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そこでは、女子生徒も男子生徒同様の厳しい訓練と就学を義務付けられ、卒業後は各々の特性と専門能力を生かし、学校の経営母体である民間軍事会社パシフィック・サーバントの各部門で働くのだという。
汗に塗れ、泥だらけになって他の生徒達と切磋琢磨する女子生徒達の写真が印象的で、その他にも様々な女子生徒達の写真や体験談が豊富に掲載されていた。
さやかは、夢中になってその全てを読んだ。
一瞬にして魅了されてしまった。
そして決めた。
この世界に飛び込むことを。
この世界では、作り笑いも、愛想笑いも、品位を保つ必要も無い。
そこに必要なのは、剥き出しの自分。
さやか自身の能力。
もちろん、民間軍事会社と言う物を全面的に肯定できる訳ではない。
この学校に入れば、遠からぬ内に自分も人を傷つけたり、傷つけられたりと言った現実世界に直面する事になるだろう。それが、怖くないとか気にならないと言ったらウソになる。
でも、その事実を差し引いても、ガラス細工で作られた北葉女学院と言う名の上流社会ゴッコの中に自分の居場所を求める気にはなれなかった。
キレイ事だけを見つめて、うわべだけを取り繕うこの狭い世界に未練は無かった。
良い事も悪い事も、嬉しい事も悲しい事も、正しい事も不条理な事も、すべて自分自身で引き受け生きて行く。
さやかは、その日そう決心した。
そして――
「やりたい事があるの」
その数日後、そう切り出したさやかに育ての親である伯父と伯母は反対した。
品位や一族のメンツ云々ではない。
純粋に将来と体の事を心配してくれたのだ。
でも……今回だけは譲れない。
さやかは根気強く二人を説得し続けた。
そんなさやかを応援し続けてくれた唯一の存在が姉だった。
十一歳、歳の離れた姉。
さやかと同じように北葉女学院中等部に学び、卒業後は一貫して公立の高校、大学へと進学し小学校の教師になった姉。
さやかの先達者でもある心の拠り所だった。




