
「………………」
「………………」
「「「………………」」」
が――
「あの……」
ほのかが、遠慮がちに囁いた。
「エマ先輩、夏音ちゃん。まだ、起きてますか?」
「ええ、大丈夫よ」
「はい、夏音さんもオーケーだよ」
「あの……一つ聞きたいんですけど……」
「いいわよ、なんでもどうぞ」
ほのかは、エマの言葉に嬉しそうに顔を輝かせながら、それでもしばし躊躇った後、声を顰めて切り出した。
「エマ先輩って夏彦先輩と付き合ってるんですよね?」
――がばっ!
寝袋にくるまったままの状態でエマと夏音が同時に跳ね起きた。
「ほのかっ!!」「ほのかさんっ!!」
そして二人は、控えめであるが断固とした声で同時に言い放った。
私は、夏彦の――。
夏音さんは、夏彦くんの――。
「お嫁さんよっ!!」「お嫁さんだよっ!!」




