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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
56/133

[56]

 そう、バカみたいに強い。


 だが――

 夏彦は、目の前を横切った細長い物体を左手で握った。

 視界の隅で、夏音が小さくガッツポーズをするのが見えた。


(隠れてろ、って言ったのにな……。ありがとな、夏音(かおん)


 彼が手にしているのは、歴戦の友である電磁軍刀。

 夏彦は、手にした軍刀を腰の位置まで下ろしゆっくりと身構えた。

 チャキッ……という鯉口を切る音と共に現れる白銀の刀身。

 その乱れに乱れた刃紋の上をうっすらと紫電の光が覆っている。

 それは、かつて日本が技術大国と謳われ、世界から称賛されていた頃のあだ花。

 (こしら)えこそ量産された軍刀のそれではあるが、これは電磁軍刀の中の一級品中の一級品。


 『習志野造兵工廠製 シホ○○○一七番軍刀』


 わずか二振りしか作られなかった幻の電磁軍刀の一振り。

 それが夏彦の愛刀だ。

 夏彦は、正眼に構え、歩幅を狭く取る。

 狭い室内で長刀である軍刀の攻撃方法は限られる。

 だが、制約があるのは敵も一緒だった。



「はあああぁぁぁ!」



 夏彦の体が一瞬消えた。

 と、同時に繰り出された切っ先が僅かに敵の戦闘帽(ヘルメット)の脇を掠め、相手の体勢が崩れる。

 夏彦は、さらに二撃、三撃と踏み込んで行き――

 キンッ!

 軍刀の刃が敵の左小手の部分の抗刃抗弾防具(プロテクター)に食い込んでいた。


(俺がこの狭さ故に『突き』しか出来ないのと同様に、こいつもその俺の突きを避ける手段が、この狭さ故に限られる。そう――最後は、こうして受け止めるしかない!)


 刃を手の甲の抗刃抗弾防具(プロテクター)に食い込ませたまま、敵が僅かに下がった。


 動きにしてほんの数センチ。


 互いの力がせめぎ合う均衡状態の中での数センチ。

 それは、敵の動きに初めて生まれた躊躇い。

 ほんの僅かな、それこそ、針の先を通すような僅かな隙。

 だが――第一級戦術生体兵器にとっては十分過ぎるほどの隙だった。



「おおおぉぉぉぉ!」



 裂帛の気合と共に夏彦が全身の力を刃に込める。

 だが、敵も声こそ出さないが、新たに繰り出されたその動きには、身の毛もよだつ殺気が満ちていた。

 敵は、食い込んだ刃を受け流すべく左腕をその身に引き寄せ、反対の右腕で新たな技を発動すべくその身を奔らせる。


 流れるようなその動きには全く無駄がない。


 戦う為に生れて来た。

 そんな言葉がぴったりのまさに神技とでも言うべき戦技だった。

 夏彦の脳裏に悲鳴にも似た旋律が奔る。


 まさにその時――



「その首、おいらがもらったぁ!」



 開け放たれた玄関を潜り黒い影が躍り込んで来た。

 ――その声。

 ――その速さ。

 両の手に握られた柄の長いハンマーを振りかぶり、その影は身に纏った藍色の印半纏の裾を翻しながら絶叫した。



「うおおぉぉぉ、極限豪力(マキシムゴーリキー)!」


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