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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
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[79]

 一粒、また一粒。


 一端流れ出した涙は、なかなか止まらなかった。

 頬を流れ落ちる涙を拭う事もせず、さやかは、真っ暗な景色を眺め続けていた。

 とうとう、気が付いてしまった。

 いや、とっくに気が付いていたのに無視していただけ。

 それを認めただけの事だった。


(私、生徒隊長失格だね……)


 さやかは、涙で濡れた頬を手の平で拭い、ふと、気がついて背後を見た。

 例の調理担当機械化召使クッカー・オート・サーバントが、さやか達が昼間散らかしたゲームやおかしを片付けている所だった。彼らは、基本的に二十四時間活動し続けるので、人が寝静まる夜間に清掃等の活動をしている事が多く、そもそもそのようにプログラムされているらしい。

 とは言え、特に人に見られたからと言って問題も無いだろうに、件のその機械化召使オート・サーバントは、おろおろと左右を見回し、おどおどと後ずさりして行く。

 さやかは、もう一度目を手の甲で拭うと、クスリと笑って言った。



「ごめんね。カッコ悪いとこ見られちゃったかな」



 そう言ってバツが悪そうに肩を竦めたさやかに機械化召使(オート・サーバント)は、慌ててその円筒形のボディを左右に振り、本体から伸びたアームいっぱいに握っていたおかしの袋やゲームをぼろぼろと床に落とした。



「あらあら」



 さやかが、窓際を離れて床の上へと手を伸ばす。

 ピッピ、ピッピと控えめではあるが、しきりに電子音を鳴らして遠慮しているらしい機械化召使(オート・サーバント)を宥めつつさやかは、手際よく床の上の物を拾い上げて行く。いくらもしない内に、床の上の物を一か所にまとめ終わった。そこで、それまで風呂場を掃除していたと思しきもう一体の機械化召使(オート・サーバント)が作業に加わり、まとめた物を分担してテキパキと収納して行く。



「へえ、こういう風に掃除とかしてくれてたんだね」



 さやかが、そう言って感心すると二体の機械化召使(オート・サーバント)は、照れ臭そうに小さく電子音を鳴らした。


(かわいい……)


 無機質な筈の機械化召使(オート・サーバント)のそんな仕草にほっこりと胸が暖かくなったさやかだったが、そこで床の上にまだ一つ残っている物がある事に気が付いた。

 何かと思ってソファ脇のそれに近付いて行くと



「マンドリン……」



 だった。

 さやかは、床の上から拾い上げると、そっと手に持ち、張られた弦に触れる。


 ポロン……


 マンドリン独特の澄んだ高い音がした。


(懐かしいな)


 ちょっと借りるね、と作業中の機械化召使(オート・サーバント)に声を掛けてから、さやかはマンドリンを手に再び窓際に座った。

 張られた八本の弦をそっと撫でると、懐かしさと嬉しさでなんだか無性にそれを奏でたくなった。

 もっとも


(私、一曲しか弾けないんだよね……)


 ポロン……。


 弦を指で弾いてさやかは、クスリと笑った。


(お姉ちゃんもそうだったよね。一曲しか弾けないのに高校でマンドリン同好会入ってたんだよね)


 でも


(お姉ちゃんの弾いてくれたあの曲、私大好きだったよ)


 お姉ちゃん……。

 眠っているであろう、さくらを気遣いながらさやかは、弦をそっと弾いて行く。

 窓の外を見つめながら、無心に一音一音を奏でていると、不意に人の気配に気が付いた。

 人の気配の方を見るとやはり案の定だった。



「ごめん! さくらちゃん!」


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