表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
68/133

[68]

 


 目の前で頭を下げる直子をエマ、ほのか、夏音、そしてアレクセイが呆気にとられたかのように見つめていた。

 直子は、頭を下げたまま、言葉を続けた。



「もちろん、タダでとは言わない。『さくら』の事は、特別高等警察が、いえ、私がなんとかする。それに誉さやかを斃すのに必要な装備、費用、人員もこちらで用意する。それに――必要なら、妹ちゃんに警護を付ける」



 だから――と、直子は、顔を上げ夏彦の目を一心に見つめて言った。



「お願いっ、篠塚くん!」


「………………」


「夏彦……?」



 そっと声を掛けて来たエマを目で制して、夏彦は、直子の事を無言で見つめ続けた。

 確かに、彼女の言う事が全て本当であれば、これほど心強い事は無い。

 だが――


(諜報機関が無条件で誰かを支援する事などあり得ない――)



「本田さん」


「なに?」 


「『さくら』をなんとかするって言うのは、具体的にはどういう事なんですか?」


「具体……的に?」


「ええ。特高は、保有するつもりがないんですよね。特高は、いったい誰の指示で動いているんですか? それに――」



 夏彦は、直子に向けて身を乗り出し声を顰めた。



「パシフィック・サーバントの経営には、国防海軍が一枚噛んでいると言われています。現に海軍卿の漆原直道大将が、頻繁に本社に出入りしているってうわさを聞きました。その辺りはどうなっているんですか? 当然、教えてもらえるんですよね?」


「…………」


「本田さん?」


「ごめんね、篠塚くん。そのへんの事は、私には話せない。でも――最善を尽くす事を約束する」



 ねっ、と直子は夏彦を上目づかいに見つめて目の前のテーブルに手を着いた。

 夏彦は、イスに座り直すと腕を組みその目の前のテーブルを見据えて考え込む。

 夏彦が苦悩しているのは直子のその『お願い』の内容なのだ。


 そしてそれは、主として『お願い』に付随する、特高からの夏彦達への援助の内容……とその為に払わされる対価についてなのである。

 特高からの『お願い』とは、そのポイントを要約するとこういう事なのだ。



『誉さやかを斃すその時点までは協力はするが、それ以降については保証の限りでは無い』



(さて、どうするか……)


 長い話し合いの末に提示された提案。

 確かに、夏彦達の目的の最大の障害となっている誉さやかを斃すためには、そう言った援助があればあるだけ助かるし、どれほど心強いか分からない。

 だが、一方で最終的な目的であるさくらの解放については、ここでは、クエスチョンマークなのである。「最善を尽くす」と直子が言ってくれたところで、それは、特別高等警察全体の意思であると言う事には全くならない。


 そう言った事を差引して考えると、花の蜜のように甘く魅力的なこの提案にも、美しい花がそうであるように、目に見えない棘がどこかに潜んでいるのではないか――という疑いをどうしても拭い去る事が出来ないのだ。


 最良の選択肢は、何か……。

 そんな苦悩のただ中にある夏彦を、皆は息を顰めるようにして見つめている。

 時間にして十分経ったか経たないかぐらいだったろう。

 夏彦は、ため息とともに苦しげに言った。



「少し時間を下さい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=723477946&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ