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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
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[50]


 本社オフィス三階の記録室。

 

 扉が背後で音も無く閉まり、さやかは目的地へと急ぐ。

 オフィスの中はしんと静まりかえり、廊下の窓からかすかに見える中央軍事学院の営庭にも人影はない。

 時折すれ違う機械化召使(オート・サーバント)がにぎやかな電子音を立てて挨拶してくれる。

 彼ら(彼女かもしれないが、見分けがつかない)を見るとどうしても中学校時代の事を思い出す。

 

 北葉女学院中等部。

 

 三年間の思い出の中には、いつも必ず機械化召使(オート・サーバント)がいた。

 

 機械に守られ、お守りをし続けられた三年間。

 それは、同時に『誉』の名前に振り回され続けた三年間でもあった。

 

 今でも鮮明に覚えている。

 遠慮がちな回りの態度と、それとは裏腹にその背後に透ける好奇と嫉妬の視線を。


「だって、『誉』さんだもんね」「彼女、体に障害があるから……」「全身装具でしょ、ビックリよね」「え、え、それってサイボーグってこと?」「ちょっと! 声が大きい!」


そしてとどめが


「高貴ある誉一門に名を連ねるあなたが、必ずしも他の生徒達と同じ学科をこなす必要はありませんし、同じ過ごし方をする必要もありません。あなたには、高貴ある一族として品位を保たねばならない責任があるのですから」


 そう言って入学と同時に学校から与えられたのが、お目付け役兼お守である三体の機械化召使(オート・サーバント)なのだった。

 両親を亡くした交通事故から四年後の事だった。

 同乗していたさやかが、両親だけでなく首から下の体の自由も失い、それを補うための機械装具を全身に埋設してから四年後の事でもあった。

 皆と同じように体育の授業を受けたい、普通の学校生活を送りたい――そんな思いで、歯を食いしばり泣きながら続けたリハビリは、中等部入学後に必ず見学のみでの参加を義務付けられた体育の授業とは比較にならないくらい辛いものだった。


 なのに――


 見学しか許されないさやか。

 品位を保ち、常に模範的な生徒でいなければいけないさやか。

 全ては、『誉』だから。

 高貴ある一族としての品位を保たなければいけない――という大人達の方便。

 それは、体にハンデを背負ったさやかが学校生活で直面するかもしれないトラブルで誉一門ともめたくないという学校側の一存なのだと、さやかには痛いほど分かっていた。

 悔しくて涙がこぼれた。

 けれど、どうする事も出来なかった。

 だから、我慢しようと思った。

 中等部の三年間は。

 

 でも、それ以上我慢するつもりはなかった。


 『誉』の名前に関係ない外の世界に行きたい――。



(お姉ちゃんも、そうだったんだよね? だから、私と一緒で北葉の高校には進まないで公立に行ったんだよね?)


 そんなもやもやした思いを胸に抱えていた中学一年のある日。さやかは、たまたま見つけた量子ネット上の中央軍事学院のホームページに釘づけになった。


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