[124]
「どうして……?」
「ええ。もし、それを俺たちに告げていれば――」
あなたは、より有利に話を進められていたんじゃないですか?
「……そうね」
さやかも、構えを夏彦の変化に合わせてゆっくりと変え、その剣筋を読むかのようにゆっくりと夏彦の利き手である右手と逆の位置へ、左へと歩みを進める。
互いに視線は外さない。
静かな闘志が激しく火花を散らしていた。
「別に……。隠していた訳じゃないけど……」
「言う必要もない、と?」
さやかは、半歩前に歩を進め、対する夏彦が、構えを下段から下段脇構えに変える。
睨み合ったまま、さやかは、ぽつりとさり気ない感じで言った。
「卑怯かな……って思ったの。もし、私が逆の立場でお姉ちゃんの事を出されたら、って思ったから」
「だから――」
「ええ――そう!」
さやかが、前に出た。
走り出したその瞬間に最高速へ達するさやかの突進。
夏彦は下段の構えからすかさず切り上げる。
きらめく刃が脇腹へとまっすぐに吸い込まれそうになる、正にその刹那だった。
刀身へ向けて振り下ろされたさやかの腕の抗刃抗弾防具が、砕けて飛び散り、刃の動きを制したさやかが、次の攻撃に移ろうと躍動する。
唸りを上げ、迫りくるさやかの拳。
だが、
今度は、夏彦の方が早かった。
軍刀を手放した夏彦が目の前に迫っていた彼女の体へ神速の拳を叩き込む。
抗刃抗弾防具や防弾装甲の入ったタクティカルベストで守られているとは言ってもその衝撃は、ダイレクトにその体に伝わる。
特に夏彦の拳なら、それはより顕著だ。
「ぐっ!」
耐え切れず体を折って防御の態勢に入ったさやかに、夏彦がなおも畳みかけるように拳を叩き込む。
さやかは、時折、腹や肩に夏彦の拳を受けつつ防御に徹していた。
(蹴りと投げを含めたコンビネーションが出来れば、格闘でも蹴りが付けられるかもしれないが……)
最後の拳を叩き込むその瞬間、さやかと目が合った。
(来る!)




