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ソニック・ブレイド  作者: 生田英作
110/133

[110]


 完全武装の二個小隊とほぼ一列になりつつ、そのそびえ立つような外壁に沿って、国防軍の国防色(オリーブドラブ)一色の装備に身を包んだ夏彦とほのか、そして特別高等警察から借りた黒一色の装備に身を包んだアレクセイの順でパシフィック・サーバント本社内角防衛線内部へと侵入して行く。


 侵入したのは、最も警戒の薄いと思われる実験棟と呼ばれるエリア。

 

 常駐する警備の兵士の数が最も少ない開発部門の使用するオフィス区画だ。

 事前に調査していた本田直子の話では、区画の外に配置されている兵士の数こそ他の場所と対して変わらないものの、区画内部に配置されている兵士は、ほとんどいない筈だという。

 とは言っても相手は、パシフィック・サーバント。例え、散発的であれ戦闘は避けられまいと夏彦は内心覚悟していた。

 だから、ほのかに、彼女の能力である『電波輻射(ノイズメーカー)』を発動してもらい敵の通信と探知を防ぎつつ、一同は慎重に建物の内部へと進んで来たのである。

 だが――



「ここもかぇ?」



 実験棟西端、本社棟に続く回廊の前に設けられた兵士待機所の分厚い防弾扉をこじ開けたアレクセイがあきれたような声をあげた。


 防犯カメラのモニターが壁一面に並んだ四畳半ほどの部屋は、もぬけの空。簡易デスクの上に置かれたマグカップをそっと手に持つとほのかに温もりを感じる。

 少なくとも、少し前までは、誰かしらいたようではある。

 夏彦は、兵士待機所の外で待機している筈の特別高等警察特戦隊の指揮官に無線で目の前の状況を伝える。

 指揮官は、夏彦からの通信にしばし考え込んだ後、今度は彼らが前に出て、夏彦たちの前進を援護する旨を夏彦に伝えた。彼らも、目の前の意外な状況に若干戸惑っているらしい。


 まあ、無理もないだろうと夏彦も思う。


 というのも、ここだけでなく、ここに来る途中に通った他の場所と同じ規模の兵力が配置されている筈の場所でさえも警備の兵士を全く見かけなかったからだ。



「……どうなってやがるんでぇ?」



 首を捻るアレクセイに夏彦も肩を竦めて賛意を示す。

 それにしても――と夏彦は、アレクセイに待機室から出るよう手振りで示しつつ思った。


(まさか、特別高等警察が本当にここまで協力してくれるとはな)


 夏彦達の援護として本田直子が用意してくれた特別高等警察特戦隊の規模はおよそ三個小隊百人弱。二個小隊が直接夏彦達の援護を行い、もう一つの小隊が別の場所へ牽制のための攻撃を行うことになっており、それにプラスして通信や衛生といった攻撃部隊全体を支援するための支援小隊が少し離れた場所で待機している。

 これらの連中は、パシフィック・サーバントや夏彦たちとの戦いで消耗してしまった手元の兵力の残りとそれを補うため日本全国から呼び寄せた連中の混成部隊なのだそうだ。



 そして、このお膳立てをすべてしてくれたのが他ならない本田直子だった。


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