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前編

 雲ひとつない星空だった。

 天上には輝く粒子と一際大きな宝石。彼らは散りばめられた空から淡い光で草原を照らす。

 広場の草は短く刈られ、手入れが行き届いている。

 そこへ緩やかな風が表面を撫でる様に吹き抜けて、さやさやと涼しげな音を奏でていた。

 広場は林と中の林道を挟んで区画が四つ。

 その敷地内には木材を組んだ小さな小屋と、まばらに張られた色鮮やかなテントがあり、周囲を広葉樹が取り囲む。

 キャンプ場だ。

 二又の川と車道すら通っていない背後の山々が周囲の街との間に遮っていて、唯一のアクセスは川に架かった橋のみ。そのおかげで都会にあるとは思えないほどに静かだった。

 その一角。一軒の休憩所で、男女が立ち話をしていた。

 一人は大柄な体躯の男。

 白いシャツの彼は一見すると三十代といった所。目元に刻まれた皺が彼をさらに十歳は年上に見せるが、その瞳には若者らしい活力がまだあった。

 隣に立つのは男よりも一回り小さな少女。

 動きやすそうなキュロットスカートを穿き、無邪気な笑顔で男に相槌を打っていた。

 丸太屋根の下には蛍光灯はなく、二人は近くの真っ赤な自販機と月明かりを光源に、飲み物片手に談笑する。

「まさか、またこんな風に話せるなんて思わなかったなあ。ねっ伸行ノブユキくん」

「そう、だな……」

 少女に伸行と呼ばれた男はそう呟いて吐息を漏らした。

「高校卒業したら温乃川ユノカワも、みんなも学校バラバラだったし」

 伸行が目を閉じてまぶたの裏に浮かべたのは卒業式と入学式。誰一人知らない新しい社会は想像以上につらくて寂しい場所だった、と過去を振り返った。

 ……彼女も同じ気持ちだったのだろうか

 そう考えながら伸行は少女、湯乃川を見つめた。六十センチはある身長差から、伸行はほとんど真下へと見下ろす事になる。逆に湯乃川は、なあに、と夜空を見上げるように彼の顔に笑顔を向けた。

「あ、いや……なんでも」

 そっけない素振りで彼が返せば、表情はそのままに彼女は小首をかしげる。

 飲み込んだ言葉と共にスポーツ飲料を喉へ流し込んで、伸行は静かに思った。

 ……この組み合わせはまるで親子だ。

 そういえば、自分達が学生の頃にはそう見えるかもしれない、と考えた事は一度もなかったと伸行は思い出した。だが実際に今こうして横に並んでみると、その単語を無意識に連想してしまう。

 ……何故だろうか。

 湧いた疑問に答えるべく、伸行は頭に自分と湯乃川をイメージする。

 もしや自分が社会の荒波に揉まれて苦労を積んだことで、一歩大人になった所為か。あるいは彼女が同じ時間軸で生きていると思えない幼い容姿のためか。

 こくりとお茶を飲む彼女をちらりと見て、いや、と小さく首を振った。

 いくら考えても現実は覆らない。例え楽しげに並んで歩いていたとしても、赤の他人からは同年代には思われずむしろ不釣合いな男女に見えるのだろう、と。

 受け入れ難い事実に悔しさから手に持つペットボトルの中身を強引に飲み干した。

 それでも自分は、八年前に彼女と同じ学校に通っていて、同じ教室で一年を過ごした後に同日の卒業式で友人と散り散りになったのだ。

 恋をする資格くらいあっても良いだろう。

 人知れず男は拳に力をこめた。

 

                   ◆

 

 伸行はわざとらしくため息をついて話し出す。

「俺のいった大学は、クラスメイトどころか同じ学校の誰かすら居なくてなあ」

「あっ私も私もー。知ってる人が誰も居ないと寂しいよねえ」

 腕を組んでうんうんと頷く湯乃川に、伸行は人差し指を立てた。

「そこで第一の目標クエストは、友達を一人作る!」

「定番だね。何人できた?」

「入学してすぐに二人。どこのサークルに入るか考えてた時に、山岳部に誘ってくれた人。それから俺らが入ったときには既に居た人」

 おお、と小さな歓声を上げながら拍手。

 そのまま脊髄反射のように湯乃川は思ったことを尋ねた。

「富士山登った?」

「定番だし、もちろん。確か六時間くらいだったか?」

「ほおー。やっぱり大変だったの?」

「その友達はひいひい言ってたけど、俺は結構平気だったな。先輩が常連でしっかり指導してくれたおかげで、全員頂上まで登れたんだ」

 頬を緩ませた伸行はしみじみと語った。

「登りきってみんなでご来光見れた時は、最高に嬉しかった。またここに来ようなって三人で約束して、毎年みんなで登ったんだ……」

 そう言う伸行に、湯乃川は不満気に頬を膨らませた。

「それって、このキャンプよりも?」

 嬉しかったのか、と。

「それはそれ。これはこれ」

「あ! 伸行くん、その発言はずるいと思います」

「あ、いや、でも誘われ時めちゃくちゃ嬉しかったって! 正直もうみんなとは一生会えないって思ってたし……」

 それこそ神様の気まぐれ一つで、今生の別れすらありえただろうと伸行は思う。仕事をしている間に十代の思い出なんてコロッと忘れて、新しい出会いに巡り合うなんていう可能性もあったはずだ、と。

 だが実際には違った。

 ……もう一度だけ、機会チャンスが与えられたんだ……。

「同窓会のおかげだね」

「ああ、同窓会様様だ」

 聞いて、にやっと彼女は口角を上げた。

「夏だけにね」

「夏だけに?」

 疑問符を浮かべて聞き返す。

 伸行は飲み物を一口含んで、

「うんうん。夏だけに……同窓会、サマーサマー……なんつって」

「っ──!?」

 思わず吹き出した。

 その真面目な顔から出た言葉は、伸行にとっては想定外の一撃だったのだろう。隣の彼女を気にすることなく、目に涙を浮かべて大きな笑い声を上げていた。

 同じく、期待以上に笑われてしまったのが想定外だった温乃川は、顔を上気させてそっぽを向いた。

「もうっ。そんなに笑うことないじゃん……」

 拗ねた風にいいつつも、口元に心が現れてふにゃりと緩んでいた。

 ……馬鹿っ。

「──はははははっ、ごめんっ、ごめんごめんって」

 言って伸行は大げさに息を整える。

 ただ、と話を切り出す。

「学校じゃ結構話してたのになあ。進学したら連絡取るのもすっかり忘れて……。それでも、また会えた」

 さっぱりとした表情で星空を見上げて、続けた。

「俺は、またあの頃みたいに話せて、嬉しかったんだ」

 びくり、と。

 その言葉に肩が揺れた。

 心もだ。

「えっと──」

 温乃川は振り返り、ボソボソと呟くような声で、

「それって、つまり──」

 伸行は気付いて声の主のほうへと向く。

 ……真面目で、優しい。でも人の気持ちに疎い。ずっと変わってない。

 彼の顔を見て懐かしく思いながら、胸の高鳴りを聞きながら。

 震えた唇を動かす。

「私に会いたかった、ってことでいいの、かな」

 口から出たのは小さな声だ。

 不安に包まれながらも、両手を胸の前で握りこんで彼女は言葉を待った。

 まるで祈るように。

 

                   ◆

 

 伸行は向かい合う湯乃川の肩に手を置いた。

 その顔は微笑。

「あ……」

 それだけで彼女は心に安心を取り戻した。自然と両手はほどけた。

 湯乃川を励ますために、思いっきりの笑顔を作って伸行は力強く頷いた。

「当たり前だ」

 伸行の答えに、温乃川は飛び上がった。

 ぶわっと、熱い血潮が足の先から頭の天辺まで上ってくる感覚に、興奮で体が震えて、それを両手で抱きしめる。抑えきれない歓喜につい声を上げそうになったが、それは流石に我慢した。

「八年間分、話したいことが山ほどあったんだ」

 そう言う彼に、目頭を熱くしながら湯乃川は首を縦に小さく振った。

「もちろん湯乃川だけじゃないぞ」

「……え?」

 彼女は耳を疑った。

「同窓会にはみんな来てくれたしなあ」

 彼は何の話をしているんだ、と湯乃川はぽかんと立ちつくした。

「まず委員長だろ、それから野球部の三バカに、あとは寺生まれの──」

 そう言って伸行は口から次々とその『友達』の名前を指を折って数える。

 彼は先ほど、こう言った。

 あの頃みたいに話せて嬉しかった、と。

 こうも言った。

 もちろん湯乃川だけじゃない、と。みんな同窓会に来てくれた、とも。

 それはつまり、

「会いたかったって──」

「──ん? どうした?」

「この間の同窓会の話、なの……?」

「? ああ。久々にみんなと話すと、やっぱり楽しいよな」

 ぷしゅう、と。

 まるで頭から空気でも抜けてしまったかのように、湯乃川はゆらゆらと崩れ落ちてがっくしと地面に両手をついた。

 ……ふ、ふふ……なに一人勝手に浮かれてたんだろう。

 勘違いしてとった独り相撲が悲しくて、壊れたロボットみたく笑いがこぼれた。

「お、おい、どうした!?」

 見たこともない彼女の変貌に伸行は仰天。

「いえ……、いえ、なんでも……ないです……」

 そういえばこういう人だった、と湯乃川は苦い経験を思い出した。

 それとなく気持ちを伝えてもその意味に気付かず、イベントに合わせて何かプレゼントを贈っても自分の気持ちに気付かず。恋心に鈍感な人だった、と。

 そう思いながら、深く嘆息した。

 彼女の悩みの種が自分自身とは露知らず。その様子を見つめる伸行は腕を組んで首をひねり、どう声をかければいいのかと、真剣に考え始め。

 温乃川もまた彼を疲れたように見て、再び嘆息。

 ……鈍感、ここに極まれり……。

 伸行は二度も堂々とため息をつかれて、うっと顔をしかめた。

 ため息の理由も、彼女の気持ちにも気付いていない彼は、どう声をかけるべきか言葉を探りながら口を開いた。

「えーっと……今日のキャンプはさ。俺の友達の思い付きで。俺は、半ば強引に参加させられたんだけど……でも、やっぱり来て良かったよ」

 気まずさから目を合わせれず空を仰ぐ。

「実際今日一日結構楽しかったし。みんなの元気そうな顔が見れたし。これがきっかけで、また、昔の友達と休みにどっか出かけて、ワイワイ遊べたらいいなって思うんだ」

 うんうん、と自信満々に頷いて締めた。

 伸行は気になってちらりと温乃川の様子を横目に覗くと、

「じとー……」

 半目で見返された。

 突き刺さる視線に居心地が悪く、体の大きさに似合わず思わず一歩下がって乾いた笑いを響かせた。

「はははは……」

「じとーー………………」

 ある意味、会社の上司より怖い存在だ、と伸行は降参した。

「スマンっ……何のフォローにもなってなかったな……」

 情けない顔で両手を挙げる彼に、湯乃川は小さく息を吐いた。

 それは不服のため息ではなく。

 ……高校生の頃よりもずっと大きくなったけど。いい意味でも悪い意味でも、伸行くんは何一つ変わってないんだね。

 伸行の不器用なその姿に、彼女は安心したのだ。

「それにしても──」

 湯乃川は長いすに腰を下ろしながら独り言。

「『元気そうな顔』だーなんて……まるで田舎のおばあちゃんみたい」

 そう言ってくすりと笑った。

「おばっ──」

 大口を開けて絶句。

 ふふんと意地悪な笑みを浮かべる温乃川に、伸行は金魚みたく口をパクパクとするしかなかった。

 顔を軍手のような右手で抑えて深く息を吐き、どっしりと彼女の隣に座った。

「大学出て、会社に入って、散々怒られて。社会の荒波にもまれて、とうとう俺も老けたかなあ」

「ふふっ。高校生の時からそんなに変わってないと思うけど?」

「それ、遠まわしに元から老けてるって言ってないか……?」

「そうかな? そういえばね。卒業アルバムとか見てると、伸行くんだけみんなとなんだか雰囲気違うんだよねえ。大人っぽいっていうか、なんだろうなあ……そうそう、あれに似てる感じ」

 そういって人差し指を立てた。

「会社のホームページに貼ってある、社長さんの写真っ!」

 ぶすり。

 ほわほわとした表情で油断させておいて、この毒舌。

 相変わらずの天然だと苦笑いしながら、

「いやいや。俺、そこまで老けてはないだろ?」

「え、そう? 結構貫禄あると思うけど」

「いや、いやいやいやいや。スズメの涙の俺の給料で社長はないなあ」

「じゃあじゃあ、お給料は今後の伸行くんの頑張り次第ってことで」

「それじゃあまるで湯乃川が社長だな。よっ、女社長!」

「あはは、じゃあ伸行くんが副社長だね。はっ……男副社長?」

「それは普通だ!」

 隣り合う二人はそうやって冗談を言い合った。このやり取りに湯乃川はふと、ある光景を思い重ねた。

 それは八年前。

 ……自分がもう少し背が小さな女の子で、伸行くんが人より背が高くて大人っぽいだけの鈍感な男の子だった頃。

 西の空を眺めれば既に日が沈みきった暗い空。だが彼女が瞳に写したのは、真っ赤に染まった夕雲──

 橙色の陽光が差し込む放課後の教室。

 並んで椅子に座る二人の生徒の姿。

 一人は黒い学ランの大きな体、一人はお人形のような小さなおさげ。

 二人が話すのはいつだってたわいのない話題だった。昨日見たテレビ番組、お昼に食べた弁当のおかず、授業で先生が楽しそうに語ったお話、友達から聞いた変な噂、そして私達の将来の夢。

 ただどんな話題でも自分達は楽しそうに話して、いつも互いが互いを笑わせようとしたのだ。

 ……今みたいに。

 隣に座る想い人の変わらぬ姿に、彼女はくすりと頬を緩ませた。

「私は会いたかったよ」

 伸行の肩に寄り添って、

「みんなに、じゃなくて、ね……」

「えっ──」

 その言葉に彼は耳を疑った。

 ……今なんて? 会いたかった? 俺に……?

 温乃川の言葉の意味に気付いた瞬間、伸行はかーっと耳まで朱色に染まった。

 あっ……、と吐息がこぼれた。

 鼓動が早鐘を打つ。

 そして伸行はもう一つ、あることに気付く。彼女が自分に伝えてくれたのだ。なら当然、自分も言葉を返さないといけないということ。けれど、

 ……俺は……。

 初めて気付いた彼女の思いに戸惑い、頭の中でいくつもの思考がぐるりと駆け回った。

 何を言えばいいのか、

 どう伝えればいいのか、

 そもそも自分は温乃川のことをどう思っているのか、

 いやそれよりも、

 ……温乃川の相手が俺で、それで本当にいいのか?

 考えがまとまらず、言葉が告げれず。

 しかしタイムリミットは唐突に訪れた。

「あっ、もうこんな時間!」

 はっと気付いて、傍らを見上げた。すでに温乃川は立ち上がっていた。

 ほら、と手首に巻いた腕時計を見せた。その表情はどこか恥ずかしげだったが、伸行は気付くことはなかった。

「もう三十分も話していたのか」

 明日は朝から男女共同で朝食作りだ。そのために早く起きる必要があるので、そろそろテントに戻っておきたい時間だった。

 名残惜しそうに、

「そろそろ、戻ろうか……」

「……そう、だよね」

 また明日、とぎこちない別れの言葉を交わして、二人は帰路についた。

 結局、彼は言いたいことを言えなかった。

 彼女もまた聞きたい言葉を聞けなかった。

 心に不満を残して、とぼとぼとテントを目指す。

 だがもしも並んで同じ道を歩んでいれば、それはそれはお似合いの男女に見えたことだろう。二人揃ってまるでりんごの様に顔を赤くして、お互いの事を考えて俯いていたのだから。

 

                   ◆

 

 夜道。

 伸行は、一人になるとぱたりと立ち止まって盛大にため息をついた。

「はあー……」

 ……なんで俺はあそこでためらったんだ。もうあの場は素直に自分の気持ちを言う以外ないじゃあないか!

 頭を抱えながら声を荒げたい気持ちを抑えれば、代わりに漏れ出たのは、あー、うー、という呻き声。

 彼女はがっかりしただろうか、と思う。

『伸行くんって体がおおっきいのに、肝っ玉はミジンコ並に小さいんだね。ふふっ、それって男としてどうなんですかー? 『友達』として、はるねはガッカリだよ。しょんぼり』

 脳内シミュレートした湯乃川は春の温もりの様な笑顔で真冬の寒波みたく冷たく蔑んできて、そんな想像に伸行は顔を青くした。

 いや、

「湯乃川が、そんなこと言う訳ないだろうが……」

 ごつり、と拳で額を打って反省。

 勝手に妄想で喋らせて勝手に傷つく。俺はそんな被害妄想野郎になりたい訳じゃあない。

 もうこの話はお仕舞いだ、と自分に言い聞かせて、再び伸行は歩き出す。

 しかし彼の足取りは重い。

 そういう時はなんでもいいから上向きなこと、明るい話題をイメージしたほうがいい、と聞いた事がある。例えば好きな食べ物、好きなスポーツ、好きなテレビ番組、好きな異性。

 真っ先に思い浮かんだのは、ほんの数分前の出来事だ。

 隣に座った温乃川の──

 苺のような甘酸っぱい声。

 タンポポの綿毛みたいな柔らかい表情。

 吐息も、体温も、匂いも──

 想像するだけで思わず胸が高鳴った。

 ぶんぶん、と伸行は顔を左右に振った。

 追加で、気合を入れて両頬を挟みこむようにぶっ叩く。

「っ~~。……いい加減落ち着け俺」

 ……反省だ。アレは『楽しい』とはまた違うイメージだったな。

 しかし痛みも空しく、耳は変わらず真っ赤のまま。鼓動は早歩き。自分の異常に気付いて余計に意識してしまう結果だけ残った。

 彼が向かう先は男子用のテントだ。

 自身のためにも湯乃川のためにも、伸行は一緒に寝泊りする友人に感づかれたくなかった。そのために何事もなかったかのように振舞う必要がある。

 ……アレをやるか。

 大きく深呼吸し、背すじを正す

「一、二、三、五、七──」

 草履みたいな大きな手を合わせて半目で微笑む大男がそこにいた。

 周辺が木々によって暗闇に覆われている所為もあって、人がいれば仏というよりはまるで妖怪の一種に見えたことだろう。

 そんな謎の姿のまま伸行は静かにテントへと近づいていったのだった。

 数分後。

 テントまでの距離は十メートル。

 伸行は姿勢を解除して周囲を見回した。

 ……待ち伏せなし。

 目標を見つめ、内部からの明かりがないことを確認した。

 眠っているのか狸寝入りか確認する必要がある。

 頷き、耳に手を当てて三十秒間待った。

 ……声はない。物音も、ないな。……これはチャンスだ。

 確信が、にいっと口角を吊り上げた。

 間違いなく熟睡している、戻るなら今しかない、と拳を握った。

 伸行は足音を立てないよう慎重に歩み寄った。

 よくよく考えてみると中に居る二人の友人からはこの小旅行への意気込みはすごいものだった、と伸行はふと感心した。

 朝集合した時点で既にテンションが高く、参加した全員を率先して引っ張っていた。そういえば温乃川に誘われて一緒に来ている早継と和田辺の二人ともテレビの話題でよく盛り上っていた。もっともそのおかげで自分は温乃川と二人っきりのように行動できていたのだが。

 ……ならこの密会も、きっかけを作った彼らに感謝するべきか。

 二人を起こさないように静かに狭い入り口へ巨体を滑り込ませると、

 

 ──十秒後、その巨体は暗闇の中で組み伏せられていた。

「くっ……罠だったか……!」

 一瞬だった。

 テントの中に上半身を入れたと同時、強引に身体を引っ張られて流れるような動作で押さえつけられたのだ。事前に打ち合わせていたのだろう。自分が地面に沈んでいる隙にもう一人が入り口を閉じて退路を断っていた。

 並みの腕前ではない、と技を受けた伸行は素直に感服した。こんな事ができるのはただの筋肉ではない、と。そしてテント内の暗さを利用する狡猾さ。悪名高い参謀がこの場に居るようだ。

 だが今は冷静に感心している状況ではなさそうだ。

 ゲス……。

 くつくつ。

 ゲスゲスゲス。

 くつくつくつくつ。

 ゲースゲスゲスゲスッス……。

 くつくつくつくつくつくつくつ。

 気味が悪い笑い声が狭いテントを支配していた。

 危険だと頭の中で警告が鳴り響く。本能が早く逃げ出せと訴えかけてくる。

 伸行は知っていた、彼らの正体を。

 この筋肉、このずる賢さ、この笑い声からして、犯行は間違いなく同室の友人であるしのぶたかしだろう。

 そして彼らが何か悪巧みをする時、特撮か漫画の悪役のような笑い方をすることも。

 しかし伸行は動けない。筋肉と体重で上から押さえつけられ、見事なまでに身動き一つ取れなかった。

 ……俺が一人で抜け駆けして女性陣のテントに遊びにいったと思っているんだろう。多分、このまま筋力に物を言わせて吐かせようって魂胆か。

 伸行は人知れずため息をついて考える。

 理由はどうあれ、まずはこの圧倒的不利な状況を乗り切らなければどうしようもないだろう、と。

 頭数で負けている。俺は起き上がれない。だが所詮は力のない参謀と筋肉の塊、一対一で対等に向かい合えば負けない自身がある。ならばこの状況をリセットするためにはどうすればいい。

 ……一つだけ、秘策がある。

 伸行はごくりと生唾を飲み、恐る恐る口を開いた。

「おいおい待てよ。ちょっと腹を壊してトイレに行ってただけだぜ? なのになんだよこの仕打ち。一体何があったんだよ」

 すっとぼけである。

 しかし、

「やるでゲス」

「ふんっ」

「んがっ──」

 伸行を押さえつける腕に体重がかけられた。

 ……ちょっとくらい加減しろよ!

 体が悲鳴を上げ、伸行自身も悲鳴を上げた。

「あだだだだだだだだだだぁあ──ギブギブギブ!!」

 我慢できず一秒とたたずに地面を叩いた。

 ……すまん、温乃川。今夜のこと黙っていられそうにない……!

「もっとでゲーッス!」

「ああ!」

「うごおおおおお──ギブつってんだろこんの筋肉馬鹿ああああ──!!!!」

 より一層加わった力に、伸行は無我夢中に身体を動かした。

 ……すまん、温乃川! 男にはどうしても戦わないといけない時があるんだ……例えば加減を知らない馬鹿共に喧嘩を売られた今とかな……!

 暗闇の中、伸行の丸太のような足が強烈な勢いで振り回せられるとそれが一人の足へ払うように叩きつけられ、さらに床に伏せて伸行を押さえつけていたもう一人を下敷きにしてすっ転んだ。

 自分を固定する力が緩んだ瞬間を逃さず転がり抜け、伸行は暗さに慣れた目で二人を捕えた。

 とりあえず、その場でぶん投げることにした。

 

                   ◆

 

 懐中電灯が照らす狭い室内に男が三人、正座で向かい合っていた。

 反省会である。

「痛いでゲスよ……」と情けない顔で訴えるのは小柄な男。戦略馬鹿ストラテジーちゅうどく、仁。

「ふん、思いっきりやりやがって……全治三ヶ月お先真っ暗だ」と恨めしそうに睨むのは筋肉隆々の男。筋肉馬鹿のうきん、剛。

「先にやったのはお前らだろ……まったく、わざわざこんな物まで用意して……」

 伸行は二枚の大きな黒いビニール袋を広げながら言った。

 二人が暗闇にまぎれるために被っていたという。ぐしゃりと小さく丸めてテントの隅に投げ捨てた。

「第一俺はちょっとトイレに行ってただけだぞ」

「我々も最初はそう思っていたのですよ、ノブ」

 ゲス口調を捨て、仁はおもむろにスマートフォンを取り出す。

「ちょっとという割には長すぎだろうが。三、四十分は居なかったぞ」

「お、おお。そんなに経ってたか? 夜は夜で星空が綺麗で見惚れてからかな」

「待て待て、お前はそんなメルヘンなキャラじゃないだろ。とりあえず走ってドラミングして餌食って寝れればOKのゴリラだ。この俺が保障する」

「おいおい、人を仲間扱いするなよゴリラ・ゴリラ。それに脳筋の保証なんて誰が信用するんだよ」

「あ? 俺がゴリラ・ゴリラならてめえはゴリラ・ゴリラ・ゴリラだ。上等だぜ……表に出ろよ。家まで競争してやんぞオイ」

「ここ県外だぞ。何キロあると思ってんだよ……」

「俺の筋肉ナメんじゃねえぞ、そんなの余裕に決まってんだろ!」

 ……だからお前は筋肉馬鹿なんだよ。

 伸行は飽きれて内心で独り言を呟く。

「はいコレ」

 そう言って二人のやりとりに割り込んだ仁はスマートフォンを二人に見せた。最新の機種の液晶画面にはくっきりと文字が浮かび上がっており、

「あっ……」

 やられた、と伸行は両手で視界を遮った。

「コレじゃあもうしらを切れないですよね?」

「おうそうだよ、これが嘘だっていうのか?」

 水戸黄門の印籠のように仁がかざした画面には数人のチャットの様子が映っていた。

 始まりは温乃川と同じテントで泊まっている早継からの質問だった。

『いまそっちに比呂瀬くんいる?』

『ノブ? いや、少し前に出ていったですね』

 仁の答えに早継は、ニシシと笑うキャラクターのアイコンで返した。

『実は……温乃川さんも同じ。さっき出ていっちゃった』

『なん……だと……』

 仁が貼り付けたポップなヒグマは目が飛び出して驚いた。

 二人のチャットはその後も続き、二人が逢引しているのではないかという噂すら出ていた。ほんの数分前には温乃川が戻ってきたという密告と、これから恋バナをする宣言。

 ……これが参謀、在村仁の力……南無三ッ!

「なんだよノブ、お前あのチビと付き合ってたのか? 隠し事とは水臭いじゃねえか」

「いや、俺は」

「なんだよ今さら隠すなって! つーことはもう八年か! いつ結婚するんだ、ん?」

「はあ?! け、けけっ結婚!?」

「確か三年の夏ぐらいの頃、湯乃川さんに男いるって噂がありましたよね。あれショックで泣いた男子もいたって話ですよ。でもまさか、その相手がノブだとは思わなかったですよ!」

「だから俺はちが──」

「いいじゃねえか、もうみんな知っちまったんだからよ」

 あれ、と伸行は奇妙な違和感を感じた。

 まるで二人が、もう自分が湯乃川の彼氏だと信じきっているようだ、と。

 というか、

 ……その泣いてたのは多分俺だ。

 無理やりに青春の苦い味を伸行は思い出した。

 高校三年の夏、確かに自分は泣いていた。

 あの時はそれこそもう一生分泣いたんじゃないかと思うくらいに号泣した。一人トイレの個室で紙が尽きるまでこもった。ただこれだけは違うと今でもはっきりと覚えている。好きな女に付き合ってる男がいたから悲しくて泣いていた訳じゃあない、と。

 あの時、湯乃川は困っていた。

 しつこくその噂を聞かれて、違うよ、と。そんな人はいないよ、と否定をしていた。それでもクラスメイトが茶化したりして、すごく困っていたんだ。

 もしもその場で自分が彼氏だったとしたら、堂々と言ってやれたはずだ。その男はこの比呂瀬伸行だ、もし文句があるなら俺に言えと。

 自分はあの時何も言えなかった。自分は湯乃川の彼氏じゃあない。告白の一つも満足にできない男が彼氏面していいはずがない。

 だから泣いたんだ。目の前で好きな女がつらそうにしていても何も助けれなかった。何もできない自分が悔しくて。

 過去を振り返った伸行は、知らずの内に拳を握っていた。

「……違う」

 弱い呟きは二人の騒がしさに掻き消えた。

 ……俺は八年前とは違う。

 今度ははっきりと言った。

「違うんだ」

 二人は動きを止めた。

「俺は温乃川の彼氏じゃあない」

 その言葉に、なんだ、そっか、違うのか、お前が言うなら、と。

 夏祭りのような盛り上りだった雰囲気は一気に冬にでもなったのかと思うくらいに冷めた。元々二人だけなのだから冷めるのが早いのは当然ではあるが、楽しんでいた二人をがっかりさせた罪悪感が伸行の胸の奥をちりちりと焦げ付かせた。

 このまま放っておけば二人が温乃川を傷つける事になるかもしれない。だからこれでいいのだ。そう言い聞かせながらも狭いテントとこの場の空気は居心地が悪く、伸行は立ち上がった。

 ……言わないと──

 

                   ◆

 

 再び星空の下。

 テントから出て少し歩くと、年季の入ったウッドベンチがある。伸行はそこへ腰を下ろした。

 背もたれに体を預ければ夜空を楽しむのに丁度よく、広場に向かって設置されているので、日が昇れば草むらで遊びまわる子供たちを眺めるのに最適だろう。一台で二通りのシチュエーションがある訳だ。

 微笑ましい風景を想像して、伸行は頬がふっと緩んだ。

 それも束の間、体を起こすと気持ちが引き締まった表情になる。彼の目的がそうさせたのだ。

 二つ折りの携帯電話を取り出す。

 居心地が悪くテントを逃げ出した伸行には、外に出た理由がまだ二つ残っていた。アドレス帳から一つの連絡先を選択。表示される名は、『湯乃川はるね』。

 伸行の脳裏には一つ気がかりがあった。自分がこの状況なら湯乃川も同じ状況なのではないか、またあの時のように──八年前のように──困っているのではないだろうか、と。その原因の一端が自分なら尚更だ。

 すぐにでも本人からそのことを聞きたかったが、この状況で湯乃川との会話を二人には聞かれたくなかった。自然にあの場を離れるチャンスがすぐに訪れたのは幸いだった。

 耳元で鳴る低いコール音を数える。

 一つ、二つ、三つ──

 相手はすぐには出ない。もうすっかり夜だ、寝てしまっていても不思議ではない。

 短い旋律は無慈悲に数を重ねた。

 伸行は静かに相手を待った。顔は渋い表情。奥歯を噛んで、内心の焦りと苛立ちを堪える。

 不安だった。

 コール音が鳴るたびにその不安がずしりと重くなった。

 首にかかったロープがゆっくりと見えない誰かに引かれて少しずつ絞まっていくようで、まるで手の込んだ自殺みたいだと伸行は思った。

 普段ならとうにやむなしと電話を切っている時間。出ないのはやはり自分が迷惑をかけた張本人と思われているからだろうか、と。諦める選択肢が浮かんだ頃、ようやくその不安から彼は開放された。

『あ、もしもし?』

 電話ごしに慌てた声。

 よかった、と。どっと肩の力が抜けた。

「はあ~~……」

『あれれ? もしもし? もしもーし?』

 背もたれに倒れこむと、冷や汗でべっとりと背中にシャツが貼り付いていることに気付いた。いや、そんなことはもはやどうでもいい。

 彼女の声が聞けた。それだけで今は値千金だ。伸行は急いでスピーカーに耳を当てて話しかけた。

「あっああ、聞こえる、聞こえる! あー、えと……いま大丈夫か?」

『すぐ出れなくてごめんね! みんながテントの中で電話しろーって離してくれなくて──』

 話によれば、彼女達三人のテントもかなり盛り上がっているとの事だったが、ただその『盛り上がり』は自分達とは方向性が違っているのだと伸行は理解した。こちらの様に恋人だと勝手に騒ぎ立ててるのではなく、根掘り葉掘り質問攻めにあっている、と。

 会話の中心になっている湯乃川は大変そうだがあの二人が相手なら問題ないだろう、と伸行は安心した。

 早継と和田辺は、湯乃川とは長い付き合いだ。自分は彼女達とは親しくはなかったが、良識のある人物だったと記憶している。『あの時』に湯乃川を庇っていたのも確かこの二人だった。きっと湯乃川がテントを出るまでは質問をしながらも彼女の言葉に耳を傾けて真摯に聞いていたのだろうと想像する。

「でも楽しそうだな」

『うん。私が伸行くんの武勇伝とか話すとね、みきちゃんも綾ちゃんも変だーって言うんだよ。私はカッコ……じゃ、なくて、すごいって思うんだけど……』

「武勇伝?」

『えっと、昔、鞄忘れて電車に乗った私を追いかけてくれた事あったでしょ?』

 懐かしいな、と伸行はしみじみと呟く。

「電車追い越して次の駅で渡した時の話か」

『そうそう!』

「時間なくて改札無理やり乗り越えて渡しにいったから、駅員さんにめちゃくちゃ怒られたんだよなあ」

『鞄受け取ったらすぐにぴしゃってドア閉まっちゃうし、伸行くん手を振りながら後ろから駅員さんに捕まっちゃうし。心配になってすぐ反対の電車に乗り換って戻ったらちょうど伸行くんが帰るところだったよね』

「そのまま行っても良かったんだぞ。並ばないと買えないアイス、一日中楽しみにしてたのに」

 伸行がそう言うと、むっとした風に湯乃川は、

『いいの! だってあの後二人で食べたアイスの方が、ぜ~ったい、おいしかったから!』

「そうか……ならよかった」

 うん、と湯乃川は笑った。

 湯乃川の話によって伸行の残りの二つの目的の内一つは解決していた。過去を思い出して胸が締め付けられるくらいに不安だった懸念事項。

 彼女が、昔のように困っていないか。

 一人でつらい思いをしていないか。

 そんな目に合わせた自分を恨んだりしていないか。

 ふうう──、と長く息を吐いた。

 だがその心配はいらなかった、と伸行は分かった。それは彼女の楽しそうに語る声を聞けば火を見るより明らかだ。

 もしも目の前に十分前の自分自身が居たら、自分ははっきりとこう言っていただろう。

 ……馬鹿か、過保護な彼氏面。自分の好きな人が信じた友人くらい、信じろ。

「湯乃川──」

 伸行は電話の向こうの相手を呼んだ。

 最後の目的のために。

 自分が誰も居ない外へ出たかった、友人二人にさえ電話を聞かれたくなかった、もう一つの理由。

『なあに?』

 無邪気な声が問う。

 男は決心する。

 返事をしよう、と。


                   ◆


 自分は器用な人間じゃない。

 むしろ不器用な人間だった。

 特に言葉は小さい頃から苦手だった。

 今でも苦手だ。

 だから伝わるかなんて分からないし、同じくらい伝えれるかすら分からない。

 どんな答えが待っているのかなんて予想がつく訳がないから、どう言えば良いかも思いつかない。

 実は違っていたのかもしれない。ただの勘違いかもしれない。もう遅すぎるのかもしれないし、あるいはこれから先の、もっと後に言うべき言葉なのかもしれない、けど。

 鈍感で、臆病で、かっこつけたがりの、泣き虫な自分が言えなかった言葉があった。

 それをとにかく馬鹿で不器用で不恰好で、それでもありのままの自分が代わりに、

 ……言おう。

 落ち着いて呼吸を整えて、伸行は口を開いた。

「答えが遅くなってごめん」

『え?』

 出た言葉は不明瞭で、意味が分からないといった戸惑いが電話越しでも伝わった。

『えっと、何の事……?』

 構うものか、と伸行は頭に浮かんだ言葉を一つ一つ吐き出す。考えても仕方ない、自分にはこれしかできないのだから、と。

「君は、俺に、……教えてくれたんだ。……だから、俺も答えたい」

 目を閉じて息を吸った。

 あの時の、彼女の言葉を思い出す。

 ──私は会いたかったよ。みんなに、じゃなくて──、と。

 タイムリミットはとっくに過ぎている。十五分は遅刻だ。

 怒られるかもしれない。呆れられるかもしれない。

 それでも答えることが許されるなら、聞いてほしい。

 見開いて、

「俺もだ、俺も会いたかった!」

『あ──……』

 矢継ぎ早に想いを言葉に紡いだ。

「みんなにも会いたかった。でも、やっぱり、湯乃川に一番会いたかったんだ! 八年前からずっとだ。ずっと……また会って、もう一度話をしたいって、そう思って……──!」

 声を絞り出す。息継ぎをして、

「話題は何だっていい! くだらない話でもいいし、見てみたい映画でもお勧めのラーメン屋でも、上司の愚痴でも同僚の笑い話でも、いつか仕事でやってみたいことでも、なんだっていいから……! だから……!」

 うん、うん、と。湯乃川は何度も相槌を打った。涙ぐんだ震えた声で。

 伸行もまた震えていた。電話を持たない手、足、声も。小刻みに揺れていた。

 力任せにすくむ足を叩いて奮い立たせて、ぐわっと勢いよく立ち上がった。

 手は自然と拳を握っていた。

 恐れるものなんて何もない、心はもう決まっているんだ、先のことなんて考えるな、と自らを鼓舞する。

「覚えてるかな……? 夕方に、太陽が沈むのを、ずっと、ずっと、二人で、見てた事……。また一緒に、綺麗な、真っ赤な、夕焼けを、一緒に見て……好きなだけ話をしよう……! 次の日も、その次の日も……、あの頃みたいに……!」

 息を大きく吸った。


「ずっと、好きでした! 俺と付き合ってください!!」


『はい、喜んで……』

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