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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
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[28]

 コーガンの指が別の画像を空中に投影する。そこに浮かび上がったのは、一人の男子学生のバストアップ画像。さやかの脳裏にエマの顔が浮かんだ。



「『音速斬撃(ソニック・ブレイド)』――篠塚夏彦。君の学校、否、パシフィック・サーバントが誇る最強の戦術生体兵器だ」


「篠塚……夏彦…………か」



 コーガンが説明を始めて以降、目をつぶってその話を聞いていた漆原がぽつりと呟いた。



「懐かしい名前だ……。復員後、関東の学校に進学したと風の便りに聞いていたが、まさか、君らの学校の生徒だったとはね」


「閣下は、彼と面識が?」



 眼鏡を拭う手を止め、身を乗り出したマクドウェルに漆原は、しばし宙を見据えた後、寂しげに微笑んだ。



「向うは、覚えちゃおるまいよ。しかし……そうか、元気でいてくれたか…………」



 漆原は、そう言うと「どうぞ」とばかりに手のひらで目の前の二人に話の続きを促し、再び目を閉じた。

 小さく肩を竦めるコーガンにマクドウェルが頷いて先を促す。 



「尤も、彼が『さくら』を連れ去った動機は今のところ不明。当初は、その時の状況から彼女を連れて出頭する旨の連絡が来るかもしれないと期待していたが……今のところ連絡は一切ない。

 彼は、戦時中に『さくら』を運用している部隊に所属していた事があり、彼女を使用した作戦にも関わっていた。だからこそ、これほど重大な護送任務であるにも関わらず彼を今回の護衛の選考から外したんだ。もし、彼が彼女に何か含む所があったらと懸念した訳だが……もし、このまま状況が変化しなければ、残念ながらその懸念通りだったと言う事になる。

 まさか選考から外した筈の彼が偶然あそこを通るとはね……。まあ、何にせよ、最悪の状況を考えておく必要があるのは間違いない。と言うのもだ――」



 と、彼は篠塚夏彦の画像の横にもう一つ画像を空中投影させる。

 この場で、さやかが最も見たくなかった人物の画像。


(篠塚くんの名前が出たから、覚悟はしてたけど…………でも……)


 制服のキュロットスカートをギュッと握りしめ、さやかは二人の画像を見つめた。

 出会ったばかりの友人と、その友人がこの世で一番大切にしている相棒を。



「篠塚夏彦には、強力な相棒がいる。それが、彼女、エマ・ウィンターズ。

精霊女王タイタニアン・バースト』の通り名を持ち、篠塚夏彦と共に君の学校の双璧を成す極めて強力な戦術生体兵器だ。

 この二人の関係は、戦争の終わった今でも変わらないらしくてね。

 人事部の記録を読んだんだが、彼は戦後復学した中学校のある北海道から上京するに当たって迷わず彼女のいるこの学校を選択している。さらに入学後二年半以上経過した今でも校内では、授業中、休み時間に関わらず二人は必ず一緒に居るそうだ。男子生徒の一部からは、彼が傍にいつもいるので彼女にちょっかいが出せずかなり恨まれているらしい。

 尤も、彼にケンカを売る命知らずは一人もいないみたいだがね。

 まあ、ともかくだ、この二人は我々の誇る最強のペアであり、今回の事案における最大の障壁になる可能性が現状から見て極めて高い。そして、誉君、ここまで言えばもう分かるだろう。

 この任務において、もし、この篠塚夏彦と戦う必要が生じた場合、それは自動的に彼の相棒であるエマ・ウィンターズとも戦う必要が生じるだろうと言う事だ。尋常な戦術生体兵器や機械化人間兵器(メカニカル)では、とても彼らには敵わない。

 だから、僕らは君を呼んだんだよ、誉さやか君」

 

 

 否、と言葉を切り、コーガンはマクドウェルの方を再び見る。

 マクドウェルは、まっすぐにさやかを見つめ、無言で小さく頷いた。



「――――最強の機械化人間兵器(メカニカル)『ケルベロス』である君をね」


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