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………………。
直子の言葉に皆が凍りついた。
無論、それが出来ればいいにこした事はない。
だが、ついさっき戦い、それ相応のダメージを受け、相手のレベルを思い知ったばかりなのである。今、いきり立って相手の元へ向ったとしても、先の戦いの二の舞になる事は、目に見えている。
それに、そもそも今後の事について、特高から指図される筋合いなど無い筈だ。
反応を窺うようにじっと見つめて来る直子の瞳を見つめ返しながら、夏彦は慎重に話を切り出した。
「どうしてそう思ったんです? て、いうかそれは、特高が俺にそうしてほしい、って言っているように聞こえますが?」
ふふふ、と微笑んで直子は、首を振った。
「かなわないなぁ。さすがは、第三次大戦の英雄。うん、そう。私の話ってまさにそれなの」
「「本田さん!」」
思わず声を荒げてテーブルに手を突いたエマと夏音に対して、直子は真剣そのものの表情でまずは私の話を聞いて、と静かに言った。
「昨日の襲撃みたいに私達が直接やれれば、それが一番いいのは分かってるよ。でも、出来ないのよ。あの『化け物』がいるせいで」
「化け物?」
「ええ。さっきあなた達が戦ったやつ。直接戦ったのは、あなたと国府田くんだけど」
「特高もあいつと戦ったんですか?」
大きく頷いて直子は、肩を竦めてみせる。
「お陰で手持ちの第一級戦術生体兵器は全滅。今、全員入院中よ。それに昨日のあなた達との戦闘で通常戦力もほぼほぼ壊滅。だから、今日のあなた達の戦いを、私たちは指をくわえて見ているしかなかったってワケ」
「…………」
「あいつは、いってぇ何なんでぇ? 特高さんは、知ってるんじゃねぇのかい?」
「知りたい?」
「あぁん?」
不機嫌そうに眉をひそめるアレクセイに直子は、「冗談よ、ジョーダン!」と微笑んで手を振った。
夏彦は、腕を組んで考え込みつつ直子に尋ねた。
「あいつの正体もそうですが、あいつと一緒に来た連中は、何なんですか? やっぱりパシフィック・サーバントなんですか? 本田さんは、全部ご存じなんでしょう?」
「うーん……。篠塚くんの想像通りあの連中は、パシフィック・サーバントの特務部隊……なんだけど、でも、そこはそれほど重要じゃないんじゃないかな? 『あいつ』以外の連中が何人いても、篠塚くん達には、どうってことないでしょう? それより――肝心の『あいつ』なんだけど……」
皆の視線が自身に集中するのを確認して直子は、声を顰める。
アレクセイが、ちっ、と舌打ちするのが聞こえた。
「実は、機械化人間兵器なの」
「「「え?」」」
「そんな事って……。夏彦から聞いたんですけど、敵は戦術生体兵器なみの機動力で、しかも特殊能力も持っていたって……。だから、近距離戦闘もこなせる、特殊能力を持ったタイプの戦術生体兵器じゃないかと私思ったんです。戦時中に一度だけそういう人見た事があったし」
「うううん、違うの。もちろん、ウィンターズさんの言いたい事は分かるよ。私も最初に特高の戦術生体兵器達が戦った時その場にいたんだけど、やっぱり信じられなかったもん。『ウソー!』って。でも、本当にいるの。そんな化け物が、機械化人間兵器で」
「まさか――」
「お? 篠塚くんは、ピンと来た?」
夏彦? とその顔を覘き込むエマと夏音。
そして、先の二人同様不安そうな表情で、夏彦を見つめるほのか。
夏彦同様に何かに気が付いたらしいアレクセイが腕を組んで「マジか……」と呻いた。
夏彦は、渋い顔で直子に「それ」を告げる。
これが本当なら、面倒どころでは無い。
「Iクラス――『全身総機械化』!」




