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「何のために……」
「そう」
そう頷くと、さやかは再びゆっくりと身構えた。
「今の夏彦にとって大事なのは、人がどうとかじゃなくて夏彦自身がどう思うのか、夏彦自身が何のために戦いたいのか、が問題なんだと思うよ。きっと……」
だから、私の事は――
「その刀で聞いて」
さやかは、そう言うと同時に再び攻撃を繰り出した。
ふらつく体を床から引き剥がすように起こし、夏彦は何とか防御の態勢を取ろうとする。
そこへ、さらに勢いを増すさやかの攻撃が夏彦を襲う。
何とか、反撃の糸口を探ろうと夏彦は懸命に刀を振るった。
だが、
(ちくしょう……)
視界が定まらず、体に力が入らない。
まるで、吸い取られるたかのように体力を消耗していた。
今の夏彦には、防御すらままならなかった。
繰り出されたさやかの拳が次々と夏彦の体をえぐった。
吹き荒ぶ苦痛の中で夏彦はさやかの言葉を反芻した。
――俺は、何のために戦うのか?
『さくら』を取り返すため。
もちろんそれが一番だ。
――では、何のために『さくら』を取り返すのか?
『さくら』の自由を取り戻すためだ。
――取り戻してどうしたいのか?
…………。
取り戻して、どうしたいのか……。
いや、俺は、俺とエマ、そして『さくら』を救ってくれた園田大尉の遺志を、その想いを継ぎたいと思った。
――大尉の遺志を継いでどうしたいのか?
それは――
「がはっ!」
ひと際強力な一撃が夏彦の顎を直撃し、夏彦は床の上を転がった。
一回転、二回転。
景色が回り、視界が真っ白になる。
だが、その時声が聞こえた。




