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そして、皆で手分けして連絡と情報の収集を行い悶々としながら待つ事数時間。
と、夏彦とほのかの持つ携帯端末に、学校からの緊急集合令が入電した。
(やはり、エマの向った先は――)
事態は最初に夏彦達が胸に抱いた懸念通りだった。
(――すぐにでも、パシフィック・サーバント本社へ向うべきか? だが、あそこは要塞と言っていいぐらい防御が硬い……どうすれば…………)
迷い始めた夏彦の額には、汗が滲み始めていた。
そんな中でも時間は、刻一刻と過ぎて行く。
そして、「もう、待てねぇ!」――アレクセイが膝を打ったその時だった。
詳報は、意外なところから入って来た。
それが、今エマの横たわっているこの市内の救急病院からだったのだ。
(エマ……俺のせいで……)
夏彦は、ベッドへ近寄り夏音やほのかの背後からエマの顔を見つめた。
エマは、静かに眠っている。
そこにいるのは、いつも通りのエマだった。
だが――。
(……すまない、エマ)
夏彦の胸の内に募る後悔は、増すばかりだった。
せめて、自分が『音速斬撃』を撃つ事さえ出来ていれば――エマがここまで思い詰める事は、無かっただろう。
(エマを追い詰めたのは、俺だ……)
その時、病室の入り口が開き、誰かが部屋に入って来た。
「三枝先生!」
それに、特別高等警察の本田直子警部補。
茫然と佇む一同の顔を順番に見回してグレーのスーツ姿の三枝医師は、最初に声を上げた夏音へ寂しげに微笑んだ。
「大変な事になっているようだね」
「先生どうして?」
「君達の部屋が何者かに襲撃されたらしい、と国家警察軍経由で市役所へ連絡があったんだ。
で、一昨日、私は君たちに会うべくあの部屋に行ったんだが、もぬけの空でね。しかし――」
と、三枝医師は、一端言葉を切り、ベットのエマをチラリと見た。そして、より真剣な表情で夏彦を見つめて言った。
「君達の部屋の状態は、尋常じゃなかったよ。まるで戦場みたいだった。無事だと事前に聞いていなければ、生存しているとは到底思えない程にね」
「ええ。相手があまり良く無かったもの――」
「夏彦くん」
夏彦の言葉を遮るように三枝医師は、夏彦の両の肩を掴んだ。
「私は、君達が本当に生きているか、無事に逃げられたか……ここに来るまで、その顔を見るまで不安だった。不安で、不安で、生きた心地がしなかった。夏彦くん――」
三枝医師は、食い入るように夏彦の目を見つめて言った。
「すべてを私に話してくれないか?」




