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「園田……あかり……大尉……。『絶対防護』?」
「大尉の持っていた能力の事です」
「能力って、まさか……あなた達の上官って……」
「戦術生体兵器です」
「でも、戦術生体兵器の部隊を率いる隊長は、通常……」
「ええ、大人である通常の士官。でも、園田大尉は、軍に入った時点で二十歳を超えていたそうですよ。大尉は、大人になってから戦術生体兵器になるための手術を受けたんです」
「………………」
言葉を失うさやかに夏彦は、無理もないと嘆息した。夏彦も園田大尉に出会って初めてその話を聞いた時は、正気の沙汰ではないと驚嘆した物だ。
戦術生体兵器になるために必要な脳のリミッター解除手術である「脳改造外科手術」の成功率は、子供の方が大人より高いとは言っても、概ね七十から八十パーセント台。それでさえ、手術直前になって尻ごみする者が少なからず出ると言うのに。大人に対する手術成功率は、二十パーセントも無い筈である。
手術は、失敗すれば十中八、九死ぬと言われている。
一体何が、園田大尉をそこまで駆り立てたのか……今となっては永遠の謎だ。
夏彦の言葉を噛み締めるように何度か頷いて、さやかは悲しげに微笑んだ。
「篠塚くんやウィンターズさんが、さくらちゃんを守ろうとするのは、その隊長さんの事があったからっていう事なのね。軍機って、もしかして……」
「ええ。まあ、もちろんこれが全てでは、ないですけど」
内心苦笑する、否、内心でしか苦笑できない夏彦にさやかは、ふっ、と優しげなため息を一つ吐いてエマに向き直った。
「ウィンターズさんは、どうなのかな? 篠塚くんと同意見って事でいいの?」
「…………すいません、誉先輩……」
「うううん、気にしないで。あなたには、あなたの意見がある筈だから。園田大尉……。どんな人だったんだろう……。亡くなってからも、あなた達にここまでさせる人って」
そんな、ぽつりと呟かれたさやかの言葉に、エマの瞳がみるみるうちに曇り、その頬を涙が伝い始めた。
「本当に……本当に優しい、暖かい人でした。上官というよりも先生みたいで。いつも私達の傍にいてくれて、誰にでも分け隔てなく接してくれて……。今でも、夢に見るんです。大尉と一緒にいた頃の事を。それで、朝になって目が覚めてからいつも愕然とするんです。大尉は、もういないんだって……」
テーブルの上にぽたぽたと滴が落ちた。
夏彦がすかさずハンカチをエマに渡そうとズボンのポケットに手を伸ばす。が、誰かがそれより先にテーブルの縁でギュッと固く握られたエマの手にハンカチを握らせた。
(すまん、多賀城)
夏彦の無言の礼にほのかも無言で頷いて見せる。
真っ赤になった彼女の瞳にも、うっすらと涙が浮かんでいた。
ほのかは、指で目尻を拭い隣のさくらにも小声で呼び掛けた。さくらは、下を向き制服のキュロットスカートをきつく握り締めている。
「さくら、大丈夫か?」
ほのかにつられてさくらに視線を向けた夏彦は、息を呑んだ。




