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その時、後方のトレーラー達がモーゼの十戒よろしく左右の車線に二つに分かれ、空いた真ん中の車線を真っ白い車体に青い横線を引いた見慣れた四輪駆動車の車列が猛烈な勢いで滑るように飛び出して来た。
民間軍事会社パシフィック・サーバント。
夏彦の在籍する中央軍事学院の経営母体。
その世界第三位の規模を誇る民間軍事会社の護送車列が凄まじいスピードで二人のバイクの脇を通過して行く。
速度は、二百キロ以上は確実に出ている筈だ。
呆気にとられる二人を尻目に車列は、一台のバンを守るようにしてあっという間に道路の向うへと消えて行く。
そして、その後ろから――――
漆黒の四輪駆動車と装甲バン数台がパシフィック・サーバントの車列を追うようにして、夏彦達を追い越して行った。やがて、いくらもしない内に車列がいる前方の方からサイレンの音が聞こえ、青いランプの光が明滅し始めた。
パシフィック・サーバントの護送車列は、夏彦の貴重な仕事先であり、その車列がとる行動の手順も意味も夏彦は熟知している。
激しく明滅する青い光と響き渡るサイレンの音。
その意味する所はただ一つ――――『非常事態発生』
護送車列は、襲撃を受けている。
それも、装甲バンのような、かなり本格的な装備を持つ敵に。
相手が強盗程度の筈がない。
夏彦は、傍らのカバンから軍刀帯を取り出すと腰に装着し、足下に転がった雑嚢から取り出した音響手榴弾をポケットにねじ込んだ。その傍らでは、夏彦の様子に気付いた夏音が、すかさずハンドルのボタンを押すとバイク側面の収納が開いて、バシュ、という音と同時に電磁軍刀が夏彦の右手の位置に勢いよく飛び出して来た。
最後にレッグホルスターの拳銃を確認して夏彦は、夏音に頷いてみせる。
「夏彦くん!」
「夏音、次のインターで高速を下りろ」
「夏彦くんは?」
「放っては置けないから、取り敢えず車列を援護する。護送用の車は、戦術デ―タシステムが常にモニタリングしていて、少しでも異常を感知すれば、理由の如何に関わらず必ず応援が来る。とにかく、それまでなんとかする」
「分かった。気を付けてね。愛してるよ、夏彦くんっ!!」
夏音の声を背に夏彦は、勢いよく跳躍した。




