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上がった手が振り下ろされると同時に鈴木中佐の声が響いた。
二人は、互いに見つめ合いながらゆっくりと戦闘態勢を取る。
国防色一色の装備と手と足の甲を守る抗刃抗弾防具。
戦闘態勢に入り身構えた夏彦の体を覆うそれらの装備が、夏彦の体の動きに合わせて微かな音を立て、腰のあたりに引き寄せた電磁軍刀がチャカと静かに鳴った。
漆黒の近接戦闘装備に身を包んださやかも戦闘態勢を取り、静かに夏彦の瞳を見つめ続けている。
夏彦は、左手の親指に力を込め、鯉口を切る。
さやかの構えが微かに動く。
たぎる気迫とみなぎる闘志。
二人の気力が高まって行く。
相手に向け針の先のように狭まって行く視界。
そして――次の瞬間、
夏彦は、抜刀と同時に、
さやかは、一足飛びに飛び出した。
速さは、互いに人智を超えた正に『神速』。
その神速同士が音を立てて噛み合った。
キンッ! と夏彦の軍刀の刃が鳴り、
ガチッ! と近接戦闘用のさやかのグローブが激しく戦慄き、
二人は、さらに一撃を探りつつも、一端離れて距離を取る。
二人は、再びにらみ合った。
夏彦の肩が激しく上下し、さやかもまたその瞳をキラキラさせつつ、しきりに顔を手の甲で拭っている。
やはり――
(さすがは、全身総機械化……)
その動きには一部の無駄もなく、その拳は正確そのものだった。
なら――
と、夏彦は、さやかを斜に睨みつつ息つく間もなく一気に躍動する。
払い、
突き、
薙ぎ、
切り下げる!
連続攻撃に耐え切れずさやかが、わずかに下がった。
(ここで――音速斬撃を……)
が、
――やはり撃てない!
慌てて、防御の態勢に移ろうとする夏彦。
だが、
(ごめんね、エマ)
その顔面にさやかの拳がめり込んだ。




