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バンのルーフハッチから不安そうに顔を覘かせる一年生の少女は、確かに夏彦とエマを含めてもあの学校に四人しかいない戦力として使用可能な第一級戦術生体兵器の一人ではあるが、こういった仕事を積極的に引き受けるタイプではなかった筈だ。
現にその表情に浮かぶ不安と緊張は、彼女が大戦末期に手術を受けた、いわゆる実戦経験の乏しい戦術生体兵器であった事を裏付けている。
それに、だ。
護衛に付けるのは、第一級戦術生体兵器で無ければいけないと言うきまりはない。
むしろ、夏彦達第一級戦術生体兵器に振られる仕事はそれだけ重要度の高い特殊なものでそれ以外の要人警護や一般企業の貨物輸送、戦闘地域での警備任務といった案件は、第二級、第三級戦術生体兵器や機械化人間兵器である生徒達に積極的に振られている。
第一級戦術生体兵器を護衛に付けねばならない程、重要な輸送物資であるにも関わらず、何故実戦経験が乏しいと思われる彼女へ話を振ったのだろう?
第一級戦術生体兵器でありさえすればよかったのだろうか?
何か起きた時にこうなるのは、予測できただろうに……。
まあ、どちらにしても、この状況で肝心の戦術生体兵器があの状態ではまずいだろう。
夏彦は、今いるトラックの位置と護送車列、そして襲撃者の位置をもう一度確認する。
やはり、こちらの戦力が夏彦一人と言うのが条件として厳しい所だ。
(せめて、もう一人……戦術生体兵器か機械化人間兵器のどちらかが居れば形になるんだがな……)
と――頬に吹き付けて来る風が勢いを増した。
パシフィック・サーバント側の反撃をかわす為に襲撃者の四輪駆動車が、このトラックを楯代わりにして付かず離れず付いてくるのを運転手が引き離そうとしているらしい。
このままでは襲撃の巻き添えで大規模な事故が起きるだろう。
急がなければまずい。
いっそ、一か八か……。
「そいつは、やめなすった方が賢明だ」
夏彦が声のした方へ振り向くと、荷台の大型除染機械に寄りかかるようにして一人の少年が立っていた。




