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「何のために……?」
「はい。さやか先輩の話を聞いていると、俺と闘う理由がイマイチよく分かりません。一体、どうしたいんですか? 何がしたいんですか?」
「…………私の目的は、本当はとても単純だよ」
――と、
「!」
夏彦は、身を翻し、突然襲い掛かって来たさやかの拳を間一髪で交わした。
それでも、なお二撃、三撃とさやかの攻撃の手は緩まない。
執拗に繰り出される拳。
時折、刺すように襲ってくる蹴り。
夏彦も避けきれない。
――ついに蹴りが、そのみぞおちに入った。
「ぐっ!」
「まだよっ!」
ひざを着いた夏彦が視線を上げるとそこには、さやかの拳があった。
鈍い音がして、目の前が真っ赤になった。
視界が遮られ、世界が回転する。
そして、次の瞬間――
全身に鈍い衝撃が奔った。
(くそ……)
気が付くと夏彦は、床に倒れていた。
倒れた瞬間の事は、体が床に叩き付けられた瞬間のその衝撃以外何も覚えていない。
いや、それとて体が覚えていたと言う類の物だ。
酩酊したようにふらつく視界の先には、青い空が広がっている。
視界の四隅が赤く染まり、眼球にも一部出血があることが分かった。
やはり、体力が着いていかない。
正直、目の前の少女の体力がここまで無尽蔵とは思わなかった。
機械化人間兵器が戦術生体兵器に対して唯一持っているアドバンテージが持久力。
その事は、十分にわきまえているつもりだった。
だが、さやかはただの機械化人間兵器ではない。
Iクラスの機械化人間兵器。
全身総機械化なのだ。
夏彦は、気力を奮い起こし立ち上がろうとする。
だが、全身がふらつき力が入らない。
視界が狭まり、意識が遠くなる。
荒い息を吐く夏彦にさやかは言った。
夏彦――
「あなたの方こそ何のために闘っているの?」




