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が――
「やっぱりクッションあると違うね」
「そりゃ、そうですよ。そのまま、座ったらお尻痛いに決まってるじゃないですか」
いくら、イスが無いからって……と呆れたように首を振るエマに夏音とほのかが顔を見合わせて笑った。
直子は、ゴミ箱の上にそのまま座ったものの、やはり尻が痛かったらしく、見兼ねたエマがリビングからクッションを持って来てゴミ箱の上に置いたのだ。
「さあ、じゃあ、張り切って行こうか。篠塚くんっ!」
「はあ。……なんか、こう、緊張感が一気に無くなりましたね」
「うん。て言うか、特高ってホント私のキャラじゃないんだよね。陰湿だし、規則、規則ってうるさいし、寮は狭いし、食堂のご飯はマズイし……」
「何しに来たんだよ、おめぇさんはよぉ……」
と、仏頂面を浮かべるアレクセイを直子は、まあまあと宥めて皆を見た。
「私の話は、『話』というより『お願い』と言う事になるかな。まず、確認だけど、篠塚くんたちが『さくら』に望む事って何? どうしてあげたいの?」
どう、か……――と呟き、夏彦が皆を振り返った。
夏彦の隣に座るアレクセイも、あごを撫でながら女性陣に「どうだぇ?」と答えを促すと、エマが、ほのかと夏音に向ってこっくりと頷いてから一同を代表して答えた。
「私は……さくらに普通の暮らしをさせてあげたいです。普通に学校に言って、部活とか勉強をして……さくら自身が考えて、自分の人生を決めて行けるような、そんな人として当たり前の事をさせてあげたいって私は思っています。もちろん、さくら自身が兵器の道を選ぶのならそれに反対するつもりはありません。でも……特高はやっぱり、さくらを取り返して能力の除去をするつもりなんですよね?」
「うーん……」
直子は、考え込みつつ夏音とほのか、そしてアレクセイと夏彦を見た。
「みんなも……えーと、今、話してくれたのが、エマ・ウィンターズさん……だよね? みんなもウィンターズさんと同じ意見と言う事でオーケーかな?」
直子の言葉に夏彦を筆頭にアレクセイも含め四人全員が大きく頷いた。
「うん。そうだよね。みんなにとってあの子は、友達なんだよね……。うん。さっきウィンターズさんに尋ねられた件は、半分イエスで半分ノーかなっ」
「半分?」
「そっ、半分。特高の今回の作戦目標ってあくまで、第三勢力に『さくら』を渡さない、ってとこまでで、その後どうするかって私は聞いてないの。でも、少なくとも能力の除去は、無いと思っていいと思うよ」
だって――と直子は、唇を指でなぞりつつエマをまっすぐに見つめる。
「もし、能力の除去が目的なら、取り返すなんて面倒な事しないで暗殺すればいいんだもん」
「…………」
「まあ、言葉悪かったけど、『さくら』をむざむざ手放す余裕なんて今の日本にはないよ、って事。まあ、そうは言っても堂々と保有するクソ度胸も無いけどね。まあ、そんな訳で……『さくら』の命については心配はいらないと思うんだ。それより、みんながこれからどうするかだね。篠塚くん――」
直子は、夏彦をまっすぐに見つめて言った。
「取り返すつもりなんでしょ? あの子の事」




