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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
74/133

[74]

「バカ兄ぃぃぃぃぃぃ! どこほっつき歩いていやがるのさぁぁぁ!!」


「げぇぇぇ。タ、タチアナ!」 


味噌汁(おつけ)が冷めちまうよ! このスカポンタン!!」



 ブラウザ上に映し出されたのは、紺のセーラー服の上に淡い黄色のエプロンをした端正な顔立ちのかわいらしい少女だった。手にしたお玉の動きに合わせて、頭の後ろでお下げにした銀色の髪が左右に揺れ、その灰色の瞳がアレクセイを射抜くようにして見つめている。

 タチアナと呼ばれた少女は、なおも憤懣やるかたない、といった調子でアレクセイに毒づいた。



「しかも、セルゲイに『男と男の約束だぜ。タチアナにうまい事言っといてくんな』ってどういう事よ! お兄ちゃんとセルゲイのやる事なんか、あたいは、すべてまるっとお見通しなんだからねっ! セルゲイはね、あたいのお人形さんなんだよっ!」


「おいおい、そいつぁマズイんじゃぁねぇのかい? 世間様の誤解を招くような――」


「誤解もへったくれもな――――い!」



 タチアナがお玉を振りながら叫ぶと、アレクセイは、おろおろと両手を振った。



「おーい、セルゲイ。姉ちゃんをなんとかしてくれぃ」



 すると画面の隅から、「兄ちゃん、ごめんよー」と蚊の鳴くような声がした。タチアナは、画面の下の方に向けて、「あたいもすぐ行くから、セーちゃん、先にご飯食べてな」と小さな声で言うと、改めて腕組みしてアレクセイを睨みつける。



「お兄ちゃんは、どーせ、また人さまの厄介事に首を突っ込んでるんじゃないのかい? え、どうなのさ?」


「いや、そらぁ、まあ……その――」


「ケンカ? 殴り込み? ストライキ?」


「いや、そぅじゃねえ……けど、その、なんでぇ――」


「不良警官、兵隊ヤクザ、マフィア、テロリストと来て――次は、なに?」


「おう、そら……そのぅ……なっ?」


「あのね、お兄ちゃん……」


 

 二人のやり取りを息を呑んで見つめる夏彦達を尻目にタチアナは、ため息混じりに首を振ると、エプロンをそっと外してアレクセイに向き直った。



「お兄ちゃんは、いつも、それで損してばっかりじゃないのさ。あたいは、悔しいんだよ。……お兄ちゃんの事なんか、誰も考えてくれないのに……。それなのに、お兄ちゃんは……いつだって……どんな時だって……相手がどんなヤツでも……そうさ、国家警察軍を辞めさせられた時だって――」


「タチアナよ」



 アレクセイが空中に浮かんだブラウザに写るタチアナの頬の辺りに手を当てて、寂しげに微笑んだ。



「おいらは、おめえや組のみんながそう言ってくれるだけで百人力よ。それで、十分なのさ。だから、泣くんじゃねぇ、タチアナ。別嬪さんが台無しだぜ」


「お兄ちゃん……」



 タチアナが小さくしゃくり上げ、その目を手の平で拭った。

 アレクセイは、ブラウザ越しにタチアナに微笑みかけ、彼女の目をまっすぐに見つめて言った。



「おいらは、じきに(けえ)るから、先に寝といてくんな。じゃあな。おやすみ、タチアナ、セルゲイ」


「早く帰って来てね……きっとだよ」


「おう。まかしときねぇ」



 そう力強く言い切ったアレクセイに、タチアナはふんわりと微笑むと、目をもう一度手の平で拭ってから夏彦達の方へと向き直った。



「兄がご迷惑をお掛けしています。国府田アレクセイの妹の国府田タチアナと申します」


「いいえ、迷惑だなんてとんでもない。私達が彼に助けてもらったのよ。むしろ、私達がアレクセイさんに迷惑を掛けている方よ」


「御家族にまで迷惑を掛けてしまって本当に申し訳ない」



 エマと夏彦がそう言って頭を下げるとタチアナは、「いいえ、そんな……」と恐縮して手を

左右に振る。

 頬を仄かに上気させ、照れ臭そうに笑う彼女に皆が顔を見合わせ微笑んだ。



 その後、少しだけ当たり障りのない世間話を交わした後、夏音とほのかが、簡単に自己紹介と礼を言って通信を終えた。


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