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夏彦は、さやかの攻撃を横薙ぎの一閃で振り払うと彼女が思わず目を見張るほどの跳躍で距離を取る。
そして、
「…………!」
と、身構えるさやかに対してゆっくりと顔を上げた。
「結論が出た?」
「ええ」
相変わらずの澄んだ瞳で見つめてくるさやかに対して、夏彦は口元にこびり付いた血を拭い取るとゆっくりと正眼に構えた。
「俺が戦う理由……生きていく目的が分かりました。いや、再確認できました。さやか先輩」
「なあに?」
「まさか、このために俺と――?」
「さあね……私は、『さくら』ちゃん奪還を目指す夏彦やエマの敵だから――」
――少なくとも今この瞬間は。
さやかは、そう言ってクスリと笑った。
「それに、いい? 私を斃さないとさくらちゃんは返って来ないんだよ、夏彦」
「ええ、分かりました……」
夏彦は、目を閉じると大きく息を吸い込んだ。
この次の攻撃が最後の一撃になるだろう。
体力に余力は無く、体に負ったダメージも大きい。
持てる力の全てを注ぎ、
自身の持てる全てを賭けて――
この技を放つ。
「全力で行きます、さやか先輩」
「うん。私も全力で相手するよ、夏彦」
夏彦は、ゆっくりと電磁軍刀を構え直し相手を見つめた。
敵意、
恐怖、
畏れ、
そう言った戦いに本来付き物であるはずの感情は一切無い。
だが、何も無いわけではない。
そこにあるのは、相手を斃すというただそれだけの物とは一線を画したもの。
静かな闘志と相手であるさやかに対する畏敬の念。
そして、密かな確信だった。
今なら、
今の自分になら、
出来る。
(……大尉、見ていて下さい)
夏彦は、勢いよく一歩を踏み出した。
――音速斬撃!!




