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「さくらちゃん……あなた、まさか……」
さやかは、ゆっくりとさくらに近づいて足下のそれを拾い上げる。
手に取ったそれは、チョーカーのようにも見えるが、内側に付いているのは、あきらかに精密機械を織り込んだ工学繊維。
間違いない。
今、さやかの手の中にあるそれは、囚人輸送や要人の誘拐を行う際に対象となる人の口を、声を封じるための道具、『声帯制動帯』だった。
しかも――
(……光学迷彩!)
なるほど、道理で今まで気が付かなかった筈である。
さやかは、手の中の声帯制動帯を丁寧に折り畳んで近くのソファの上に置くと、目の前の少女へ再び視線を向けた。
「さくらちゃん……あなた本当は、話せるのね?」
さやかの問い掛けにさくらは、こっくりと頷いた。
「……ごめんなさい」
「うううん。そうじゃ無くて……これってさくらちゃんにとってすごく大事って言うか、切り札だよね? どうして、私に教えてくれる気になったの?」
「それは……ね……」
さくらは、伏し目がちにさやかの方を見つつ、もじもじと言いにくそうにしていたが、しばらくすると、そっと深呼吸をひとつしてから、言いにくそうに切り出した。
「朝、お風呂入ったでしょ……その時……隊長さんの背中に――」
と言ってさくらは、自身の背中をさやかに向けて見せてその左の上の方を指差した。
「小さなあざがあったでしょ? それに、さっきマンドリンで弾いてくれた曲……前にも聞いた事があって――」
「まさか、あなた…………」
「隊長さん――」
さくら、その瞳を涙でいっぱいにしながら、さやかを見つめて言った。
「隊長さんが、誉先生の妹なの?」




