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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
41/133

[41]


「これって、お守りですか?」


「ああ。妹にもらったんだ」


「へぇー。妹さん、いらっしゃるんですねー」



 と、ほのかは、『五円玉』と呼ばれるその硬貨の真ん中に開けられた穴に通された黄色いリボンを指でなでた。

 戦前以前、硬貨がまだ貨幣として流通していた時代から、弾よけのお守りとしてこの『五円玉』を兵士に送る習慣があったのは夏彦も知っているが、彼がエマと共に夏音(かおん)からこれを貰ったのは、戦後になってからだった。

 もっとも、夏音は夏彦が出征する際に何もくれなかった訳ではない。だが、それは夏音と二人の秘密として墓場まで持って行くつもりなのでここで皆に言う事はしない。


 夏音は、言ってほしいと思うだろうけれど。

 

 興味深げに覘き込むほのかとさくらによく見えるようにとエマは、その『五円玉』と呼ばれる丸い形をした小金色の金属板をテーブルの中央に指で推し進めた。しげしげと覘き込むさくらとほのかの姿にエマが満足げに夏彦に向けてウインクしてみせる。



「篠塚先輩、前から不思議だったんですけど、この『平成』って文字は何ですか? 他にも『昭和』とか色々あるじゃないですか。前にお父さんに、これなに? って聞いた事があるんですけど、お父さんも分からなくて」


「それは、『元号』と言って昔、西暦とは別に使用されていた日本固有の年号だ。ちなみにこの『平成十七年』って言うのはこの硬貨が生産された年の事だ。で、平成十七年は……西暦で何年だ? うーん、と……」


「……二○○五年かしら」


「はにゅん! このお金って、百年以上も前の物だったんですか!!」


「!」



 興奮気味に声をあげたほのかの脇で、さくらも無言ではあるが、仄かに顔を上気させ彼女なりに興奮しているらしい。夏彦は、身を乗り出すようにして見つめていたさくらの手を取ると、そっと五円玉を手のひらに載せてやった。



「!」


「どうだ、さくら。図柄もすごく緻密だろう。これを昔、人が機械で作ってたらしいんだ」


「…………!!」



 さくらの脇からほのかも一緒に覘き込み所々指差しては、何事かさくらに囁き、さくらもそれに頷いている。

 どうということもない平凡な趣味でも、時には役に立つ物だ。

 夏彦が、そんな思いを込めて隣のエマを見つめるとエマもまた夏彦を見つめ返してにっこりと微笑んだ。

 そして、



「そろそろ食事にしましょう。料理が冷めてしまうわ」



 エマの言葉にほのか、そしてさくらが照れ臭そうに笑った。そこで、『五円玉』をさくらに預けて、改めて「いただきます」と四人は小さく手を合わせた。


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